閑話 カメラのある日。
会社に出勤すると、毎日、打刻前に顔認証とサーモカメラで検温する決まりがある。機械が
「平温です。」
と喋る。
OKだとその後、自分の名前が表示される。
そして、やっと打刻だ。
だが、私だけかもしれないが、自分の名前が表示されないのだ。顔をカメラに近づける。ピロン♪緑川 玲子、誰だ?もう一度カメラに顔を近づける。ピロン♪川口 春奈、凄い名前でた。次はピロン♪英語で書かれた外人だ。つまり打刻に時間がかかる。帰りも同じ調子なので非常に困る。そんな、毎日を繰り返していた。
ある日閃いた。機械は私の顔を認証出来ないのでは?いや、しているが認証しにくいのではないのか?という結論にいたった。じゃあ、認証出来る顔を探そう。そうしよう。この日から毎日、打刻をする行き帰り、こっそり、誰もいないときを狙って、カメラの前で、満面の笑顔、ふてくされた顔、白目の顔、鼻の穴を思いっり膨らました顔、ビックリした顔、ダッフンダーの顔、ありとあらゆる顔を少しずつ試した結果。見つけてしまった。黄金の顔を‼
私の名前が一回で出てくる顔は、
「アイ〜ン」
の顔である。声を出すとさらに一回で出てくる。その顔がヒットした日から、恥じらいなんてなくなった。もともとないけど、すぐ打刻出来るから、他の人と、出勤時間が重なっても素早く出来る。良いことずくめ。困っている人がいたら教えてあげる気もあった。
「アイ〜ン」
ある日、出勤時刻を間違ってしまい、一時間も早く付いてしまった。打刻は出来ないから、カメラだけ先にして、一時間後打刻をした。
次の日、店長からカメラと打刻の時間が空きすぎている事が、なぜなのかと?聞かれる。どうやら、本部から、メールがきたようだ。理由を書いて提出するようにと、注意と共に紙が来た。
ウソを書く事はできないが、正直に本当の事を書く事はできないのだ。シフトの確認を怠ったことがバレる。少し悩んで、
たまたま偶然、早く来てしまい。たまたま偶然カメラを見てしまったため。時間差ができた。と書いて提出した。店長から印鑑も押してもらったので、あれは、上手く行った。すべてが、たまたま偶然で終わった。そんな事すっかり忘れてた頃。
カメラの横に張り紙がある。
なんだろう?
このカメラは全て本部に転送され、監視され、保存されてます。
ハア⁇‼
な、何だって‼私の変顔、全てが保存されているのか?消去してくれー!
あの、時間差打刻で、本部の人がじっくり見たのだ。こいつ、バカにしてる。と、思われたかもしれない。
私なりに本気だ。と伝えたい!が、会うことはないだろう。
あれから、真面目な顔で時間がかかっても名前が出るまで頑張っている。
余談だが
「写真取り直すといいよ。」
と聞いた。いまさら……な話し。




