第26話 解説
(●´ω`●)中間管理職楓ちゃん。
「解説役?私がか?」
「はい。実況には別の者を就けますので、軍団長には能力者同士の戦闘の解説をお願い致します」
「何故私が⋯」
不満が顔に出ていたのであろう。
目の前の部下は申し訳無さそうに⋯だが引き下がる事無く告げて来る。
「まぁ発案者は楓様ですし」
「むう」
私は唸るしかなかった。
「是非お願い致します」
目の前の男が汗を拭きながら進言して来る。
(相変わらずに優秀だな。その優秀さを私に向けて発揮して欲しくはなかったのだがな)
彼は貴族だが文官である。
柔和な笑顔に柔らかい物腰。
貴族でありながら一般人との交流がとても上手い。
戦闘向きの能力ではないが、騎士団の運営には欠かせない人材だ。
私は見た目が幼⋯少女なのでどうにも侮られる。
それを払拭する為に敢えて厳しい態度を取る様にしている。
結果、鬼軍団長とか不名誉な呼ばれ方をされているのも知っている。
「それに」
彼が目を細める。
「もしも能力者が暴走を始めたら、止められる者が軍団長以外に居りません」
「まぁそうかも知れんが」
確かに、実況ならば能力者の監視を間近で行える。
危なくなったら止められる。
実に合理的だ。
私が実況を引き受けなかった場合、違う仕事でトーナメント会場から離れる可能性が高い。
そうしてもしも能力者同士が本気で殺し合いを始めて、観客にも被害が出れば大惨事だ。
「トーナメント⋯今から中止に⋯」
「代替案は御座いますか?」
「むう⋯」
普通のお祭りの様な催しの案も有った。
食料や酒、菓子等の嗜好品を配るのだ。
だがこの場合、確実に起こる物品の横流しや、能力者同士の衝突は避けられない。
そこで思い付いたのが王都の御前試合を真似た能力者同士のトーナメントだ。
どうあっても起こるのを避けられない能力者同士の喧嘩ならば、催し物に組み込んでしまえば良い。
(名案だと思ったのだがな)
まさか私にお鉢が回って来るとは。
(当日は勿論騎士団メンバーを配置するつもりだった)
が、確かに未知の能力者を制圧出来るかは疑問だ。
先日のモンスター討伐での負傷者は休ませているし、怪我が無かったり軽傷だった者も疲労は溜まっているだろう。
言っても詮無き事だが、私程の能力者は今この場に居ない。
この地への遠征に当たり、実力の有る腹心達は留守を任せて置いて来たからだ。
(私を配置するのは駒で考えれば悪くない、か)
貴族は能力者ばかりで実質的に人間社会の支配階級である。
だが人口のほとんどは非戦闘員の一般人だ。
上に立つ者である以上、下々の者達の評価は大事だ。
いくらモンスター戦役で大勝利を収め様とも、企画したイベントで死傷者を出したりしたら極東方面軍の信頼は地に堕ちるだろう。
(王女殿下にも迷惑がかかるしな)
「解った。引き受けよう」
私は嘆息して応える。
「有り難う御座います」
部下は満面の笑みで踵を返す。
「さて、と」
私はデスクに向かい直す。
報告書の提出だ。
王都への報告、王女殿下への報告、騎士団本部への報告、報告報告報告―――⋯⋯⋯
「少し休むか」
私は外套を羽織り騎士団の詰め所を出る。
命の遣り取りが無い筈なのに、デスクワークとは何故こうも疲れるのか。
(いや解るが)
私の立場の者がミスをすれば、その書類一枚で多くの被害が出てしまう。
私が未だ一騎士でしかなく、モンスターをただ斬っていた頃が懐かしい。
「ふぅ」
カフェのテラス席に座りケーキと珈琲を楽しむ。
「悪くないな」
確か王都に本店が有る名店だ。
(社長?オーナーか?確か能力者だったな⋯)
ケーキ作りか珈琲か紅茶か、若しくは味覚に特化した能力者だったか。
いや経営手腕の有る貴族がそう云った非戦闘系の能力者の貴族子女を集めたのだったか。
(まぁ何でも良いか)
ほろ苦い琥珀色の液体と甘さ控え目のケーキ。
落ち着く。
「ん?」
「あ」
そんな時だ。
カフェにとある人物がやって来た。
「貴様は」
「どうも」
それは先の戦役で遭遇した空間能力者だった。
(●´ω`●)楓ちゃんは多分三十路は越えてそう。




