第9話 お下がり
(●´ω`●)葵ちゃん回です。
「くんくんくんくんくんくん」
僕は今着ている服の匂いを嗅ぐ。
「緋雨さんが着てた服⋯」
僕なんかが着てもちっとも似合わないフリフリゴスロリ衣装だ。
短い腕を上げて袖のフリルに鼻先を埋める。
ああ、良い匂い。
ああ、可愛い。
(可愛かったなぁ)
映像で見せて貰えた緋雨さん。
ゴスゴスフリルなドレス姿を見て鼻血が出るかと思った。
パフェを食べさせて貰って美味しそうにもぐもぐしてた緋雨さん。
抱きかかえられてお散歩して楽しそうにする緋雨さん。
そのまま屋外でエッチな事されて恥ずかしがる緋雨さん。
(一緒に映る枢の奴が邪魔だけど⋯)
僕は脳裏に焼き付けた映像を思い返しながら鼻いっぱい、肺いっぱいに緋雨さんの匂いを嗅ぐ。
そんな幸福な時が唐突に終わりを告げる。
「むぐんんんっ!?」
急に顔を掴まれ上向かされ、唇を塞がれた。
「着せて上げたんだから飲んでよ」
塞ぐと云うか喉奥に突き込まれ⋯く⋯苦しい⋯。
(何でもう大っきいのよ?)
まさか緋雨さんの服に興奮してる僕を見て興奮したの?
(わざわざ着せてくれて親切だと思ったのに―――)
キショっ!馬鹿じゃないの?
(くそぉ、仕方無い)
僕は枢の言う通りに口でしてやる事にする。
(はぁ⋯まぁ今日は映像だけじゃなくて緋雨さんが着た服もくれたし⋯)
でも相変わらず苦手な味。
拙い舌使いを披露していると、枢の掌が僕の頭を撫でてくれる。
(緋雨さん⋯何であんなに美味しそうに、愛しそうにしゃぶれるんだろ?)
枢は変わってる。
僕が心底嫌そうに舐めたり、泣きながら我慢して飲んだり、飲み切れずに吐き出して咽る姿を見て逆に悦んでるみたい。
緋雨さんの方は逆に、進んでしゃぶる様になっている。
それはそれで良いらしいけど、抵抗されないから物足りないらしい。
贅沢な。
僕は枢の求めるままに応えてやる。
お腹が大きいから無理な体勢は断るけどね。
「猫が飼いたい」
「はぁ、はぁ、はぁ⋯はぁ?」
僕にアレとソレを飲ませるだけで満足する訳も無く、枢の奴は当然僕の中にもたくさん出した。
(もうお腹に赤ちゃん居るのに出す意味あるの?)
そして僕の母乳を飲みながら、もう片方の胸を弄りながらポツリと呟いた。
「猫が飼いたい」
二回言うな。
あと引っ張んなよ、伸びる。
「猫ぉ?」
一瞬考える。
猫。
犬と同じ、愛玩動物だ。
コイツは最強と名高い氷炎の緋雨さんですら倒して拉致したんだ。
猫なんてそこら辺に―――⋯
「まさか―――僕に猫耳付けて、お尻の穴に尻尾を刺してっ―――」
変態プレイはちょっと⋯いや、緋雨さんなら似合うかも?でもそれで相手は結局枢なのはやっぱり嫌―――⋯
「違う、そうじゃない」
「あっそ」
(違うんかい)
ちょっとホッとする。
少し残念な気もしてしまう。
(うぅ⋯駄目だなぁ)
この空間内に居る所為だろう。
この男の子種で孕んでる事も原因だろう。
(枢の喜ぶ事をしてあげたい)
若しくは閉鎖された環境で心が正常に働いてないのかも知れない。
頭に猫耳を付けてお尻に尻尾を刺された僕が、嫌がりながらも枢に抱かれる映像が簡単に想像出来る。
にゃぁにゃぁ泣く事しか許されなくて、人の言葉を使ったらお仕置きをされるのだ。
(そんなの嫌⋯なの⋯に⋯嫌じゃな⋯い⋯うへぇ、吐きそう⋯)
⋯何だっけ?
誘拐犯に被害者が依存しちゃうの、なんかあったよね。
僕や緋雨さんが正にそれ。
(生殺与奪の権利はコイツが全て握ってる。まぁ負けた僕達が弱かったのが悪いんだけどさ)
四肢は切断され、痛みの中で処女を奪われた。
その結果、僕のお腹には枢との子が宿ってる。
母乳を飲まれる事で母性みたいなのを枢に抱き始めてもいる。
(だってコイツ、こんなに美味しそうに僕のおっぱい飲むし⋯)
偶に飲みながら寝てる。
赤ちゃんか。
「はぁ⋯」
枢が溜め息を吐き出す。
「癒やされたい」
「僕で癒されないならおっぱい吸うな」
ムッとする。
そんな雑に吸うならおっぱいやらないぞ?
母乳だって無限じゃないだろう。
赤ちゃんの分が無くなる。
それに僕達を飼ってる癖にまた猫を飼いたいとか。
(この空間内なら何でも出来るじゃん)
「飼えば良いじゃん」
「解った」
「緋雨さんに逢わせて」
「んーーー、また今度ね」
「ケチ」
どさくさ紛れに頼んでみたが無下に断られた。
唐突に消える枢。
「おいいいい、このままかよぉーーー」
僕の叫びは何も無い空間に吸い込まれる。
中途半端に脱がされたゴスロリ服でバタバタ暴れてやる。
うぅ、虚しい。
「はぁ、仕方無い」
僕は猫耳尻尾を付けた緋雨さんを思い浮かべ妄想し⋯
「んっ⋯」
ぶるりと体を震わせる。
―――指が無い。
「⋯⋯くそぉ、こう云う事かよぉ~⋯」
自分で慰める事も出来ないなんて生殺しじゃん。
気持ち良くなるにはもう、枢を受け容れるしかないんだよね。
(●´ω`●)この娘も大概変な娘だね。




