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15.好きを伝えるために

「リエリア、オレはリエリアのことを愛している。この想いだけは知っておいてくれ。じゃあ、な」


 わたしは皇太子様の想いを聞き、皇太子様を見送る。

 皇太子様が見えなくなったので離宮の中に入りすぐに自分の部屋へと向かった。そしてベッドに飛び込む。


「あ、あ、あぁ……さい、ていだ」


 わたしは自分に対しての怒りでどうにかなりそうだ。

 自分の想いを自分勝手に放り出し、皇太子様の想いを身勝手な理由で踏み躙り、幸せになれるかもしれなかった唯一で最初で最後のチャンスを自分で投げ捨てた。


 わたしは自分に対しての怒りと同時に、皇太子様に二度と会えない自分勝手な悲しみで涙を流す。

 眼から今までにないほどの多くの大粒の涙を流し、涙は頬を伝い、その涙はぽつりぽつりと枕に付き、枕へと染み込んでいく。


「あ、あぁ、うぅ」


 ただ呻くだけ。

 この部屋にはわたしの呻く声以外聞こえない。

 とても静かだ。


 さっきまでの幸せな静かさとは違う。

 辛く苦しく痛い。


「ごめん、なさい……皇太子様……」


 一生会えない。一生謝れない。一生応えられない。一生伝えられない、この想い。


 皇太子様にもう一度会いたい。

 皇太子様に謝りたい。

 皇太子様の想いに応えたい。

 皇太子様が伝えてくれたように、わたしも勇気を出して想いを伝えたい。


「わたしも、好きでした」


 もうこれを言っても意味がない。だって伝えたい相手に会えないから。

 それにわたしは好きでしたと過去形で言うしかない。なぜならもう好きを伝えられないし、わたしが皇太子様を好きという資格もない。


 わたしは自分の最低さと愚かさと間違いをその他の全てのわたしの負の部分を……呪いたくなってしまった。


 わたしはずっとずっと本当にずっと涙を流し続け、泣き疲れて眠ってしまった。


###


「皇太子様……」


 なんでわたしの前に皇太子様がいるんだろう。

 わたしと皇太子様はもう二度と会えないのに、なんで……?


 でもそんなことはどうでもいいと思ってしまう。

 皇太子様に想いを伝えられる。そのチャンスがもう一度来たんだから。


「リエリア、どうしたんだ?」

「あっ、えっと……」


 わたしは皇太子様に想いを伝えるため、勇気を出す。

 でも“好き”というたった二文字の言葉が言えない。


 怖い。わたしは怖がっている。

 それは以前の信頼についての怖さとは別物。

 多分この怖さは皇太子様と別れを告げたのに、想いを伝えるというおかしくて身勝手な行いをするわたしを受け入れてくれるかどうか。

 自分の行いが招いた怖さ。


「どうした? 何か言いたいんじゃないのか?」


 皇太子様はわたしが何を言いたいか、ある程度の予想はついているみたい。

 だけどそれをわたしの口で、わたしの言葉で伝えてほしいんだと思う。


「わたし……あの……。わたしっ」


 皇太子様は優しくわたしを見つめてくる。

 わたしはそれを見て落ち着きことができた。

 そして深呼吸をして、好きということを伝える。


「皇太子様。わたし、皇太子様のことがーー」

『俺様の相棒になる者。現実を見ろ。今伝えるべきでは……いいや、ここで伝えても無駄だ。お主の想いは届かないからな』

「誰ですか」


 わたしが皇太子様に想いを伝えようとした時、どこかで聞いたことのある声がした。

 その声の主が誰か分からないけど、それ以上にわたしは現実を思い出させられた。


 皇太子様にはもう会えない。

 これは現実じゃない。


 その揺るぎようのない事実。


「わたしは、何を……」


 現実を思い出したわたし。そんなわたしの目の前から皇太子様は消えていく。

 でも今回は涙は出なかった。

 これが夢であることと、皇太子様ではないこと、その二つが分かっているから。


『想いを伝えたいのならば会いにいけばいい。不安ならば力を貸してやる。今貸せるのは一度だけだ。その力の使い道はお主の自由』

「会いにいく……。そんなことできるわけないじゃないですか! わたしは皇太子様ともう二度と会えない。会ってはいけないから!」

『それは言い訳だろう? 想いを伝えたいのならば、そんなしょうもない約束など破ってしまえ』


 皇太子様に会えない。それをこの人は言い訳だと言い切る。

 それは図星だ。


 結局は怖くてそれを理由にして、想いを伝えなくていいように、逃げれるように、忘れられるように、そうしているだけ。


 この夢で皇太子様に想いを伝えようとしたのは、現実逃避。それ以外に言いようがない。

 ここで伝えれば多少はわたしの心が楽になる。自分が楽になるための逃げ道を進んでいるだけ。


 これじゃあ、今までと変わらない。

 愛する両親を自ら見捨て、現実を見たくなくて離宮に逃げ、そしていまだに逃げ続けている。


 わたしは皇太子様に対して、好きな相手に対して、そんな今までと変わらない態度を取っていたんだ。

 そんなこともうしたくない。


 わたしはもう逃げない。

 皇太子様に向き合って、想いを伝えて、そのあとはそれから考える。

 まずは想いを伝えよう。


『お主に必要な勇気はもう十分だな。もう一度言う。貸せる力は一度しか使えないが、使い方は自由だ』

「力? それはどんな力なんですか?」

『お主の想いで力は変わる。ただ人を守る力というのは変わらない。お主はその力の効力は人一倍強いということは伝えておこう』


 これは昔聞いたイエア人が使える力だ。

 詳しくは知らないけど、その理由が想いで力が変わるからかもしれない。


「じゃあ、使い方はどうすれば?」

『お主の想いに応えるように使われる』

「そうなんですね……」

『ああ。だからまずは想いを伝えろよな』

「……はいっ」


 わたしは声の主相手に元気よく返事をすると、目が覚めた。


 会いにいこう。

 皇太子様に好きを伝えるために。


###


「今は、夜……」


 もうパーティーが始まっている頃。

 わたしは何をすればいいか分からないから、もうそのまま行こうと思った。


 わたしは外に出ると、そこにはリィナ様がいた。


「昨日ぶりね、お嬢さん。また変身、させてあげる」

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