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19/30

#19¦ソラリスとフロレンシア¦

 白い花畑だった。

 一面に咲き乱れる白い花が、風にそよそよと揺れている。甘い香りが鼻腔をくすぐり、空はどこまでも透き通るような青。柔らかな陽光が、すべてを優しく包み込んでいた。

 

 ソラリスはゆっくりと息を吸った。

 ――夢だと、すぐにわかった。

 現実の硬い地面や、火の匂い、シラタマの鱗の冷たさとは違った。


 

 ソラリスは、息を呑んだ。

 

 (大人なお姉さんも、銀河一かわいい……!)

 

 オタクの心が、胸の奥で大きく爆発した。

 前世で何百時間も見つめ続けたあのフロレンシアが今、目の前にいる。しかも、ゲームの少女らしい可愛らしさに、ほんの少しだけ成熟した色気が加わっている。美しすすぎて、言葉が出ない。

 

 足が勝手に動いた。

 

「フロレンシア……!」

 

テンションが一気に跳ね上がる。

 

「私も、会いたかったわ!本当に、本当に会いたかったの!」

 

 ソラリスは駆け寄り、両手をぎゅっと握りしめた。

 

「はじめまして。私はソラリス。あなたのことがすっっっごく大好きで会えてとてと嬉しいわ!」

 

 言葉が止まらない。キャバ嬢時代に鍛えたトーク力などどこへやら。推しの前ではオタクはオタクにしかなれない。

 

 フロレンシアの瞳が、ほんのわずかに悲しげに細まる。


  ――え?


 一瞬だけ目の前のフロレンシアが悲しそうな表情をしていた。その姿をソラリスは見逃さなかった。

 

 フロレンシアは悲しそうな表情から一変して微笑む。

 

「ソラリス……今、ヴェルナディアで何をしているの?」


「え……えっと…………」


 ――なぜ悲しそうにしていたのか。


 それを問う前に話をかけられてしまった。

 

 ソラリスはフロレンシアに今の状況を話した。

 棺桶の中で目覚めたこと。シラタマというドラゴンと一緒に行動していること。そして今、スウィートピア港を目指して旅をしていること。


 「ごめんなさい、あなたを1人にしてしまって」

 

 フロレンシアはどこか申し訳なさそうな顔をしていた。青い瞳の奥で涙をこらえている。

 

「なんでフロレンシアが謝るの?それよりフロレンシアこ今どこで何してるの?私、絶対にあなたに会いに行くから!」

 

 フロレンシアは、ゆっくりと首を振った。

 

「ごめんなさい。……今は、まだ言えないの」

 

「どうして……?」


 フロレンシアは優しく、けれどどこか寂しげに微笑んだ。

 

「でも、きっといつか……めぐり会えるわ。それまでに立派な聖女になってね」


 ソラリスは単刀直入にフロレンシアに聞く。

 

「今の聖女って……やっぱり私なの?」

 

 フロレンシアは、穏やかに答えた。

 

「そうよ、貴方が次の聖女よ、ソラリス」


 ソラリスの心臓が、大きく跳ねた。

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