勇者連盟vs道具や連合⑧
コロッセオ中央で両チームが対峙する時にも、クォーダは盃を持ったままだった。が、ある瞬間、表情が変わった。その理由は明白、俺にも分かった。分かり易かった。ゴーレムの装備、持っている武器が、超がつくほどの貴重品。戦士系統のジョブが装備できる最強クラスの武器と言っても過言ではない。
言い伝えによると、その昔、世界の半分を支配していた邪神竜を討伐した巨人族の武器。名を『ドラゴンブレイカー』という。巨人族が使ったとされる武器で、巨体のゴーレムにお似合いの大きさ。クォーダにはいささか大振りだ。
「その武器、いいじゃねぇか。どこで手に入れたんだよ。」
クォーダの目が狙いを定めた。勝利を収めた後、指名するアイテムは決まったようだ。
闘技開始の合図とともにクォーダがゴーレムに突っ込んでいった。相も変わらず活き〃にんまりと。今回の武器も大きな大きな『ギガントアックス』。巨体で怪力のクォーダだから使い熟せる武器なのだが、さすがにゴーレムを前にすると武器も人も可愛く見えてしまう。心許ない。はっきり言って力勝負しか能のないクォーダ。今回ばかりは分が悪いのではなかろうか。
軽く助走をつけ、飛び上がり、ギガントアックスを振り下ろすクォーダ。まずは挨拶代わりの一発。対してゴーレムは武器ではなく空いている左腕、手首と肘の間で受け止めた。甲高い金属音がコロッセオ内に一本の光線を引いたようだった。クォーダの一撃を直接喰らってもゴーレムの腕はくっついていた。ダメージはあるはずだが、微々たるものか。少なくともゴーレムの動きを鎮めるには至らなかった。ゴーレムはそのまま、カウンター気味にドラゴンブレイカーを振り上げた。先程よりもさらにキーの高い金属音が鳴動。ゴーレムの一撃をクォーダはギガントアックスでガードした。が、同時に仲間の所まで吹っ飛んでいった。しっかりと着地を決めていたので、さして問題はないかと思うのだが、あのゴーレム、強いぞ。
「手を貸しましょうか?」
そういった柳の顔はニッコニコだ。救いの手なんか差しのべる気なんかありはしない。100パーセント嫌味だ。
「まぁ、待てって。やられっ放しは良くねぇだろう。」
半ギレ状態で応対してもおかしくない状況だったが、意外にも落ち着いた口調でクォーダは返答した。そして一撃でひん曲がったギガントアックスをぽいと投げ捨てた。耐久値ゼロだ。元々数値がゼロに近かったのか、ゴーレムの攻撃力が桁違いなのか、もしくは耐久値に直接ダメージを与える特技でも使ったか。それはいずれ判明するとして、クォーダの右手に新しい武器が召喚された。この辺はクォーダに似合わぬ器用な特技。いつでもどこでも、馬車の中から瞬時に武器を呼び出し装備できる。新しい武器はハンマー。斧と同様、肩に担いで再びのっしのっしとゴーレムに近付いていくのだった。
上級者とかベテランとか熟練者の戦いではない。単純に力比べだ。大きく振りかぶって、ハンマーを振り下ろす。先程と同様、片腕で受けるゴーレム。その左腕が、今度は砕けた。会場がざわつく。けれども当のゴーレムは気にする素振りなく刀で攻撃する。クォーダがハンマーで受けると同時に再び味方の下まですっ飛ばされた。到着先は丁度、運び屋の足元。
「楽しそうですね。」
真上からの一言に対し、
「次で決める。」
むくりと起き上がると、曲線を描いたハンマーを捨てて次の武器を召喚。3つ目の武器は鎌。デカいというより異様に長い、長すぎる鎌だった。
俺は、俺達はあの武器を知っている。勇者一行として冒険に関わったことのある者ならば一度は耳にしたことがあろう『神器十二選』のひとつ、『夢絶ちの鎌』。要は伝説の武器のひとつだな。観客が盛り上がっているのは試合展開と武器の見た目が理由だろうが、対戦者はそうはいかなかった。クォーダがゴーレムまであと数メートル、あと少しで間合いという所まで歩みを進めた時、闘技が動いた。クォーダの持つ武器を知らぬはずがなかった。魔抗邪倒の3人が駆け出した、かと思われた刹那、彼らの眼前に伝説人の残りの2人が立っていた。
「邪魔はいけません。さぁ、こっちはこっちで楽しみましょうか。」
毎闘技、こんな展開を演出していたら、そりゃファンやら追っかけやらが増えるわな。魔王様も鳥肌が立ってしまった。カッコ良すぎる・・・
人対人はあっさり決着。言うまでもなく伝説人が勝利。ゴーレムに苦戦するクォーダを目の当たりにしていたからもしやと思ったが、全く問題にしなかった。さらに2人はそのままクォーダに加勢するかと思いきや、そんな素振りは微塵も見せなかった。武器を構えるでも魔法の詠唱を始めるでもなく、見物を決め込む。運び屋は剣を収め、女主人は腕組みして戦況を見つめていた。
この頃になってようやくゴーレムの強さの謎が解けた。秘密はアクセサリー。確か名前は『禁忌の石』。ゴーレム系モンスター専用のアクセサリーで、ステータスを倍増させる。その代価はモンスター30種の生贄。モンスター預り所へ預けるのではなく、とある神殿で合計30種類のモンスターを捧げると入手できる。この単品でゴーレムのステータスが2倍になる大変有益なアクセサリー。ちなみに、生贄にした系統のモンスターをその後仲間にすることはできなくなる。多大な犠牲の下に得られる力。理解はできるが、気に食わない。悪くはないが好きではない。
「悪ぃが終わりにするぞ。ちょっと野暮用が―今晩は約束があるんでな。」
クォーダが鎌を振りぬく。やや間があって、ゴーレムの右腕が落ちた。斬竜刀を握ったままの石の腕がいとも簡単に二の腕辺りから。
大歓声に包まれるコロッセオ。ゴーレムは左腕でクォーダを殴りつけようとするが、クォーダに余裕をもってかわされた。そして再度鎌を振ったクォーダ。今度は胴から真っ二つ。勝負ありだ。
こんな戦いを見せられたら、伝説人のファンになるなと言う方が難しい。俺だって一遍に魅了されてしまった。テンションアップ。隣の客と肩を組みながら大声で叫びまくってしまった。酒のせいにはするまい。本当に3人が魅力的に映ったのだ。羨ましくなったのだ。




