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喫茶店『Calm』でごゆっくり  作者: 喜久 じん
3/5

2.始まりの街

ゆっくり投稿ですみません。気長に待ってくださると幸いです。

 気がつくと、噴水の前に立っていた。

 辺りは私と同じような装備をした人達で溢れかえっており、かなり賑やかだ。人種も髪色も多種多様で目に優しくない光景である。

 石畳で囲まれた噴水の傍には私たちプレイヤー用に街中の地図が掲示されており、大半の人たちはすぐに冒険者ギルドがあると思しき方向に移動しているようだ。移動していない残りはパーティーに勧誘する人や、私のように待ち合わせだろう。


「姉ちゃーーーん!」


 そんな中、私を見つけたであろう弟の呼ぶ大声はかなり響いた。もう大学生なのに落着きがなくて恥ずかしいが、そこもまぁバカワイイってやつか。しかしこの大人数に注目されるのは流石に恥ずかしい。

 私の様子に気付かず、こちらに駆け寄ってくる京一。そのまま抱き着こうとしているのか、両腕を広げているので私も両腕を開く。


「姉ちゃげぶふぉあ!!」

「時と場所を考えろ!」


 抱き留めてくれると思ったのか、笑顔でスピードを落とさずに来た京一の腕を紙一重でかわし、そのまま右腕を伸ばして首目掛けて力を込めた。まぁ要するにラリアットですね。


「何て容赦のないラリアット…」

「急所に的確な攻撃だな」

「あの馬鹿を止めるには良い薬じゃない?」

「あら、弟のお仲間かしら?ごめんなさいね、変なところ見せて、実姉のは…っと違った、リーフです。お世話になってます。」

 

京一のパーティーメンバーであろう三人が、遅れて私のところに来た。私と弟のやり取りを見ても呆れている辺り、おバカな行動は日常茶飯事のようで申し訳ない。顔を向けて会釈をすると、慌ててこちらに駆け寄ってきた。


「βから一緒にパーティーを組ませてもらっています、シャルムです。主に索敵と弓を使います。種族は犬獣人です。」

 少し私の躾(ラリアット)に尻込みしている、緑色のウルフカットに金色の瞳、茶色の犬耳に尻尾、肩に狩猟用の弓を携えた女性。


「同じ大学に通ってるリア友のギュウ・タンです。主にタンク役をしています。種族は霊亀族。」

 シャルムとは逆に関心している、身長が高くて全体的にがっちりした体形の群青の髪色に、おおきな盾とロングソードを携えた男性。


「おね…リーフさんお久しぶりです!幼馴染のナツです!魔術師やってます!種族はエルフです!」

 弟はぞんざいに、私に久しぶりと声をかける金髪ロングに緑の、大きく横に長い耳の杖を持った女性。

 それぞれ得意分野が違っていて、バランスの良さそうなパーティだ。特に、幼馴染のナツ・本名夏樹が一緒にいるというだけで安心感が違う。いつもすみません。


「で、カフワは何の種族なの?」

「俺は霊鳥族!前衛なんだ!火属性だから温かいよ。姉ちゃんはそのまんま?」

「うん、人族だよ。一応水魔術をとったんだ。」

いつの間にか復活して後ろから抱き着いていた京一ことカフワは真っ赤な髪の毛を無造作に伸ばして、これまた真っ赤な瞳をしている。こちらもロングソードを持っており、様になっている。



 そのまま皆で冒険者ギルドに向かうことになった。特に予定を決めていたわけではなく、弟がパーティーメンバーを紹介したいとのことで今こうしているわけだ。おそらくゲーム内で知人を作ってあげたかったのかなと推測するも、口には出さない。

 実際体力はまだ戻っておらず、外出も控えている状態だ。免疫力が落ちているので、せめてもう少し肉をつけないときっとすぐ風邪をひくだろう。

 ゲーム初心者なので、こういった気遣いには遠慮なく乗っかっておこう。βテスターというのも強みなのだろう、私に頼られたくて仕方ないといった雰囲気でうちの弟可愛い。


 雑談をしながら町をゆっくり眺める。噴水から大通に出ると、大型店舗が立ち並び、冒険者向けの武具やテント、雑貨や工具のようなものを販売している。先ほど地図で確認したが、噴水の反対側に市場があるらしいので後で覗いてみたい。

 カフワ達と雑談しながらも、ゲームキャラの会話に耳を澄ますと奥様の井戸端会議や商人の噂話、小さな子供が遊んでいる何気ない日常の騒音が聞こえる。

 すごい。ここまでリアルだなんて。

 少し温かい気温も、頬をなでる風も、カフワの左手を握る手も、全部本物だ。


 自然と口角が緩んでいたことに、カフワが気付いて優しく微笑んだ。



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