第二十四話「ご主人様とロゼ様」
更新遅くなりすみません。
今PCで作業していた環境から、携帯で書き進めて仕上げをPCでと言う環境でしないと書く時間を取れず、執筆ペースが落ちてます。
今回はちょっとした小話を挟みます。
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吾輩は馬である。 名前はまだ無い。
吾輩の御主人様は、人間で執事と言う職業らしい。
なんでも、お仕えするグローリア家は、人間の中でもそれなりの地位がある人物らしい。 御主人様の御主人様だ。
吾輩は仕事に誇りを持っている。
御主人様を乗せ、街を駆け、時には馬車を引く。
それが吾輩の仕事だ。
それさえこなしていれば、美味しい草を食わせてもらい、御主人様にブラッシングや蹄も整えてくれる。 至れり尽くせりだ。
そんなある日、御主人様が一人の子供を連れてきた。
その子供は吾輩を見るなり目を輝かせて、何やら御主人様と話している。
そして話し終ると御主人様は吾輩の顔を撫で、子供に真似をさせる。
正直言って御主人様意外に触られたくない。
吾輩は止めろと意思表示の為に「ヒヒンッ」と声を荒げて威嚇した。 しかし、その子供は怯む事なく吾輩の目を見据え、プレッシャーを与えてくる。
何なのだこの子供は!
御主人様に負けず劣らず、強者の匂いがする。
吾輩の生存本能が警告を発している。
その子供の手が吾輩に触れた時、吾輩の身体が微動だにしなくなった。
これはどう言う事だ… 誇り高き吾輩が、抵抗する事もできない。
これは恐怖? 違う。 絶対者を前にした時の様に、自分の意思で自分を制御できない。 この子供に全てを握られている感覚。 とんでもない化け物だ。
そう悟った時、子供の意思が吾輩に伝わってきた。
(お馬さん。 大人しくしてください)
吾輩は目を見開いて驚愕した。
この子供の言葉が解る事に、そしてその現象を引き起こしているのがこの子供だと言う事に…
(驚いている見たいですね…)
心の中に直接響くその声に吾輩は戸惑う。
(暴れられたら危ないと思ったので、マナを使ってちょっと身体の自由を奪いました。 あの… 暴れないと約束してくれますか?
それでも暴れると言うなら実力行使するしかないんですが…)
そう言いながら突然笑顔で殺気を向けてくる。 吾輩の身体は恐怖で震えるが、ピクリとも身体は動かない。
この子供は今なんと言った? 吾輩の身体の自由を奪ったと言った? そもそもそんな事が可能なのか? それにマナとはなんだ? 訳が解らない。
だがここで抵抗すれば、吾輩の命は無い。 それだけは解る。 ここは素直に従おう。 吾輩は混乱する頭を必死に整理し、その言葉に応える。
(や… 約束しよう。 暴れないから殺さないでくれ…)
(有り難う御座います。 では身体の拘束を解きますね。 でも僕が直接触れてないと念話できないので、このまま触らせてください)
(あ… ああ…)
その子供の言う様に、急に身体が軽くなり、自由が戻ったのを実感する。 いったいこの子供は何者なんだ… そんな疑問が頭を過る。
(自己紹介がまだでしたね… 僕の名前はロゼ。 ロゼ・セバスです。 父様の息子です)
そう言った子供… ロゼは御主人様を見てそう言う。
つまりロゼと言うこの子供は、御主人様の息子と言う事か… 道理で強者の匂いがするはずだ。
前に御主人様を乗せていた時に、殺気を感じた事があるが、その時を思い出す程のプレッシャーだった。
吾輩の服従者リストに、新たに彼の名を刻んでおこう。
そんな事を考えていると、ロゼ様は用件を教えてくれた。
(今日は父様に乗馬を習う為にここへ来たんです。 なので、僕をあなたの背中に乗せて貰っても良いですか?)
(も… 勿論です。 御主人様の息子だと言うなら拒む理由もありません)
(有り難う御座います。 僕、乗馬は初めてなので、色々教えてくださいね)
ロゼ様はそう言うと笑みを浮かべた。
ロゼ様は御主人様に何か話しかけると、御主人様は吾輩を撫でた後、ロゼ様を抱き上げて吾輩の背中に跨がらせる。
(宜しくお願いしますね)
(あ… ああ… お… 落ちない様にしかかり吾輩に掴まっていてくだされ)
吾輩は御主人様に手綱を引かれ、ゆっくりと歩き出す。
背中に跨がるロゼ様は本当に馴れてないらしく、吾輩が歩く度に体勢崩し、必死に立て直している。
(ロゼ様、もっと吾輩の動きを感じて下され。 動きを合わせれば体勢を崩す事もなくなるはずです)
(分かった。 やってみる)
そんな感じで、吾輩がアドバイスしながら続ける事一時間程で、ロゼ様は体勢を崩す事もなくなり、吾輩の動きに合わせられる様になった。
流石御主人様の息子だ。
(あの… 少し馴れて来たので、軽く走って貰っても良いですか?)
(分かった。 振り落とされない様に気を付けて下され)
(はい)
その返事を聞いて、吾輩は軽く小走りを始める。
ロゼ様は器用に吾輩に動きを合わせ、しっかり乗りこなしていた。 これなら問題無さそうだ。 吾輩は次第に走る速度を上げ、ロゼの様子を覗う。
(何となくコツが掴めました。 これもあなたのお陰ですね。 有り難う御座います)
(いえ、ロゼ様は中々筋が良い)
ある程度走った所で、吾輩はその足を止め、息を調える。
ロゼ様はまた御主人様と何かを話している。
そして御主人様からロゼ様に手渡された物を見て、吾輩は嫌な予感がした。
(あの、父様が全力疾走にも馴れておいた方良いと、鞭を預かったのですが… 叩いても良いですか?)
(お… お手柔らかにお願いする…)
吾輩は観念した。
それから吾輩はロゼ様を乗せ、鞭で打たれながら全力疾走した。
(痛いっ… ヤメテ… あっ… ダメっ… あんっ❤)
途中から何かに目覚めかけたが、それは考えない事にする。
◆
それから吾輩は馬車に繋がれ、ロゼ様の御者の練習を始めた。
御主人様とロゼ様は並んで御者席に座り、手綱の扱いを教えている。 吾輩は指示に従い、馬車を引いた。
ある程度屋敷の中を走った後、吾輩の引く馬車は街へと足を伸ばした。
ロゼ様も馴れて来たのか、指示通りに動けていると思う。
やはりロゼ様は呑み込みが早い。 街中も危なげなく操れている。
しばらく街中を走った後、ご主人様とロゼ様は屋敷へと馬車を走らせた。
馬車でも鞭で打たれたかったが、それは言ってはいけない。
この仕事をしていれば何れロゼ様に鞭打ってもらえる機会はあるはずだ。
◆
屋敷に戻ってから吾輩は、二頭立ての馬車に繋ぎ直された。
馬舎から御主人様が後輩の馬を連れて戻ってきた。
後輩は吾輩の隣に並んで馬車に繋がれ、軽く興奮している。
(先輩、こんなところに居たんすネ)
(ああ、後輩よ… 吾輩は御主人様に呼ばれてな。 御主人の息子の訓練に付き合っていたのだ)
(先輩が大人しく従うなんて珍しいですね。 僕がそのガキに舐められない様にちょっと脅してやりましょうか?)
(止めとけ! 死にたくなかったら絶対に手を出すな。 ロゼ様は御主人様に負けず劣らずの強者だ)
(どうしたんですか? 先輩らしく無いですね…)
そんなやり取りを後輩としてると、ロゼ様は後輩に近づき、吾輩にやったのと同じ事をした。
後輩は目を見開き、そして軽く放たれたロゼ様の殺気を浴びて慌てて吾輩に助けを求めて来た。
(せせせせせ先輩っ! 助けて下さい! 身体が動かないしこの子供怖いです!)
(後輩よ、死にたく無ければロゼ様に忠誠を誓うのだ)
吾輩の言葉に後輩は全力で頷いた。
それから後輩と共に、ロゼ様の二頭立て馬車の練習に付き合った後、後輩と共にロゼ様の忠実な下僕となる事を誓ったのだった。
これは余談だが、後に後輩もロゼ様の鞭裁きに、何か目覚めたのか、吾輩とどっちがロゼ様を乗せるかで、良く揉める様になった。
こればかりは後輩には譲れない、吾輩の役目だ。
◆
僕が乗馬や御者の仕事を覚えてから一週間程が過ぎた。
僕は今、とても困った事になっていた。 それを相談する為に今、父様の執務室を訪れていた。
「どうしたロゼ。 お前が私の部屋に来るなんて珍しい」
「父様… 実は父様に乗馬を教わってから、馬達が凄く懐いてしまって…」
「なんだ? それの何か問題があるのか?」
「懐いてくれるのは嬉しいんですが、皆鞭を咥えて鼻息荒く近寄って来るんですよ… 絶対おかしいですよね…」
僕の言葉に、父様は口に含んだお茶を噴き出し、顔を引き攣らせて固まった。
そして、頭を抱えてボソリと呟く。
「ロゼはメラやアイエル様だけに留まらず、馬達にまで懐かれるか… とんだ人たらしだな…」
「誉められてる気がしないですね…」
僕は苦笑いで返す事しか出来なかった。
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