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五話

 

「聖也、お前女だったって本当か!」

「一概に否定出来ないの草」


 病院から帰った後、母と姉に生理の処理の仕方を教えて貰い。肌の手入れの仕方と化粧について叩き込まれているとお父さんが帰宅したのだ。

 お姉ちゃんがツッコミを入れると三人で昼間の出来事を伝える。


「…………」

「お父さんもキャパオーバーしたか」

「そりゃするでしょ」

「じゃ、晩御飯にしましょう」


 どうしようもないので開き直って現状を受け入れつつあった俺達は思いのほか冷静になっていた。

 それに何もしなくても腹は減るのだ。家に帰った時お母さんが始めたのは夕食の準備だった。


「それにしても化粧のレクチャーは確実に要らないよね」

「そのうちするでしょ? 覚えておいて損はない」

「しないでしょ」

「ホルモン治療無しでそのまま生活していくんだからあんたそのうち完全に女の子になるわよ?

 化粧の一つくらい覚えておかないとね」


 一理あるかもしれないが流石に中学生でそれは早いだろう。この歳で化粧している同級生とかおかしいだろ。おかしいよな?


「下着も買わないとね」

「やだよ、周りにバレたくないしサラシとか巻いて胸の膨らみは誤魔化すよ」

「はあ!? ちゃんしたブラ着けないとおっきくならないんだよ!?」

「なりたくねぇわ!!!」


 放心状態の父を置き去りにし俺最大の衝撃の日は過ぎて行った。ここから始まるのは俺最大の苦労の日々であるのは言うまでもないだろう。




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 アレから一年。色々変化があった。

 もう誤魔化せない程、無駄に膨らんだ俺の胸はサラシで毎朝ガチガチに押しつぶしているが限界がある。

 呼吸が浅くなるので最近の体育は見学。

 ぶっちゃけ中三後半の体育とか消化試合みたいなものだから単位的には問題ないだろう。


 それにウエストも細くなってお尻はさらに丸い。

 俺は美少年ヲタクとして学年では有名人。

 金山と一緒にいることが多いためカップリングの対象にされている事も最近知った。俺は受けらしい。


 声変わりしないのは誤魔化せたとしてもそれ以外はそろそろ限界が見え始めていた。

 迷惑な事に姉の手により戸籍はいつの間にか女にされていたのでぶん殴った。

 幸い先生方に俺の身体のことを教えていたこともあり、誤魔化すことには成功している。と言っても俺が隠さないといけないのは数少ない友人である金山と芽衣くらいである。


 後は進学先が決まった事だろうか。

 夏休みの間に受験は終わり、俺は呑気なものだった。

 金山は偏差値の高い学校に通い。芽衣は近場の高校に進学するらしい。

 日常生活で顔を合わせることは無くなるだろう。少し寂しくはあるが俺の身体のことがバレるよりはマシかな。


 先生の話によれば俺の進学先は専修学校と言ってPC、ネットと言った情報社会に必要なスキルを身につける授業や資格の勉強と一緒に普通科の卒業資格も取れる。一石二鳥な高校だ。

 頭がいい奴しか入れないとかではなく。むしろ、行き場のない馬鹿連中が集まる場所のようだ。

 しかも、男女共学と言っておきながら男子と女子はクラスも教室も違う上に毎日通う校舎ですら徒歩十分とは言え別々の場所にある。「このパンフレット詐欺だよなぁ」と笑っていた担任教師の顔は記憶に新しい。


 俺はここに女子生徒として入学することが決まっている。男子と言い張るには胸の膨らみも腰の細さも尻の丸みも発育が良すぎるせいだ。

 向こうの先生方にも話が通っていて試験やら制服の採寸やらが俺だけ別室別日で行われたのはいい思い出である。生徒指導室に初対面の先生と一対一の状況が如何に緊張するか他人にはわからんだろう。その場で採点&面接も行われ内定の通知書をその場で貰い。採寸まで行われた。


 サラシで潰しているとはいえ今の俺はカップで言うとBはある。このまま行くと悲しいことにCに届きそうである。


 そして今日は俺が通う学校。豊田情報専門学校高等部の入学式だ。

 豊田の市駅から歩いて十五分。俺の場合は自宅から坂道を下って行きなら十五分。帰りは三十分の道のりを自転車で行った所にある。

 慣れない女子生徒用の制服に違和感を感じつつももうサラシで胸をごまかす必要がないため気分は軽い。あとは話し言葉で「俺」とか口走らなければいいだけだ。

 春休みの間に伸びた髪の毛は切らずにそのままにすることで少しは女の子らしく見える長さにはなっていた。


 緊張しつつ校門をくぐると女子生徒が大勢いた。

 先生も女性の人が多く主に目つきが鋭い。前情報では馬鹿が集まる場所だと聞いていたので問題児が居ないか目を光らせているのだろう。

 受付を済ませ中学の頃より一回りほど小さい体育館に向かう。新入生用と保護者用と思われるパイプ椅子が並べられおり、もうほとんどの人が席についておとなしくしている。

 俺も前から数えて自分の出席番号と一致する一年三組の椅子に座った。

 両親は共働きで今日は来られない。来てほしいわけではないが。


 暇なので辺りを見回していると明らかにデビューですと言わんばかりに毛先を赤色に染めた人や、医療用ではないおしゃれ用の眼帯をつけている者。金髪縦ロールなんかもいる。大丈夫かこの学校……


「皆様。ご起立ください」


 落ち着いた声の先生がマイクの前に立ち入学式の進行を進めていく。理事長の話なども滞りなく終了しそれぞれの教室へ移動となった。




ここまでヒロインが居ない事実

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