#19¦ソラリスとフロレンシア¦
白い花畑だった。
一面に咲き乱れる白い花が、風にそよそよと揺れている。甘い香りが鼻腔をくすぐり、空はどこまでも透き通るような青。柔らかな陽光が、すべてを優しく包み込んでいた。
ソラリスはゆっくりと息を吸った。
――夢だと、すぐにわかった。
現実の硬い地面や、火の匂い、シラタマの鱗の冷たさとは違った。
ソラリスは、息を呑んだ。
(大人なお姉さんも、銀河一かわいい……!)
オタクの心が、胸の奥で大きく爆発した。
前世で何百時間も見つめ続けたあのフロレンシアが今、目の前にいる。しかも、ゲームの少女らしい可愛らしさに、ほんの少しだけ成熟した色気が加わっている。美しすすぎて、言葉が出ない。
足が勝手に動いた。
「フロレンシア……!」
テンションが一気に跳ね上がる。
「私も、会いたかったわ!本当に、本当に会いたかったの!」
ソラリスは駆け寄り、両手をぎゅっと握りしめた。
「はじめまして。私はソラリス。あなたのことがすっっっごく大好きで会えてとてと嬉しいわ!」
言葉が止まらない。キャバ嬢時代に鍛えたトーク力などどこへやら。推しの前ではオタクはオタクにしかなれない。
フロレンシアの瞳が、ほんのわずかに悲しげに細まる。
――え?
一瞬だけ目の前のフロレンシアが悲しそうな表情をしていた。その姿をソラリスは見逃さなかった。
フロレンシアは悲しそうな表情から一変して微笑む。
「ソラリス……今、ヴェルナディアで何をしているの?」
「え……えっと…………」
――なぜ悲しそうにしていたのか。
それを問う前に話をかけられてしまった。
ソラリスはフロレンシアに今の状況を話した。
棺桶の中で目覚めたこと。シラタマというドラゴンと一緒に行動していること。そして今、スウィートピア港を目指して旅をしていること。
「ごめんなさい、あなたを1人にしてしまって」
フロレンシアはどこか申し訳なさそうな顔をしていた。青い瞳の奥で涙をこらえている。
「なんでフロレンシアが謝るの?それよりフロレンシアこ今どこで何してるの?私、絶対にあなたに会いに行くから!」
フロレンシアは、ゆっくりと首を振った。
「ごめんなさい。……今は、まだ言えないの」
「どうして……?」
フロレンシアは優しく、けれどどこか寂しげに微笑んだ。
「でも、きっといつか……めぐり会えるわ。それまでに立派な聖女になってね」
ソラリスは単刀直入にフロレンシアに聞く。
「今の聖女って……やっぱり私なの?」
フロレンシアは、穏やかに答えた。
「そうよ、貴方が次の聖女よ、ソラリス」
ソラリスの心臓が、大きく跳ねた。




