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断罪された悪役令嬢ですが、“嘘を一つだけ混ぜたら”全部壊れました ~正しさは、簡単に裏返る~  作者: 空乃エリシア


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第十四話 本当の断罪

 ――これで、始まります。


 そう言った自分の言葉が、少しだけ遅れて響いていた。


 室内の空気は、まだ重い。


 だが。


 勝負はついている。


 少なくとも。


 ここまでは。


 騎士たちが去り、扉が閉まる。


 静寂が戻る。


 誰も、すぐには動かない。


 動く必要がないから。


 あるいは。


 動けないから。


「……見事ですね」


 最初に口を開いたのは、アシュレイだった。


 壁から離れ、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


 いつも通りの顔。


 けれど。


 ほんの少しだけ。


 興味の色が濃い。


「褒め言葉として受け取りますわ」


 わたくしは軽く肩をすくめた。


「事実ですから」


 彼はそう言って、立ち止まる。


 距離は近い。


 だが。


 触れない。


 その距離が、心地いい。


「これで第一段階は終了」

「ええ」


 わたくしは頷いた。


「ですが」


 少しだけ間を置く。


「問題はここからですわ」


 彼の目が、わずかに細くなる。


「何を見ています?」

「違和感を」


 わたくしは静かに言った。


「すべてが、少しだけ整いすぎている」


 彼が止まる。


 ほんの一瞬。


 それで十分。


「続けてください」


「今回の断罪」


 わたくしは言葉を選ぶ。


「証言は崩れた」

「ええ」

「証拠も、綻びがある」


「その通り」


「けれど」


 視線を母のいた場所へ向ける。


 もう誰もいない。


 空席。


「“用意されすぎている”」


 沈黙。


 短い。


 だが。


 濃い。


「……つまり?」

「雑ですのよ」


 わたくしは言った。


「母がやるには」


 アシュレイが、わずかに笑う。


 理解している顔。


「同感です」


「彼女はもっと慎重です」


 証拠を作るなら。


 もっと自然に。


 もっと見えない形で。


 こんな“ほころび”は残さない。


「つまり」


 彼が言う。


「別の誰かが関与している」


「ええ」


 わたくしは頷いた。


「そして、その誰かは」


 少しだけ声を落とす。


「“母より上”」


 沈黙。


 今度は、長い。


 廊下の遠くで、誰かの足音が響く。


 だが。


 ここには届かない。


「……面白い」


 アシュレイが呟いた。


 楽しそうに。


 本当に。


「その結論に至る理由は?」

「簡単ですわ」


 わたくしは彼を見る。


「母は“守る側”ですもの」


「守る?」


「ええ」


 彼女は壊す人間ではない。


 守るために、切る。


 順番が逆。


「今回の断罪は」


 わたくしは言った。


「誰かが“仕掛けて”、母が“乗った”」


 それが一番自然。


 そして。


「その“仕掛けた側”は」


 わたくしは少しだけ笑った。


「まだ、何も失っていない」


 完全に。


 安全圏。


 それが意味するものは一つ。


「……王宮内部」


 アシュレイが言う。


「ええ」


 わたくしは頷いた。


「あるいは、そのさらに内側」


 彼はしばらく黙っていた。


 考えている。


 そして。


 選んでいる。


「あなたは」


 やがて、彼は言った。


「どこまで行くつもりですか」


 問い。


 軽くはない。


 これは。


 共犯としての確認。


「どこまで?」


 わたくしは少しだけ考えた。


 そして。


 答える。


「最後までですわ」


 迷いはない。


「壊すなら、全部」


 沈黙。


 それから。


 彼は笑った。


 今までで一番。


 楽しそうに。


「いい」


 その一言。


「それなら、付き合いましょう」


 その瞬間。


 関係が、また一段変わる。


 共犯。


 それだけではない。


 もっと。


 深い。


 何か。


「ただし」


 彼は言う。


「次は、少し難しくなります」


「望むところですわ」


 わたくしは答える。


 視線を逸らさない。


「敵が、見えませんもの」


「ええ」


 彼は頷いた。


「だからこそ、面白い」


 その言葉で。


 確信する。


 この男は。


 同じ方向を見ている。


 少なくとも、今は。


「では」


 わたくしは踵を返した。


「次は王宮ですわね」


「ええ」


 彼の声が背後から落ちる。


「そして、その中で」


 わずかな間。


「“本当の断罪”が始まる」


 その言葉に。


 ほんの少しだけ。


 背筋が震えた。


 恐怖ではない。


 期待。


 これから始まるものへの。


 わたくしは、わずかに笑った。


 ――いい。


 ようやく。


 本番ですわね。

第1章の構図はここで一度まとまりました。


ですが、物語はここからが本番です。

“誰が仕掛けたのか”――その答えに向かって進みます。


ここまで読んで面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。次章から一気にスケールが広がります。

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