18.話したいことがあります
「ラディウス様、帰国の準備はできています」
「リィナから言われたんだろ?」
「ええ、まあ。いつ立ちますか?」
「今すぐだ」
会場を出るとちょうど執事様が来て皇太子様の報告をした。
そして二人は軽く話しながら早足で進みながら王城から出る。
その最中わたしはずっと皇太子様に抱き上げられたままだった。でもわたしのスピードじゃついていけないから仕方ない。
恥ずかしいながらも我慢していた。それに落ちないように皇太子様に抱きつかないといけないのも恥ずかしい。
「リエリア王女はどうしますか?」
「連れていくに決まっているだろう。何を馬鹿なことを言っているんだ」
「私もそれには賛成ですが、リエリア王女の意思も確認しておかないといけないので」
「わたしはもちろんついていきます。行っていいならですが……」
「いいに決まってるだろ。リエリアはオレの愛する女性だからな。それにリエリアにとってオレは愛する皇太子なんだろ?」
「う、うぅ……」
執事様がわたしに聞いた質問を真っ先に答えたのは皇太子様だった。皇太子様はわたしを帝国に連れていく気満々みたい。
その質問にわたしも答えた。もちろんわたしも皇太子様と一緒に帝国に行きたいと思っている。
それを伝えると皇太子様はわたしが先ほど言った言葉を使いながら、一緒に来ていいと言ってくれた。
ただわたしが言ったことが恥ずかしすぎて死んじゃいそうだ。
「可愛いな、リエリアは」
「!? こ、皇太子様、何を言って……!」
皇太子様がわたしが恥ずかしがっている姿を見て、おかしなことを口にした。
それは嘘だと思わなくちゃいけないけど、どうしても思うことができずに焦るばかりだ。
「事実を言っただけだ。ただその可愛さはオレの前だけにしてくれ」
「うっ、は……い……」
皇太子様が真剣に事実だと言ってくれたことで、信じていいんだと思った。それと同時にとても嬉しかった。もちろん恥ずかしくもあったけど。
「惚気るのはやめてください」
「やめたくはないが、仕方ない。それに一刻も早くここを出ないと、王宮に幽閉されかねないからな」
「幽閉、ですか? そこまでするとは思えないんですけど……」
皇太子様から幽閉されるという言葉を聞いた時、さすがにそこまではしないと思った。
わたしを幽閉することはあるかもしれないけど、皇太子様を幽閉することはないんじゃないか。
でもわたしを取り返すという名目で幽閉することはあるかも、なんて思ったけどそれもさすがにないんじゃないかと考えた。
「いや、あの国王のことだ。躊躇せずにやるだろう。もしかしたらオレ達を殺す可能性もある」
「ころっ……。そんなことが、本当に?」
「あるだろうな。リエリアも見ていただろ? 国王がオレやリエリアを殺すように騎士達に命じたことを」
「そうでしたが、あれは冗談なんじゃーー」
「それはない。間違いなく殺す気満々だ。なぜならあの眼が本気だったからな」
皇太子様は国王陛下がわたし達を殺すつもりがあると断言する。
確信した理由が眼というのは、武術を習っている人だけが分かることなのかもしれない。
「それなら尚のこと急がなければいけませんね」
「ああ、そうだな。リエリア、スピードを上げるから、もっとしっかり抱きついてくれ」
「はっ、はい」
わたしがしっかり抱きついたのを確認すると、皇太子様と執事様は先ほどの早足から一転ものすごく早く走る。
それから一分もかからずに王宮を出て王城内にある帝国の離宮へと着いた。
「リィナ、準備はできているようだな」
「大丈夫よ。今すぐ出発できるわ」
「よし、ならば直ちに王宮から出て帝国へ向かうぞ! 皆、いいな!」
「「「了解しました!」」」
離宮の前に豪華な装飾の皇族用馬車と何台かの貴族用馬車、それに十数人の騎士達と同じ数の馬もいる。
皇太子様はリィナ様に確認をして、騎士達に声をかけた。その声に反応して大きな声を揃えて返事をする騎士達。
「リエリアお嬢様っ!」
「シーリル……? なんでここに?」
「なぜって、わたしも帝国に行くからです。それにディアの妻ですし、この前一緒にいるところを見られたので、念の為ということです」
「そっか……そうなんだ……。嬉しい……」
「私も一緒です」
シーリルがわたしのもとへ駆け寄ってきた。
なぜシーリルがいるのか聞くと理由を説明してくれたが、あまり頭に入ってこない。かろうじて分かったのは一緒に帝国へ行けること。
だってこの場にいてくれたことがとても嬉しくて、それどころじゃないから。一緒に行けることを知ってますます嬉しくなる。
「私は違う馬車に乗るので、あとは二人でゆっくり話してください」
「分かった。ありがとね」
「どういたしまして。あとでもう一つ伝えたいことがあるので、期待しててください」
「?」
シーリルはわたしが皇太子様としっかり話すように促し、言いたいことを言ってすぐに去ってしまった。
「じゃあ、あたし達も別の馬車に乗るから、ごゆっくり。さっ、行くよ、ギアル」
「あっ、待ってよ。では、失礼します、ラディウス様」
リィナ様もシーリルと似たようなことを言ってギアル様を連れて他の馬車がある方に行ってしまう。
「では、わたしは別の馬車に乗るので、皇太子様はお一人でゆっくりしててください」
わたしがそう言い、皇太子様の腕の中から降りようとすると、皇太子様は降ろさないようにわたしをぎゅっと抱いて動き始めた。
「へ? 皇太子様、降ろしてほしいんですけど」
「何を言っている。リエリアはオレと一緒に乗るんだ。それに、もう空いている馬車はないぞ」
「……分かりました。だから降ろしてください」
「無理だ」
わたしが降ろしてほしいと頼んでも降ろしてくれず、皇太子様はわたしを抱いたまま馬車に乗った。
中に入るとようやく降ろしてくれて座らせてくれた。
「出発しろ」
皇太子様の一言で騎士達と馬車が一斉に動きだした。
馬車とは思えないくらいの内装に、馬車では出すことのできないはずの速度で進んでいる上、全く揺れない。
「リエリア、話したいことがある」
皇太子様が真剣な表情でわたしを見て、話し始めた。
「わたしも話したいことがあります」
わたしも皇太子様にしっかりと伝えなければならないことがあるので、その旨を伝えた。




