塵も積もれば⑥
今日も女将さんの特製巨大おにぎりを持って店へ向かう。
「もしも少なかったらおっしゃって下さいね。」
昨晩の考え事なんてどっかへ吹き飛んでしまう。そして、間違っても小さくしてくれとは言いたくないな。男だもの。
発注は薬草と帰還の羽を適当に。この店舗の状況が分からないので余計な手出しは控えたほうが無難だと判断、武器と防具については発注せずに様子を見ることにした。手持ちの金は500ルナ。懐事情にあまり余裕もないので・・・ん?店の前に見慣れた人影が立っていた。偶然、ということではなかろう。俺を待ち伏せていたな、運び屋め。
「おはようございます、如月さん。お早いですね~。」
7時45分に宿を出てきた。早くはない。俺の中で警戒心が強まっていった。
「おはようございます。あれ、昨日の内に発注票はポストに投函しておいたのですが―」
相手の要件を聞き出さねばならない。
「はい、頂きましたよ~。」
運び屋は、やたらめったら質問を記入した発注表を片手でヒラヒラさせながら、物凄い笑顔で答えた。相も変わらずの奇抜な格好をして。
「本日の納品はありません。代わりにと言っては何ですが、こちらを―」
そう言いながら、今度はもう片方の手に持つ別の紙をヒラヒラさせた。あまりいい予感はしない。
運び屋がバビューンと飛んで行った後、俺は店の椅子に腰掛けて文字を追っていた。開店までまだ幾らか時間がある・・・というか、開けたら即人が押し寄せるなんてことはない。看板をCLOSEDからOPENへ引っくり返しておけばいいだろう。事情が変わった。俺の予感が外れた。運び屋の持ってきた一枚の紙切れは決して悪い話ではなかった。説明が不親切で問い詰めるべき所はいずれ質問するが、興味深い内容ではあった。
「なになに・・・五千ルナ到達時の報酬・・・ねぇ。」
・レジスターの設置
・福引の設置
・原価1パーセント削減
・他店舗との情報交換
・勇者一行の情報獲得
・看板設置(照明付き)
・24時間営業可能
・自動販売機の設置 etc...
他にも「アイテム図鑑 巻の1配布」とか、「配達用車両のレンタル」等、何のこっちゃ分かない項目や今の自店では必要ないと思われる内容も含めて、全部で10項目以上。果たして、全ての褒美が同等に5千ルナの価値があるのかどうかは定かではないが、心惹かれる文言があったのは確かだ。
「不明な点は遠慮なくご質問下さい」ともあった。根本的な問題として、誰に質問すりゃいいんだという疑問もあったが、運び屋に聞いてみるか。




