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道具屋会議②

「お待たせしました。」

外で待っていたのはやはり知らない、そして怪しい人物だった。全身を白いフードコートで覆っていて、顔も見えない。奇怪千万。警戒せよと俺の防衛本能が発していた。いざとなったら剣でも斧でもぶん回してやるからな。

「お掃除もできていますし、商品の並べ方も丁寧。店員さんも笑顔の素敵な方ですね。」

「どうも・・・」

カウンターデスクがあって助かった。距離の取れることがこんなに心強いと初めて知った。んっ?奥に行ってな、と中に入れたラビが柱の影からこっちを盗み見ている。隠れているつもりだろうが、体が半分くらい曝(さら)け出されている。それと右手に握っているのは、鉛筆だな。考えることは一緒のようだ。そしてラビの中でも警報が鳴っているのだろう。

 「如月 淳様に、ローグライク・ミーティングの案内状が届いております。」

そう言って、男は封筒を手渡してきた。声から性別は判断できた。

「ローグライク・ミーティング・・・ですか?」

初耳もいい所だ。

「道具屋会議とでも言いますか。詳細は案内状をご覧下さい。では―」

そう言い終わるが早いか、男は消えてしまった。魔法使いの類だとは思うが、心臓に悪い。


 「ラビ、出てきていいぞ~。」

はっとして、すっと首を引っ込めたラビが恐るおそる再び顔を出し、トコトコ歩いてきた。

「お客さんは誰でしたか?」

「俺も知らない人だったよ。」

固く握られたラビの右手をゆっくり解(ほぐ)しながら鉛筆を受け取る。ラビと俺に装備できる唯一の武器だ。

「どんなご用事でしたか?」

「それは―」

どう説明したら良いのだろうか。正直言ってよく分からない。会議とかローグライクとか単語が出てきたが、具体的なことは意味不明。かと言って、わからんと言うのもどこかそっけなく、思いやりがないと受け取られては嫌だ。それと、詳細は貰った封筒に書いてあるとは思うが、ここで開けるのは避けたかった。別にラビと一緒に中身を確認しても悪くなかったが、万が一ラビに心配をかける事態になるのは困る。さて、どうやって切り出そうか。

 「なんか・・・すごく難しくてややこしくて、面倒な会議があるらしい。困っちゃったな。」

こう言っておけばラビが首を突っ込んでくることはないと踏んだのだが、

「えーっ、会議ですか?わ、ラビも行きたいです~~!」

「そうか・・・ええ~~!?」

前置きを聞いていなかったのだろうか。そもそも、黙ってずっと座っていなくてはならない会議なんて、ラビが毛嫌いしそうなものだが、どうしたものか。予定が崩れてしまった。つまらないぞ~、退屈だぞ~と脅してみようかと思ったその時だった。

「ずっと前に行ったことがあるです。」

「うん、そうか、そうだな・・・何ー!!」

ケタケタ笑うラビと、理解が追いつかず大混乱の俺。だが、話を聞くことができるのは大きい。詳しく、正しく、的確にというのは荷が重いだろうが、大雑把な情報で十分。全くの無知よりは遥かに心強い。

 「なぁ、ラビ。会議について知っていることを教えて欲しいんだ。何でもいいぞ、覚えていることを話してくれないか。」

「はいです・・・」

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

ラビが難しい顔をしたまま動かない。珍しく腕組みなんかしちゃって、首を傾げて、一所懸命に思い出そうとしてくれている。邪魔してしまうのは得策ではないよな。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「う~ん、と・・・ですね~・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 ついに俺が痺れを切らした。

「なぁ、ラビ。難しく考えずに何でもいいんだぞ。どんなことを話したとか、どんな人がいたとか。」

「覚えていないです。」

「ふぇ?」

膨れっ面で、今にも泣きそう並びが続ける。

「嘘じゃないです。ローグライク・ミーティングには行ったです。お姉ちゃんに連れて行ってもらったです。」

「うん、蓑口さんと一緒に行ったんだな。それで?」

「そこから何も思い出せないです。大きなお城がありました。あとは、分からないです。ごめんなさいです。」

「そんな謝ることなんてないぞ。大丈夫だから。無理に思い出そうとする必要はないからな。な、なっ。」

本当に泣いてしまいそうだ。

「う~・・・分かったです。」

口では諦めてくれたが、顔が全く納得していない。不機嫌と言うか、ちょっと怒っているな、こりゃ。ラビを椅子に座らせ、肩を揉んで気を落ち着かせてやった。

 絡繰(からく)りにピンときた。封印による記憶の遮断。理由は推測できる。会議で必要とされるのは、大魔道士としてのラビの知識、経験。現地に到着したと同時に封印を施したのだろう。こいつはお姉ちゃんに聞いた方が良さそうだ。


 1日の仕事を終え、ふぅ~と一息つく。ラビは1時間前に上がっている。送迎は運び屋の担当だ。静かになった店の中で、さて・・・と。椅子に座り、例の封筒を開けた。道具屋会議の案内状。

『・日時 6月9日

・所 黒の城

 ・時刻 10:00~ 

案内状の届いた皆様へ。お忙しい所、大変恐縮です。世界に平和を取り戻すべく、皆様のご尽力、並びに武器、防具、道具の開発が必要であることは言うまでもありません。勇者一行では決して辿り着けぬ境地。是非とも皆様のご出席と、ご提案をお待ちしております。

追伸。お時間には余裕を持って頂けますよう、お願い致します。』

 4日後か・・・店は臨時休業にしよう。明日早々、ラビに伝えないといけない。議題については記されていないが、テーマは魔王討伐の為にということで間違いないはずだ。会議した所でどうにかるものではないと思うが。大魔王とその直属部隊を直接目にした経験からの感想ではなく、運び屋一行、伝説人を最上のクラスと仮定した際の所思である。


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