28. 6月 扇風機とお酢
暑い、あつい。金儲けは大変だ。
今日も、やる気、元気、根気。
レジは意外と、風通しが悪いのだ。
風通しの、悪い場所でずーっと立って仕事をする。大変なのだ。そこで、ミニ扇風機が設置されている。扇風機は良い仕事をする。快適な風をくれる。私の友だ。ただし、このミニ扇風機、山積みの精算カゴの、真上に設置されている。少しジャマ。だから、毎回、カゴを取るたび接触してしまう。ガシャン、アッ、当たった。大丈夫、大丈夫、動いてる。次は気を付けて取るぞ〜。ガシャン、アッ、また当たった。ちょっと位置がずれたかも、でも、大丈夫。風はある。
みんなの動きを観察する。私の場所だけ、カゴが扇風機に当たる気がする。位置が低い可能性がある。観察だ。ウン⁇扇風機を首振り設定にしてない。固定にしてる。だからか?私は上下に動くように設定してるのだ。身体、全体に風を感じて快適なのだ。快適を選択してはダメだったか?仕方ない。固定にするか?みんなに合わせる。アッ、タフレンを開いて商品を入れるのが楽になった。風がジャマをしない。気持ちスピードアップしたぞ。固定は正解だ。
数分後、暑い。やっぱり首振り設定にするか?今、顔だけ、風が当たるように向きを設定しているから、少し向きを下げるか?ガタガタ少し下げた。
「いらっしゃいませ〜」
客がきた、調整出来ない。ピッピッ、タフレンに直接風が、吹き込む、下げすぎだ。バサバサ、最悪だ。開けない。扇風機…停止。を押す。風は止まる。無風状態。暑い。年齢を重ねて汗の出る場所が、変わった事、忘れていた。昔は、鼻の頭に汗をかいて可愛かった。今は違う。脇から出る。脇汗。背中からも出る。背汗。この客帰ったら、スイッチを押す。決めた。
「ありがとうございました!」
スイッチonだ。少しだけ、首振り設定にする。
あ~、快適、快適。
「いらっしゃいませ〜」
ピッ、ピッピッ、アッ‼
「お客様この卵、割れてますね。お取り替えします。少々お待ちくださいませ。」
売り場から、新しい卵を取って来る。時々、割れてる卵があるのだ。今日は、偶然、カゴの中で裏返しだったから、見つけたのだ。気の利く店員だと思われたカモ。好印象間違いなしだ。へへへ(笑)ニヤける。
「お待たせしました。ハア、ハア、」
息が切れる。お客の視線が心持ち優しい。
卵は最後に入れるから、横に退けて、次は、調味料を入れるかな、ヒョイと持ち上げたら、勢いが強くて、ツルッと手から滑って床に落ちた。
パッリ〜ン‼割れた…。
割れた。粉々だ。酢の香りが、する。ドキドキ、私がいる方角に、落ちたから、客に被害無し。私も無し。
不幸中の幸いだ。みんなの注目だ。見られてる。
「すいません。新しい物、すぐお持ちします。」
割れたのはビン入りの酢だ。ヤバい、割れた。イヤ、割ってしまった。急げ、急げ、息が切れる。ハア、ハア。ゼイ、ゼイ。
レジへ、帰ったら、お客は移動して、別のレジで精算をしていた。
「すいません。お酢です。」
お客へ新しいお酢を手渡す。
「ありがとうございます。」
私のレジには、酢と、ビンの残骸があるから、入口へ、停止版を立てる。これからも、仕事をするためには、片付けねばならないのだ。
すごい、臭う。酢だけに、スゴイ。手から滑って、飛んで…落ちて割れた。コレも、スゴイ。キレイにして仕事を再開しなくては。お客様にケガが無くて良かった。私もケガしてないし。精算カゴも、新しい物を取って…
ガッツ‼シャ〜ン‼
ヒョ〜〜エ〜〜‼⁇
ガラガラ転げる。
扇風機の頭。
ミニ扇風機の頭が、アクリル板を越えて、隣のレジまで、飛んでいった。バレーボールのように飛んでしまった。ドキドキ、バクバク隣のレジの花子サンも、扇風機の頭を見つめて、びっくりしている。誰も扇風機が飛んで来るなんて思わないだろう。
カゴで引っ掛けてしまった。
アッ‼そうだ、さっき、首振り設定に戻したのだ。私は精算カゴを、片手に持ち、床に落ちた扇風機の頭をボーゼンと見つめた。アッ、酢のお客サンだ。目が合った、
「酢、す、すいません。」
ダジャレじゃないンだ‼どうしよう。酢の強烈な香りと、扇風機の頭を見つめて、私の首も飛ぶのかな?と一瞬よぎる。
もう、扇風機無くても、汗は一滴も流れてこない。脇も背中も涼しい。夕暮れだ。
この扇風機、私の友、なおせるかな?
方言、使わない言い方で…考えて、店長へ説明をしないと…なんて、いえば良いのか頭が回らない。
明日も、負けるな、くじけるな、ガンバるんだ。




