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死神円舞  作者: cry-me
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俺が死んでる

「……俺が死んでる」


 何気なく目を向けたTVのニュースでは、正午に起こった事件が報道されていた。


『――本日午後1時15分頃、住宅地のマンションで男性の遺体が発見されました。周囲の状況から遺体は事故死と思われ、身元は所持品から同マンション住人で無職の』


 報道で繰り返し表示される名前は、確かに俺の名前だった。

 住んでいる場所も間違いない。

 だが、今はまだ昼前で、もちろん俺は死んでいない――。


「あー見ちゃいましたか―?」


 不意に、そんな感じの少女の声が部屋に響いた。

 画面から顔を上げると、テレビのすぐ横に、いつの間にか黒尽くめの少女が立って居た。


「うーん、やっぱり私が近づくと電子機器が異常をきたしちゃうようですねー、困ったもんですー」


 黒い少女はのんきそうな声で腕を組んでテレビを見つめている。


「……お前、誰だ?」

「あ、私ですか―? 始めまして、死神の八咫ミサキと申します―」

「死神!?」

「あーはい、今更死神が何なのかって説明は要りませんよねー?」


 少女は不吉な黒尽くめで、俺の前に立つ。


「じゃ……もしかしてさっきのニュースって……!」

「あらご察しが早い……そうです、未来に報道されるはずのニュースなのですが、どうも私が近づいた為に未来と混戦してしまったようですね、ほら死神ってこの世の存在じゃないですし」

「ちょ、ちょっと待てよ! じゃ……俺は死ぬのかよ!? 今日!」

「あーはい、ニュースだと午後1時15分と報道されてましたねー、つまりあと約1時間後には」


 冗談じゃない……そんな話信じられるか! と、少女を追い出したかったが、さっき見てしまった未来のニュースはとても作り話と鼻で笑う事は出来なかった。


「な、なぁ……何とかならないのかよ!」

「はぁ……何とかと申しますと?」

「だから……死にたくないんだよ! 助かりたいんだよ! 死なずに済む方法ってないのかってっ聞いてんだよ!」

「はぁ……なるほど、私としては予定通り死んで欲しいんですが、別に方法が無いって訳じゃありませんー」

「ほんとか!?」

「はいー、基本的に未来は変えられないんですけどー、ちょっとした裏技ってのが実はあるんです」

「裏技?」

「実を申しますと私ただの通りすがりでー、貴方の担当じゃないんですよー、なのでここだけの話ですが、要するにあの報道自体は変える事は出来ないわけですが、逆に言えば決まっているのは、あの報道だけと言う事です」


 死神は指を立てて、ここがポイントですとでも言いたげな表情で続ける。


「つまり、あの報道がなされた後、貴方が蘇生したり、実は死んだのは別人だったとなってもいい訳です」

「そうなのか!?」


 何か案外緩いんだな運命。


「その代り、報道の内容が変わる事はありませんけどね、つまり午後1時15分に、このマンションであなたと同じ名前の死体が発見されればいいのです」

「誰かを身代りに殺せって言うのか!?」

「ま、それも手段の一つですが、そうですねー、貴方が時間までに結婚なり何なりして自身の名前を変えて、しかもこのマンションに同姓同名の男性が居たら、その人が好ぬ事になる訳です」

「……生憎恋人すら居ないし居ても名前を変えるなんて1日じゃ無理だ、それに同姓同名の住人も住んじゃ居ねぇ……」

「あー……別に報道時に名前を間違って報道されるってのもアリですねー」


 と、言う事は……。


「誰かを殺してから、顔の見分けをつかなくして、んで俺の身分証とかをそいつに持たせりゃいい訳か!」

「……でも、それって確実に殺人容疑で捕まりますよねー?」

「自殺に見せかけるんだよ! 俺の部屋に盗みに入って罪の呵責に耐え切れなくなって部屋で首を吊った、だ! 丁度下の階に俺と似た様な体型で無職の奴が居る……」


 待てよ……でもそうすると住所とかで名前がばれるな。


「……強盗に入って取っ組み合いで正当防衛にした方がいいか……で俺はそのショックで記憶喪失を演じればいけんじゃねぇか!?」


 よし、俺って冴えてる。


「顔の方は俺が熱湯をかけたって後で証言でもすりゃいい!」

「ちょっと行き当たりばったりって言うかー」

「いいんだよ! とりあえず細かい事は殺してからだ! あと30分以内に誰かを身代りにしねぇと俺が死ぬんだよ!」


 適当に目についた延長コードを抱えて、俺はベランダに出る。

 俺は知っていた。

 今から殺そうとする奴は、引き籠り気味で滅多に部屋から出ない事を。

 ベランダから、排水溝を伝って下の階へ降りる。

 すると狙う部屋はすぐそこだ。

 正当防衛を主張するなら相手の武器も必要だが、殺した後にでも用意すればいい。

 網戸になっている事を確認。

 もしかしたらまだ寝ているのかもしれない、なお好都合だ。


「そう言えばー」


 死神が、唐突に話しかけてきた。俺は構う余裕も無く、目当ての部屋のベランダの柵に何とか手を掛ける。

 よし後は慎重に足をかけて、柵を乗り越えればベランダに侵入出来る。


「……報道では事故死って言ってましたよねー」

「は?」


 その瞬間、足が滑り俺はバランスを崩した。


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