道具屋会議③
オリベイラに帰り、蓑口さんに何か知っているか尋ねてみた。
「はい。私も2回、出席したことがあります。ローグライク会議のことですよね。」
なんと出席したことがあるらしい。しかも2回。ベテランじゃないのか。ラビが出席しているのだ、蓑口さんが参加していてもおかしくはないが、コイツは助かった。当日までに色々と聞くことができそうだ。
「一体何を話し合うのでしょうか。招待状にはあまり説明がなくて―持ち物は筆記用具でいいのでしょうか。それと場所も聞いたことのない所で、黒の城と書いてありました。なんか不吉な名称ですよね。結構な人数が参加するんですかね。全員道具屋なんでしょうか。でも蓑口さんとかラビが参加したことがあるということは、冒険者の人達も出席するということでしょうか。」
夕食を頂きながら雪崩の様に質問を浴びせてしまった。受け手の蓑口さんはというと、仄かに口元が緩んでいる。助けを求める姿が必死過ぎておかしく映っただろうか。
「不親切な招待状ですよね、本当に。できる範囲で私が少し補足しましょう。」
その話振りから勝手知ったるということは確実か。本音を言えば道具や会議なんぞよりも気になっていることはいくらでもあるのだが、忙しい所、時間を作ってくれているのは蓑口さんだ、お行儀良く聞いているのが筋だろうて。そうだな、改めて思い出すと、ホント、道具や会議なんぞどうでも良いと言ったら語弊があるが、当日に会場の担当者なり関係者に聞けば済む話だ。クゴート襲撃の件以降、タイミングを伺ってはいるのだが、踏み出すことはできずにいた。今回のローグライク会議に関することだけではない。例えば、運び屋は勇者ですか、とか。
「持ち物は筆記用具程度で問題ありません。メモ帳というか、小さなノートがあると便利かもしれませんね。」
「どんな内容の会議ですか?」
「今回の会議がどこまで進むか分かりませんが、基本的な打ち合わせの軸はアイテムの作成になるはずです。」
「アイテムの作成・・・ですか。」
ちょっとイメージが湧いてこず、じ~っと蓑口さんの顔を見つめてしまった。髪が少し伸びて鎖骨にかかっている。前髪はちょくちょく整えているみたいで、変わらず眉毛が隠れるくらいの位置。おでこもいつも通り見えない。食事の支度をする時は後ろで結んでいて、それがまた素敵だ。
「ん?私の顔に何かついていますか?恥ずかしいな。」
笑顔プラスちょっと首を傾げた仕種は無双無敵だ。
アイテムの作成・・・ピンと来ない俺に、蓑口さんは具体的な武器を例に説明してくれた。
「例えば、そうですね~・・・『疾風の剣』という武器があります。値段は忘れてしまいましたが、これは1ターンに2回攻撃することができます。その代わりに攻撃力は半減します。他にも、ん~・・・これもいくらだったかな。『ミラーシールド』という防具があります。これは魔法ダメージを3分の1程度跳ね返すことができる盾なのですが、敵に飛んでいくか味方に向かってくるかはランダムです。」
「は、はぁ・・・なるほど・・・」
いまいちピンと来ていない俺に蓑口さんは補足を続ける。
「このように特殊な武器、防具、道具を提案する為の会議がローグライク会議です。ただしそういったアイテムは得てして大変に高価。そして、必ず制約と呼ばれるものが課されます。」
「セイヤク、ですか?」
「はい。このアイテムはこんなに凄い特殊効果があるんですよ、その代わり―という感じですかね。値段が桁違いに高価なのは当然で、それプラス、リスクが生じます。性能が高ければ高い程、そのリスクは大きくなります。実用的な特殊効果をいかにして実弊害の小さいリスクで抑えるかが腕の見せ所というわけです。」




