四話
朝早くから連れてこられた豊田厚生病院。
早朝にも関わらず意外と人の多いこのでかい病院は適当に歩いていたら迷子になりそうである。
「この場合って何処に見てもらったらいいの?」
「分かんない……産婦人科?」
「な、なぁ……そろそろ俺の何処が超ヤバいのか説明してくれよ」
少ない友人と春休みの間に何か予定がある訳ではなく病院に行くのを断りきれなかった俺は二人に引っ張られる形であちこち連れ回される。
要領を得ない姉と母の説明に先生の方も困惑しつつ俺への検査を進めるうちに目の色が変わる。
真剣な表情の先生数名から診察を受け総合的な結果を知らされたのは正午を回って少しした時だった。
「双星 誠也君はDSD……性分化疾患。
一言で分かりやすく言うのなら……『ふたなり』です」
「「「は?」」」
想像の三倍くらい角度の着いた。斜め上の事実を告げられたのである。
「この病気の人は本来どちらの性器も未発達で育つことが殆どなのですが聖也くんの場合はどちらもしっかりと成長しているようで実に珍しいケースですね」
東と書かれた名札を首から下げる先生は俺達が言葉の意味を理解できないまま話を続けていく。
「しかし、この年までなぜ逆に全く気が付かなかったのかも謎ですね」
「あ、あの出産した時は男の子だって……」
母が戸惑いつつも質問した。
「そりゃ、こんな立派なおチンチンが着いてたら誰でも男の子だと思いますよ。産まれたての赤ん坊なら特にね」
産まれてまもない赤ん坊の細胞を採取してわざわざ生体情報から性別を確認しなくてもそこに有るか無いかで判断する方が正確かつ速い。
「あの、このおしりとちんちんの間にあるのって……」
今度は俺の質問。気になっていた事を聞いてみた。帰ってくる返答は想像に固くないが。
「女性器ですね」
「じゃ、こっちの棒は……」
「男性器ですね」
「……もう、わけわからん」
ついに姉は頭を抱え出した。
「あの……女性器から出て来た大量の血は……」
「恐らく初潮でしょう」
「じゃあ、お赤飯炊かないとね!」
ダメだお母さんがキャパオーバーで考えることを放棄してしまった……
「ふ、ふたなりってエッチな本で題材にされるあの?」
「ええ、そうですよ」
「あれって空想の産物じゃ……」
「いえ、昔から稀にいますよ男性器が付いた状態で生まれてくる女性は」
その後も先生の話を理解しようと頑張って聞いていたが全然理解できなかった頭の処理速度が追いついていない。
しかし俺は最後にどうしても聞いておかなければならないことがある。
「先生、俺は男なんですか……それとも女なんですか」
意を決して喉の奥から言葉を絞り出す。
「それは聖也くん次第ですね。このまま体の成長と共に女の子として生きていくか。手術で女性器を摘出して身も心も男の子として生きていくか」
「て、摘出?」
「はい、女性器を取れば女性ホルモンの分泌は止まり、男性ホルモンによって男らしい体つきになっていくでしょう。今は成長期なので骨格もある程度は男性的になるかもしれません。」
て、摘出って……取るってことだよな。俺の中からこの感覚が消えるってことだよな……
そのとき俺は背筋が凍るような悍ましい感覚を覚えた。
目には見えないとはいえ自身の体の一部がなくなってしまう恐怖。初潮のせいで体調が悪かったのもあるのだろう。想像しただけで俺は吐き気がしてきた。
「うっ」
「聖也、大丈夫?」
看護師さんが慌てて持ってきてくれたポリ袋に胃の中のものを戻した俺はお母さんにしばらく背中をさすれながら今後の事を話した。
まず、手術でどちらか一方を取ることはしないこと。
これは俺自身が生理的に体の一部がなくなることを受け付けないからだ。想像するだけで吐いてしまうのだから実際に取ったらどうなるのか怖かったのもある。
次に、ホルモン接種で男性ホルモンを取り入れることだがこれは親が反対。
純粋にお金がないとのことだ。風邪薬とかと違ってかなり値段が高い男性ホルモンの錠剤を買う余裕はないらしい。
俺の体についてだが初潮に向けて女性ホルモンがかなり大量に分泌されていたらしい。そして男子と違い女子には月経と言う物があり今日のように女性器から血が大量に出るものなのだ。それによりこれからは女性ホルモンの分泌は更に増えるだろうとのこと。俺は対処できないままどんどん体が女の子になっていくようだった。
俺はこの先どうしようと頭を抱えながらトイレに向かい。便器のふたを開けてズボンを下ろした時に気が付いた。
パンツとズボンが真っ赤に染まっていた。
ウィキペディアで調べた情報くらいしかないし、私本人は『ふたなり』でもないのでお医者さんとのやり取りは全部想像です。




