↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/94

塵も積もれば⑦

 『5千ルナの報酬』は俺にとって大きなヒントになった。例えばレジの設置。今では暗算の得意ではない俺でも会計時に困ることはなかった。しかし褒美の項目として具体的に挙がってくると、いずれその内必要になるのだろうと勘繰(かんぐ)ってしまう。かと言って、努力の結晶を暗算可能な今の段階でレジ捧げるのは気が進まない。それならば作ってしまおう。客の信頼にも繋がるしな。暗算よりも安心感を付与することはできるはずだ。こんな立地ではリピーターなんて期待できないが、今後のことも考えれば損はするまいて。

 俺の自信になった項目も。看板は既に作成済みだ。素人による手作り品なので、褒美のそれよりはうんと見劣りするとは思うが、「ここは道具屋ですか?」と聞かれることはなくなった。看板の役割は十分に果たしてくれている。照明はないけれどな。

 さて、道具屋うどんこ新天地のスタートはと言うと、何も変わらず現状維持。ダンジョンの中間地点だなんて脅すものだから血だらけ、死にかけの勇者が来店したらどうしようかと思っていたが、取り越し苦労だった。冒険開始直後の洞窟ということで、難易度は低いのかもしれない。クゴートの里に比べれば薄汚れた客が多い印象は持ったが、魔王討伐の為に頑張っている結果だ。目を瞑ろう。店先が泥で汚れたら掃除すればいいさ。

 そう言えば、傍目から冒険者の職業がちょっとは見分けがつくようになった。ジョブごとの特徴が現れ始めた。近接系、勇者や戦士は鎧に盾、剣なんかを装備しているので、まぁ、見るからに強そうには映る。一方の遠距離系、魔法使いや僧侶は普段着だな、ほとんど。杖やロッドなんかもまだ売っていないようだ。

 問い合わせに答えられるよう、新規アイテムについて、発注表を使って効果や性能を調べておいた。美味しそうな名前の『月見草』。コイツは麻痺を治すそうだ。毒消し草同様、ステータス異常に効果を発揮するアイテムとのこと。ジョブに関係なく誰でも装備可能な『棍棒』。攻撃力が5ポイント上がる。『皮の盾』も全員が装備でき、防御力が3ポイントアップ。お次は『ターバン』。こちらは商人専用防具。防御力3ポイントアップに加えて特殊効果があり、敵の落とすルナが3ルナ増えるそうだ。その原理は分からんが商人という職業はルナに関する特典みたいなものがありそうだが、きっと人気はないだろうな。そして、武道家専用防具の『拳法着』。防御力と素早さが伴にポイント上昇すると説明があった。武道家は比較的人気のあるジョブなのだろう。パーティー内にしばしば見かけた。ターバンよりは売上げに貢献してくれそうだ。

 クゴートの里と比べて、毒消し草がよく売れるようになった。とある勇者から話を聞くと、ダンジョン内に毒持ちのスライムが生息しているそうな。攻撃力自体は大したことないのだが、攻撃の際、10パーセントの確率で毒を与えてくるという。コイツが厄介。ステータス異常の毒は戦闘を終えても自然回復はせず、何歩か歩く度にヒットポイントを奪われてしまう。僧侶が解毒魔法を覚えるまでは毒消し草が必須なのだそうだ。クゴートの里でも売っていたのだが、何とも準備の悪いパーティーが多いことよ、というのは心の中にしまっておくが、最初のダンジョンの関門はいかに毒を喰らわないか。受けた毒を即座に解毒して無駄にヒットポイントを減らさないか。素早い武道家がいると先手が取り易いなんて言っている奴もいたな~。俺の知った所ではないが。こっちはこっちでちょっと問題が発生して、それ所ではなかったのだ。2日目に毒消し草が売り切れてしまった。何組かのパーティーに迷惑をかけてしまった。あるパーティーなんか4人全員が毒状態で、でも店の毒消し草は品切れで。苦肉の策で薬草を持てるだけ購入していった。ダイヤ・セガタの町まで辿り着けただろうか。

 毒消し草の代わりに薬草が売れた。そこから俺の学習したことは売価と原価。五千ルナ達成に向けた第一歩だ。

 俺が店で客に売っているアイテムの価格。薬草が10ルナ、毒消し草であれば6ルナ、拳法着ならば300ルナ。これが売価である。値札に書いてある数字だ。客に物を売ればそれだけのルナが手に入るわけだが、当然そのまま俺の儲けとなりはしない。俺も商品を仕入れている、買っているからだ。どこで製造、加工、もしくは採取、栽培されているかは知らないが(問い合わせのないことを願う)、運び屋にルナを払って商品を納品してもらっている。薬草が8ルナ、毒消し草3ルナ、拳法着は200ルナ。これが原価だ。俺の稼ぎは売価から原価を引いた金額。つまり薬草ならば10-8で2ルナ、毒消し草は6-3の3ルナ、そして拳法着は300-200で100ルナ。文字通り桁違いの金額。1着で100ルナも稼げてしまうのだ。薬草の何個分だという計算が自然と遂行される。おいしい商材である。逆に薬草を10、20個売った所で、という思考回路も形成されるのだが。

 他にやることがないからというのが1番の理由なのだが、オメガの丘にて俺はよく動いた。真面目に勤めた。精一杯頑張った。オメガの丘での1ヶ月でいくら稼げるかが楽しみだったからだ。運び屋に提示された5千ルナの報酬。まるで興味がないというわけではない。どうでもいいような項目もあったが、問合わせたいそれもあった。

 朝6時起床。俺の1日は店頭の掃除から始まる。こっそりと宿を抜けるのだが、女将さんも起きていて、ご飯を炊く香りが眠たい目を覚ましてくれた。ちなみにやや気恥ずかしいので、おはようございますの挨拶は帰ってきてから。さて、店に着いたらほうきで掃いて水も撒く。ダンジョンの中間地点ということで砂埃、泥汚れがひどい。風向き次第では店内も砂利だらけになってしまう。30分弱で掃除を終えて宿に戻り、シャワーを浴びて朝食を頂く。早起きして体を動かすと、特盛り朝食もペロリだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。