ちょっと昔話を⑨
着実にダンジョンを潜っていく4人。階層によって広さはまちまち。探さずとも目の前に階段があることもあったし、巡り回れどさっぱり見つからないこともあった。容易に全域の地図を頭に描ける階もあれば、常に迷子状態ということもあった。右だ左だ、北だ南といざこざも。その場合は大抵、蓑口の意見に従った。間違ってもクォーダの提案は採用されず。
宝箱もあるのだが、数はガクンと少なくなった。ひとつも置かれていない階層もあった。そしてその中身に関しては当たり外れの差が拡大。最悪は宝箱型のモンスターで、強制的に戦闘となる。致命傷を貰う敵ではないが、ラストダンジョン内でも数少ない、柳のスピードを上回るモンスターということで、何かしらの攻撃を受けしまう。また、空であることも多くなった。地下70階以降、半分空っぽ。期待が大きいだけにがっかりする。だからこそ中身が入っていた時には喜びが溢れる。この瞬間がラストダンジョン唯一の楽しみである。強力な武器、防具、道具。特殊な武器、防具、道具。希少な武器、防具、道具。未知のアイテムを求めて。地上で広く普及しているものが入っていることはなくなった。どんでん返しとしてたま~に呪われて使い物にならないアイテムが入っている場合もあったが、蓑口の魔法チェックを通過したモノは漏れなく大当たりだった。
剣であれば柳。杖、ロッド、念珠であれば蓑口もしくはラビ。それ以外の武器は全部クォーダ。がさつでいい加減、適当で不器用ではあるが、武器に関しては異常とも言える器用さを持つクォーダ。柳同様に剣も装備することができるし、大剣も使える。得意な武器というか、本人曰く、幾らか重量がないと落ち着かないということで常備武器は斧。他にも弓、棍棒、短剣や鎌に銃。蓑口やラビはおろか、柳ですら見たことのない武器でも難なく使い熟してしまうクォーダ。加えて敵に遭遇すると、最も効果的な武器を判別できる特殊能力を持っているようで、所持品の中から最適な物を選んで使っていた。
地下90階。さすがに4人ともボロボロだ。が、ボロボロながらも充実した表情を見せていた。しっかりとした足取りを保っていた。地下100階まで―終わりが見えてきた以外にも理由があって、何はともあれ装備品。当たり前と言えば当たり前だし、そうあって貰わないと困てしまうのだが、神々しき輝きを放つ。ラストダンジョンをスタートした頃と比較すると天と地、月とすっぽん。4人の装備品は全て、この世界における最上級の品々である。
柳の2刀は『ロキ=レーヴァテイン』と『十束剣=布都御魂』。洋刀と日本刀の二刀流でモンスターを討伐する。攻撃力もさることながら特筆すべきはやはりスピードか。柳の特徴を最大限に活かせる装備だ。興味本位でクォーダも握った所、その感想は「おもちゃだな」。短剣や忍者刀、小太刀ほど小型ではないが、クォーダの好む大剣と比べれば確かに小振りな、一般的な長さである。錯覚というのは不思議なもので、筋骨隆々で200センチを超える背丈の人間が握ると心細く映るものだ。けれども誤解なきよう。最上の業物二刀である。柳が納得した二刀である。現状これ以上の物は考えられぬ二刀である。
ラビの武器は一風変わっていて、杖やロッド、数珠ではなかった。地下88階で見つけた武器を選んだ。見慣れぬ武器に対して「なんだそりゃ?」というクォーダの問いに対し、ラビは「法具という奴だな」と答えた。斬る、刺す、殴るだけが武器ではないのだよ、と付け加えて。
『ヴァジュラ=炎霆』。20センチくらいの棒の両端に豪勢な装飾が施されていて、片方には見る角度や光の当たり具合によって無限の色合いを見せる宝玉。もう片方には4本の小さな宝剣が付されているが、攻撃の為の刃ではなく、攻撃力が上がる訳ではない。法力が上昇する、圧倒的に。非戦闘時は金色に輝く美しい法具であるが、戦闘に突入すると、ラビの法力上昇と共に紅が混じる。それもまた美しい。火炎属性に特化した、まさにラビの為の装備品である。
クォーダの武器は4種類。つい先程までは5種あったのだが、ひとつ前の階で斧が折れて使い物にならなくなってしまった。『ゲイ=ボルグ』、槍。『トール=ミョルニル』、槌。『鳥弓=サルンガ』、大弓。『ジャイアント=ハルパー』、鎌剣。手に持ち腰に携え、肩に下げたり背中に背負ったりと、傍目には邪魔なようにしか見えないけれども、本人は至って満足気なのだ。これ位の数と重さの武器を身にまとってようやく落ち着くのだそうだ。
そして蓑口。『柳暗花明の杖』。美しき最上の時を取り戻すと言われている杖であり、彼女の法力を上昇させることは間違いない。蓑口が選んだ杖であるから誤りはないはずだし、相応の特殊効果はあるはずなのだが、何故この杖を?もっと良さそうな物はあったはずだが。そんな疑念が柳の中にあったが、口にはしなかった。




