第二十五話「観光都市レザリア」♯
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カイサル様から帝都に行くメンバーや、今後の概要の説明を受けてから数日後、屋敷の前に停められた二頭立ての豪華な馬車に、旅に必要な荷物が次々と積み込まれて行く。
豪華な馬車にはグローリア家の紋章が刻まれており、それとは別にもう一台馬車が用意されていた。
そちらには食料や生活必需品等が積み込まれている。
「いよいよだな… ガトフ、屋敷の事は頼んだぞ」
「お任せくだされカイサル様。 留守はしっかりワシが預かりますのでご安心くだされ」
カイサル様の言葉にお爺様が一礼してそう答える。
そんなやり取りの後、今回グローリア家の馬車の護衛として同行する事になった、ランエル副隊長と部下五名が、カイサル様の元へと挨拶へやってきた。
「カイサル様、お待たせしました。 これからカイサル様の護衛は安心して我々にお任せください。
…と、言っても、カイサル様もロゼくんも護衛が必要ないくらい強いですが」
ランエルさんはそう言って苦笑う。
実はこの町の衛兵で、カイサル様の信頼を得た一部の兵に関しては、僕とアイエル様の秘密を教えている。
これは前回、アイエル様が誘拐された事が関係していて、少しでも信頼できる仲間を増やしたかったとカイサル様は仰っていた。
実際に、秘密を厳守する事を前提に、カイサル様の特別訓練に参加した衛兵達は、僕との模擬戦を何度か経験してその実力を実感している。
流石に年端も行かない僕が実力を示した事で、衛兵達は自分も負けてられないと必死にカイサル様からの訓練を受け、今ではそれなりの実力を身につけていた。 そんな事もあり、彼らは僕の実力を認めてくれている。
「ランエルさん、ご無沙汰してます」
僕はそんなランエルさんに挨拶をする。
「いよいよロゼくんも帝都デビューか… 帝都の人間が君の実力に度肝を抜かれる姿が想像できるよ」
言ってランエルさんは笑う。
「いえ、僕なんてまだまだです。 それよりも護衛ありがとうございます。
帝都までの道のりはよろしくお願いします」
僕はそう言ってランエルさん達に頭を下げた。
「それじゃ、そろそろ出発するか」
カイサル様の合図で、皆馬車に乗り込み、衛兵の皆さんはそろぞれに騎乗する。
グローリア家の紋章が刻まれた馬車にカイサル様、アリシア様、アイエル様、メラお姉ちゃんが乗り込み、僕が御者を勤める。
荷馬車の方は、父様が御者を勤め、お爺様、エミルお姉ちゃん、門番のレダとゼレと料理長のサモン小父さんと、ネリネを抱きかかえた母様が見送ってくれた。
グローリア家を出発し、そのまま門を南に出て一路帝都へと向けて馬車を走らせる。
今回のルートはアリシア様の故郷、シスタール侯爵領を経由して帝都に向かう事になっている。
そのため、一旦グローリアの町から南下し、ローゼの町を目指す。
ローゼの町はローゼ士爵が収める小さな港町だ。 他国との公益の玄関口としても知られている。
そこで馬車毎船に乗船するのが一番の最短ルートなのだが、貴族が移動する際にはその途中の町でお金を使うのが常識とされている。
その為、今回はそのまま西に進路を変え、途中船で川を渡り、ゲーテの町へと進む。
ここからは陸路でレザリア、ユクレスを経由してアリシア様の故郷のシスタール領へと続く。
今、僕らはゲーテの町を抜けてレザリアに訪れていた。
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レザリアは、港の中継地として栄えた都市で、新鮮な海産物が豊富で、なんと温泉も沸いていると言う自然に恵まれた観光都市だ。
その為、多くの貴族が観光に訪れ、露店や宿屋が充実していて、都市は賑わいを見せていた。
「すごい都市ですね… グローリアの町の三倍は広そうです」
御者台で僕がそうつぶやくと、カイサル様は馬車の中から笑顔でそれに答える。
「レザリアは観光都市だからな、私も何度か訪れているが何度来ても飽きない。
後でアイエルを連れて観光でもしてくるといい」
「カイサル様は行かれないのですか?」
「私は宿の温泉にでも浸かって、今日はゆっくりするよ」
「では、さっそく宿を手配しないといけないですね」
「それなら問題ない。 バルトについていけばもう手配は済ませてある」
なんと段取りがいい事だろう… それほどカイサル様がこのレザリアが気に入っている証拠なのかもしれないが…
僕はそう思って苦笑う。
「畏まりました。 父様の後ろを走りますね」
そう言う会話の後、父様の先導でお目当ての宿へと到着した。
宿は、四階建ての大きな建物で、豪華な装飾が施された一流のホテルの様な造りだった。 宿の入り口はスロープになっていて、馬車が荷卸できるスペースも設けられている。 僕と父様はスロープで馬車を停め、必要な荷物を降ろす。 カイサル様達は宿の中へと先に入って宿泊の手続きを進めた。
そしてそれぞれ部屋を割り振られ、カイサル様夫妻とアイエル様で一室、僕と父様で一室、メラお姉ちゃんは個室となり、護衛の衛兵にもそれぞれ個室が与えられた。
宿で落ち着いてから、僕はアイエル様を連れ立って、レザリアの都市を観光する事にした。
「アイエル様、逸れてはいけないので、手を離さないでくださいね」
「うん…」
宿を出てから、僕とアイエル様は商店が立ち並ぶエリアへと足を運んでいた。 今回は馬車ではなく徒歩での移動だ。 流石にふたりで馬車を出すわけにはいかない。
メラお姉ちゃんは父様に捕まって、父様と旅の買出しに出ている。 「ロゼくんと二人っきりでデートなんてずるい!」とか言っていたが、父様に頭を叩かれていた。
僕とアイエル様は商店を視て回る。 洋服を売っているお店や、貴金属を取り扱うお店、雑貨などお取り扱うお店と、それぞれに特色のある店舗が建ち並ぶ。
アイエル様は、キョロキョロと色んな物に目移りしていたが、急にその動きを止め、あるお店の前で立ち止まった。
アイエル様が見つめていたのは花の柄をしたブローチ。
「何かお気に召した物がございましたか?」
僕がそう問いかけると、アイエル様はコクリと頷く。
「このお花のブローチ、かわいいなって思って…」
僕はそれを手に取ると、お店の人に声をかける。
「あの、すみません。 これをひとつ下さい」
「あいよ、銀貨一枚と小銀貨二枚だよ」
僕は言われた金額をお店の人に払い、ブローチをアイエル様につけてあげる。
「よくお似合いですよ」
僕はそう言ってアイエル様に微笑みかける。
「ありがと、ロゼ」
アイエル様も笑顔でお礼を言った。
それから僕達は露店が並ぶエリアへと足を運んだ。 少し小腹が空いてきたので、手ごろな露天を探す。 せっかくなので名物でも食べよう。 ちょうど店先にデカデカと『名物スクウィッドオグル焼き』と看板を掲げている露店を見つけたので、どんな物かは分からないが、とりあえず食べてみよう。 そう思い、アイエル様を引き連れて店のおじさんに声をかけた。
「あのすみません。 スクウィッドオグル焼きを二つください」
「あいよっ、なんだい坊主、そんな小さいなりでデートか? かわいらしいじゃねーか、よし、ここは一本はおまけして銅貨一枚のところ小銅貨五枚しておいてやるよ」
お店のおじさんは笑って、気前よくサービスしてくれる。
「ありがとう御座います」
「それよりも坊主、この町には観光で来たのか?」
「えっと、帝都に向かう途中で立ち寄っただけです。 でも観光都市として有名みたいなので、二人で散策してたんです」
「なるほどな… もし坊主達がこの先船で帝都に向かうなら、気をつけた方がいいと親御さんに伝えてくれ。 今海は英伐級の魔物が出没しているからな、命が惜しいなら陸路を行く方が良い」
「英伐級の魔物ですか?」
「ああ、なんでも巨大なイカの魔物らしくてな…
スクウィッドオグルの突然変異じゃないかと噂されてるのさ
だからこの町の名物に俺がした訳さ」
そう言ってお店のおじさんは豪快に笑って説明してくれた。
てか自称名物かよ… まぁいいけど…
僕はおじさんからスクウィッドオグル焼きを受け取ると、一本をアイエル様に渡す。 スクウィッドオグル焼きはイカの串焼きで、何のタレか分からないが香ばしく味付けがされていた。
僕とアイエル様は、熱いうちに噛り付く。
スクウィッドオグルは思いのほかジューシーで、噛むと肉汁が染み出て旨みが口の中に広がった。 コリコリしたイカの食感に、旨みがプラスされた見たいに美味しかった。
アイエル様も幸せそうに目を細めて、スクウィッドオグルの肉をその小さな口でちょとずつ味わっている。
「おじさん。 すごく美味しいです」
僕がそう言うと、おじさんは「だろっ」と嬉しそうに笑う。
「うん。 ロゼの言う通りすごく美味しい。 また食べに来たい」
「いつでも買いにおいで、いつもココで露店だしてるから」
アイエル様は嬉しそうに「うん!」と頷く。
だいぶ気に入った見たいだ… 今度スクウィッドオグルを討伐したら僕も作ってみようかな… タレまでは再現できないだろうけど、塩だけでも美味しそうだ。
「それじゃ、またねおじさん!」
アイエル様は元気よく手を振って別れを告げる。 僕とアイエル様はその露店を後にした。




