17.言葉に想いを込めて
やはり毒を盛られたのか。若干手が痺れてきた。
精神的に疲れている状況で身体を動かすのも難しいとは、オレはダメだな。
「ラディウス皇太子、貴殿はその程度の実力しかないんですか!」
「ベレード国王は調子が良さそうですね」
ベレード国王が一方的に剣を振り攻める。オレは疲れや痺れのせいで防戦を強いられている。
今考えればこの決闘は計画されていたのかもしれない。
そうじゃなければ毒を盛られることなどないからな。
「そろそろ限界なのでは? 今負けを認めれば、全てを奪うことはないと約束してもいいんですよ」
「限界? 何を仰っているのか分からないな」
「女の一人も口説き落とせず連れてこれないダメな皇太子は限界という言葉も知らないみたいですね」
精神的に疲れている状況で、さっきもなかなかのことを言われたが戦いの最中も言ってくるとは、性格の悪い国王だ。
オレもベレード国王の言う通り限界が近いのを感じている。
だから一か八かの選択をする。
ベレード国王が近づいたところで今の全力を振り絞り剣を振る。
すると綺麗にベレード国王の剣が飛んでいった。その反動でベレード国王は後ろに下がりそのまま倒れ込む。
「これで、終わりだ」
「ま、待ってくれ! これは何かの間違いだ! 負けるはずないんだ!」
「負けを認めろ、ベレード国王。全てを奪うことはしない。ただ、リエリアに謝れ。それだけで許してやる」
「なッ。あの女に謝れだと? そんなことするわけないだろ!」
オレはベレード国王に全てを奪わない代わりに、リエリアに謝罪することを求めた。
けれどその要求を断るベレード国王。
彼のプライドがリエリアに謝罪することを許さないんだろう。
「騎士達よ、ラディウス皇太子の首を取れ! 取れた者には全ての望みを叶えてやる!」
「何を言ってる。そんなことをする奴いるわけ……」
これは『神の決闘』だ。
それに割り込むのは国際問題になる。それどころかこの命令をしたベレード国王は邪神と同等の扱いをされてもおかしくない。
「どういう、ことだ……?」
ベレード国王の命令に周りにいた王国の騎士達が剣を抜きオレを囲む。
数は十数人。
もうここまでなのかもしれない。
オレが考えなしだった。帝国の騎士達は外を守らせているため、中の様子は見えない。
ギアルに頼んだが、もう手遅れだったな。
毒が全身に回り始め、立っているのがやっとの状態。
今からこの数の騎士と戦うなんて無理だ。
「やってしまーー」
ベレード国王が騎士達にオレを殺す合図をした瞬間、ドンっという大きな音と共にドアが開かれた。
ドアから入ってきたのは、リエリアだ。
「リエリア……」
「はっ、ははっ、そういうことか。騎士達、直ちに皇太子を殺せッ!!」
ベレード国王はオレとリエリアの関係を理解したのか、リエリアを悲しませるためにオレを殺すことを選択した。
騎士達は一斉にオレに襲いかかる。
ああ、最後に、リエリアの顔を見れてよかったな……。
オレは死を覚悟した。
あと数歩で剣がオレを貫く。
その時ーー。
「皇太子様っ!」
今まで聞いたことのないほどの大きな声でリエリアはオレの名前を呼ぶ。
すると騎士達の剣が止まった。
これは騎士達が剣を止めたというよりは、何かに阻まれて剣が動かなくなってしまったようだ。
「なんだ! 剣が通らない」
「どうしたお前ら! さっさと皇太子を殺すんだッ!」
「国王陛下、皇太子の周りに何かが出現し、剣を通すことができません!」
騎士達はどうにかしてオレを切ろうとするが、謎の障壁で刃が通らない。
振りかざしても刺しても、どうやってもオレを切ることができないようだ。
「これは、リエリアの力、か」
なんだ? 身体が暖かくなって……。
痺れが消えていく、それに疲れも無くなっていく。
これは戻っているという感覚のほうが近い。
リエリアはイエア人なのだから、使えるのは人を守る力。こんな癒すに近い、言わば戻る力を使えるんだ?
それはまるでーー。
まあ、今はそんなことどうだっていい。
この状況を切り抜けてから、あとのことを考えよう。
「行くぞ!」
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ドアを開ける。
そこには十数人の騎士達に囲まれ、立っているのも大変そうな皇太子様がいた。
皇太子様が、死んじゃう。
わたしが守るんだ!
「皇太子様っ!」
わたしは今までで出したことがないほどの大きな声で皇太子様の名前を呼んだ。
皇太子様の名前を呼んで、その言葉に想いを込めて。
すると騎士達の剣が止まる。その状態で国王陛下と騎士達が会話をしていた。
少し経った時、皇太子様は体力が戻ったのか、剣を構えた。
そして一瞬のうちに皇太子様が周りの騎士達を倒していった。騎士達に手も足も出させずに。
その光景を見ていると、倒れていた国王陛下がわたしに向かって指を刺してきた。
まだ倒れていない騎士数名がわたしに向かって思いっきり走ってくる。
わたしは怖くて動くことができずに皇太子様に助けを求めるため手を伸ばす。
わたしの助けての思いが通じたのか皇太子様は先に来ていた騎士達よりも早く走って騎士達を倒した。
「大丈夫か! リエリア」
「大丈夫です。皇太子様が守ってくれましたから」
皇太子様はわたしのことを心配してくれる。
わたしはその様子に思わず笑ってしまった。
「どうしたんだ?」
「いえ、嬉しくて。皇太子様に会えたらことが」
「ああ、オレもだ。リエリアに会えたこと、心の底から嬉しい。オレを守ってくれてありがとう、愛しのリエリア」
「わたしのことも守ってくれてありがとうございます。わたしの愛するラディウス」
わたしは思いきって、皇太子様の名前を呼ぶ。それも愛するというわたしの想いの一部を言葉として伝えながら。
皇太子様はとても嬉しそうに笑ってくれる。
良かった。
皇太子様に会えて、皇太子様に少しだけだけど想いを伝えられて。
「ベレード国王。『神の決闘』での行動、そしてオレのリエリアを侮辱したこと、よく覚えておけ」
「間違ったことはしていない! 国王として正しい行動をーー」
「黙れ! オレは皇太子として宣言する」
皇太子様は国王陛下の言葉を遮る。
そして一呼吸おき、宣言をした。
「サン帝国はネプ王国に宣戦布告する!」
その宣言でざわつく中、わたしは皇太子様に抱き上げられ、パーティー会場から出ていった。




