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第108章:古都への旅路と、清水の舞台の遭遇戦


霊力回生ファントム・チャージ


10月中旬。東京駅。 修学旅行の朝は、期待と眠気が混ざり合った独特の空気に包まれていた。

「点呼完了! 全員乗車しろ!」

担任の角田先生が、修学旅行ハイでいつもより声がデカい。 その横には、少し恥ずかしそうな山口先生。 角田先生は、山口先生の重そうなキャリーケースを小指一本で軽々と持っている。

「……完全に新婚旅行のテンションだな」

俺、古田降太はリュックのベルトを締め直した。 そのポケットには、特製のスマホケース「ファントム・チャージャー」を装着したスマホが入っている。

新幹線が動き出す。 俺はそっとアプリを起動した。

『わあ……! 動いた!』

画面の中の部屋で、着物姿の櫻子先輩が窓に張り付いている。

「先輩、バッテリーはどうですか?」

『すごいのよ、ふるふる君! バッテリーが減るどころか、増えてるの!』

画面右上の表示は『100%(充電中)』。 新幹線の中に充満する数百人の生徒たちの「ウキウキした気(生体エネルギー)」を、ケースがガンガン吸収して電力に変えているのだ。

「成功ですね。これなら、京都に着くまで持ちますよ」

窓の外、流れる景色。 俺はイヤホンを片耳につけ、先輩と二人だけの会話を楽しんだ。 富士山が見えた時の先輩の歓声。駅弁を選ぶ時の真剣な顔。 それは、まるで隣の席に彼女が座っているかのような、錯覚と幸福感だった。


混雑の清水寺


京都駅に到着し、バスに揺られて最初の目的地、清水寺へ。 参道(産寧坂)は、修学旅行生と外国人観光客で埋め尽くされていた。

「すげぇ人だな……」

「はぐれるなよー!」

班長の赤城烈兎が、人混みをかき分けて進む。 俺たちの班は、古田、赤城、綿貫なのは、そして塩原文子さんのいつもの4人だ。

「ここが清水寺……。枕草子にも登場する名所ですわね」

塩原さんがガイドブック片手に目を輝かせている。 文学少女モードだ。

『……人が、波みたい』

スマホの中の先輩が、少し怯えたように言う。

「大丈夫です。俺が一番いい景色、見せますから」

俺はスマホを高く掲げた。 清水の舞台。 眼下に広がる京都市街と、色づき始めた紅葉。

『……!』

先輩が息を呑むのが分かった。 風の音、鐘の音、そしてお線香の香り(は届かないけれど)。 俺の実況に合わせて、先輩が画面の中で深呼吸をする。

『綺麗……。49年ぶりに見る京都は、やっぱり美しいわね』

先輩の瞳が潤んでいる。 連れてきてよかった。心からそう思った。


最強バディとの遭遇


「絶景かな、絶景かな……ってね」

俺が呟くと、背後から聞き覚えのある、コテコテの関西弁が飛んできた。

「せやな。ここから飛び降りるつもりで告白すると、案外上手くいくらしいで?」

「えっ?」

振り返ると、そこには異彩を放つ二人の女性が立っていた。 ヒョウ柄の服を着たおばちゃん(足が透けている)と、モッズコートの美人なお姉さん。

「愛さん! 恋さん!」

大阪の最強霊媒師コンビ、難波愛(幽霊)と梅田恋(霊媒師)だ。 なぜここに!?

「よう、フルフル! 元気しとったか?」

「久しぶりやな少年。仕事のついでに観光や」

二人は気さくに手を挙げる。 その圧倒的な「キャラの濃さ」に、周囲の観光客が自然と道を空けていく。


なのはの限界化


その時、俺の隣にいた綿貫なのはさんが、石化していた。

「あ、あ、あ……」

なのはさんは、震える指で二人を指差した。

「そ、そのヒョウ柄の方……足が透けてる……!? いえ、それ以前にそのオーラ……!」

霊感ゼロのなのはさんに、愛さんの姿が見えている。 恋さんの強力な霊場(結界)と、愛さんの自己主張の激しさが、物理法則をねじ曲げているのだ。

「……本物だ。本物の、伝説の霊的トラブルシューター……『愛と恋』のお二人……!!」

なのはさんが、悲鳴のような声を上げた。

「ネットのオカルト掲示板で神と崇められている、西の最強バディ! 生で見られるなんて……尊い……!」

なのはさんは合掌して拝み始めた。 夏休みに会えなくて地団駄を踏んでいた彼女にとって、二人はアイドルのような存在なのだ。

「なんや、面白い子やな!」 「サインくらい書いたるで? 背中出した」

「は、はいぃぃ!!」

恋さんがなのはさんのジャージの背中に、マジックでサラサラとサインを書く。 なのはさんは「一生洗いません! 家宝にします!」と叫んで、その場で崩れ落ちた。


先生たちの「決定的な瞬間」


「騒がしいな、お前たち」

そこへ、見回りの角田先生と山口先生がやってきた。

「あら? その方たちは?」

山口先生が不思議そうに愛と恋を見る。 一般人には「派手な観光客」にしか見えないはずだ。

「ああ、現地の……知り合いです」

俺が誤魔化そうとした時、人混みに押された外国人観光客が、よろめいて山口先生にぶつかった。

「きゃっ!」

清水の舞台の、手すりの方へ弾き飛ばされる山口先生。 危ない、と思った瞬間。

ガシィッ!!

角田先生の太い腕が、山口先生の腰を抱き留めていた。

「……大丈夫か、綾華さん」

「……は、はい。角田先生……」

二人の視線が交差する。 背景には、夕焼けに染まる京都の街並み。 まるでドラマのワンシーンだ。

「ヒューヒュー!」

愛さんが口笛を吹く。 恋さんもニヤリと笑って、俺に耳打ちした。

「おい少年。あの筋肉、『本気マジ』の顔しとるで。近いうちにデカいことやる気やな」

「……ええ。俺たちも、それを手伝うつもりです」

俺はスマホを握りしめた。 画面の中の櫻子先輩も、うっとりと二人を見つめている。

『素敵……。本当に、運命の二人ね』

この修学旅行で、二人の愛は確実に深まっている。 文化祭でのサプライズ結婚式は、きっと成功する。 俺はそう確信した。

「ほな、ウチらは行くわ。邪魔したらアカンしな」

大阪コンビは、颯爽と人混みの中へ消えていった。 嵐のような遭遇だったが、俺たちに「恋の予感」という確信を残していった。

1日目の観光は終わり、俺たちは宿へと向かう。


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