Chapter 3 貧しい食卓
少年が男を家へ招き入れると、少年の父親は露骨に警戒した。
「誰だ、この人?」
少年が事情を話すと、父親は顔色を変えて叱りつける。
「お前、あれほど奥へ行くなと言っただろ!」
「ご、ごめんなさい。薪、たくさん集めたくて…」
父親はそれを聞くと黙り、男の方を見る。
男は二人を見ながら、黙って立っている。
「あんた、名前は?」
「ユーグ」
「……息子を救ってくれたこと、礼を言う」
父親はユーグに深々と頭を下げると、家の中へ通す。
「まあ、座ってくれ。大したものは出せんが」
ユーグの前に並んだのは、薄い麦粥と黒パンだった。
麦粥は、器の底が見える。黒パンも固い。少年、父、母、妹と見られる少女の前には、麦粥だけが置かれている。
ユーグは軽く会釈をすると、何も言わず食べ始める。麦粥をすすり、黒パンをかじると、ユーグはふと視線に気づく。
斜め前に座る少年の妹が、じっとユーグを見ている。いや、正確には、ユーグの手にある黒パンを見ている。
ユーグは黒パンに視線を戻すと、何も言わずに両手で割り、半分を妹に差し出す。
妹が、驚いた様子で母親を見る。
「……いただきなさい」
妹は遠慮がちに手を伸ばし受け取ると、夢中でかじり始める。
表情が明るくなる。
ユーグも、残った半分を食べる。その様子を見ていた少年が、ユーグに尋ねる。
「全部あげないんだね」
「?」
ユーグが少年を見て答える。
「俺も腹減ってる」
父親が噴き出す。
「ははっ。そりゃそうだ」
食卓の空気が緩む。ユーグは特に気にした様子もなく、食事を続けた。




