三話
修行式が終わって数日がたった頃だった。
その日は寝起きから体調がすごく悪くてフラフラしながらトイレに向かった。
息苦しさを吐き出すように深い溜息を吐いて深呼吸をする。いつもの様に大きい方をしようとした時勢いよく便器の中に物が落ちる音がした。
「……? まだうんこ出てねぇぞ?」
紙を巻いて拭き取ってみるとドス黒い血の色に染まったペーパーがそこにあった。
「は? 血? なんで?」
しばらく混乱しているとトイレの戸が力いっぱい叩かれる。
「おいゴラァ! いつまでトイレ入っやがる聖也ァ! 漏れそうだから早くしろぉ……」
威勢のよかった姉の声は便意を抑えているからだろうか。尻すぼみに力を失っていく。
「姉ちゃん……ち、血が」
「は? 痔でも起こしたか? とにかくトイレは一つしかねぇんだからさっさと出ろ」
「う、うん」
なんだ痔か。なら少し痛いが吹いてしばらく我慢すれば治るだろう。
ペーパーを巻いてもう一度拭き取ってみるが……
「姉ちゃん! 何回吹いても血が止まらないんだけど!」
「いや、もうマジ無理……早く変わって」
そ、そうだ!
俺は今うんこしたいんじゃなくて止まらない血を解決出来ればいいんだ。幸い風呂場は目と鼻の先。血の方は風呂場で流せばいいんだ。
「はい、姉ちゃん!」
「でかした……って赤ァ!?」
姉は俺と入れ替わりでトイレに篭り、俺はズボンとパンツを脱いでシャワーで血を洗い流すことにした。
「この血どっから出てんだろうな」
確かに痛みは感じるがそれはお腹の奥の方から。
試しに手を伸ばしてみるとヌルッとした感触が指に伝わってくる。それはおしりからではなく最近オナニーに使っていた真ん中の穴だった。
「こ、ここから血が?」
ここがなんの器官か知らないが流石に血がドバドバ飛び出すのはヤバいのではなかろうか?
不安になりつつも血を綺麗に洗い流し、タオルで水気を拭いたあと母親に相談することにしたのだ。
「お母さん……真ん中の穴から血が出てきたんだけど」
「真ん中の穴? なんだそれ」
首を傾げながらも朝食の準備を中断し俺の傍まで寄ってきたお母さんはしゃがみ込んで俺の幹部を観察する。
「………………」
「なんか分かった?」
「………………」
「おーい」
「ちょっと待って」
そう言って立ち上がり目を擦って頬をつねり。またしゃがんで患部を見つめる。
「あー、スッキリした」
「彩也ちょっとこっち来て聖也のここ見てみ?」
「は? 何が悲しくて弟の股座を覗かにゃならんのだ……そう言えばお前便器の水真っ赤になるぐらい血が出てたな。大丈夫か?」
珍しく俺を心配した姉は母に促されるまま俺の股の間を覗き込んだ。
「………………は?」
「おかしよね」
「聖也ちょっと触っていい?」
「う、うん」
二人揃ってそんな反応をされると俺の不安が増していくのだが大丈夫なのだろうか。
「んっ」
「………………やべぇよお母さん。これ完全にまんこだよ」
「そうよね……」
「は? な、なんの話だよ」
「ぶっちゃけこっちが聞きてぇわ。お前この穴いつからついてる」
そう言って姉は俺のおしりと玉袋の間にある真ん中の穴をツンツンと指先で触れた。
「いつって最初からだよ。みんなあるもんだろ?」
「ああ、そうだな。みんなあるな」
「だろ? でも流石にあんなに血が出たら心配でさ。お母さんに見てもらってたんだよ」
俺の言葉を聞き終えると二人は立ち上がり顔を合わせて頷き合う。
「聖也病院行くわよ。彩也着替えて来なさい」
「了解であります」
「え、マジで? 俺そんなヤバいの?」
「「はっきり言って超ヤバい」」
俺は貧血と精神的な不安で顔を真っ青にしながら車に乗せられて近場の最も大きな病院。豊田厚生病院に連れていかれたのだった。




