第20話 戦況
(●´ω`●)楓ちゃんは軍帽被ってサーベル佩いた軍人ぽい感じですね。てか軍人か。
「ふむ」
私が目を細める。
戦況は悪くない。
遠距離攻撃持ちが遠間から炎や雷、氷を飛ばす。
地割れを起こして敵を飲み込む者も居る。
「中々に粒揃いではないか」
純粋な戦闘力ならば並の騎士を上回る者も少数だが居る。
(まぁ騎士や貴族に出来る訳ではないがな)
狭い土地に放り込み、蠱毒の如く殺し合わせた能力者共。
殺傷目的で能力を磨いて来た連中は戦闘面では申し分無いが常識やモラルには欠けている。
長年の過酷な現実で精神を病む者も居る。
貴族の子息が一目惚れして囲おうとした能力者がその貴族を殺してしまった事件も有る。
(私もそうだが、成長が止まり能力が肉体を最適化した結果、見た目が良くなる者は多いからな)
筋肉ではなく能力で怪力を誇る者は細腕で鉄を引き裂ける。
強靭な肉体は、例えば肌なら染みや汚れを残さずキメ細かく美しく保つ。
(能力者を飼いたがる貴族が一定数居て困る。今の状況で戦力を遊ばせておく事由等無い。それに⋯)
能力者は基本的に自分より強い者にしか従わないし、下剋上を常に狙っている。
隙を見せれば喰われる。
見た目が可憐な少女でも、中身はモンスターを殺せる化け物なのである。
確言う私も引っ切り無しに来る縁談は蹴り続けている。
貴族令嬢として生まれたからには子を為すのも務めではあるのだが⋯
(私は王女の盾であり剣、子を為すつもりは無い)
もしもだが、後遺症を遺す程のダメージを負えば騎士団を退役し、血を遺す役目を果たすのも良いだろう。
だが今は私は戦力として計算した方が良い。
その方が合理的だ。
「おい」
私が話し掛ける。
男が居た。
いつの間にか男が居た。
私の間合いの内側だ。
(いつの間に⋯何者か)
男は私と同じくこの高台から戦況を俯瞰して見て居る様である。
「貴様も戦え」
(空間転移。空間能力者か)
私は刀の鯉口を切り掛ける。
間合いに入り込まれた。
(この男は危険だ)
殺気が無かったから反応が遅れた。
もしも暗殺しようとしてくれば自動で迎撃していたろう。
私の居合い剣は殺意や敵意を察知して斬撃を放つ。
「うーん⋯」
男は私の問い掛けには答えずにボウッと地平線を眺めている。
「どうした?しっかり働け」
「ああ」
そこで私に気付いた様にチラリと此方に視線を向けると姿を消した。
能力使用に力の溜めも、淀みも無い。
相当な使い手だ。
「ふん」
どれだけ強力だろうと、騎士団以外の能力者等、所詮使い捨てだ。
精々我等の露払いと成れ。
『軍団長、戦闘開始しました』
「よし」
部下からの連絡が入る。
今の連絡は各地に散らした部下達が個別に戦闘を始めた事を意味する。
本格的な開戦だ。
向こうは意思疎通も不可能なモンスターなので、宣戦布告も何も無いがな。
「一匹も逃すな。殲滅しろ」
私は軍団長としての務めを果たすべく指示を飛ばす。
どうしてもと云う危うい場面が来なければ私は動かない。
能力者達は勿論、騎士の何人かが戦死しても許容範囲なら問題無い。
「む?」
遠くでモンスターが吹き飛ぶのが見える。
「さっきの男か?」
私の直感が囁く。
「空間能力者だったと思ったが⋯」
地面にクレーターが出来ている。
相当な数を滅殺した筈だ。
「まぁ良い」
使える分には問題無い。
複数能力を操れる者等、例えば強い血を取り込み続けて来た貴族⋯騎士にだって何人も居る。
「氷炎⋯だったか。惜しかったな」
会った事は無いが氷と炎を操れる上に、割と理性的な能力者が居たらしい。
今作戦が始まる前に何処ぞの能力者に負けて殺されたらしい。
「理性的でモラルの有る者は、やはり何処かイカれた奴には一歩及ばないものだな⋯」
私は戦況を見る。
私が動くべき盤面には未だ成っていない。
モンスターだけでなく能力者も死んでいるだろう。
騎士にも被害は出る筈だ。
「問題無し」
私は先程出来たクレーターの方を眺め呟いた。
(●´ω`●)能力者は頭悪いんで逃げる奴居ませんけど、敵前逃亡したら楓ちゃんが間合い無視で一刀両断してまちた。




