6話
勘十郎「それではまずはお湯を沸かす事にしましょう。ええと……あっ、このスイッチを入れればお湯が沸くのか」
茶釜の下にスイッチらしき物を発見して僕はそのスイッチを押しました。
カチャリ。
勘十郎「うん、パイロットランプが点いたしコレで暫く待てばお湯が沸くかな」
ちよ「………」
勘十郎「あっ、お湯が沸くまで間にお茶碗を準備しないと」
勘十郎「ええと、お茶碗はドコにあるのだろう?」
お湯を沸かしてもお茶碗がないとお茶が飲めません。
どうしよう、見た感じ机の周りにお茶碗は置いてなさそうだけど……。
あっ、机の下に小さな箱があるぞ。
この中に入っているのかな?
僕はその小箱の引き出しを引いて中を調べてみました。
勘十郎「あっ、この中にお茶碗が入っていたのか。良かったぁあ」
台所までお茶碗を取り行かずに済んでホッと一安心です。
ちよ「えっ? その中にそんなに大きなお茶碗が入っていたのですか?」
その箱の中から黒い色をしたお茶碗を取り出した僕を見てチヨが驚いたようにそう話しました。
勘十郎「そう、この中に茶碗が入っているの」
その箱には引き出しが2つ付いていて下の段にはお茶碗が結構入っているみたい。
ちよ「……とてもそのお茶碗が入っていたとは思えない大きさなのですが」
勘十郎「あっ、この箱は結構小さいけど多分マジックバックみたいなモノなんじゃないかな」
異世界転生の話とかで定番中の定番のアイテムだよね。
ちよ「まじっくばっく、ってなんですか?」
勘十郎「んっ、なんでも物が入る箱みたいなモノかな」
ちよ「そんなに小さな箱の中になんでも入るのですか?」
勘十郎「うぅん、この箱はなんでも入る訳じゃなさそうだけど、お茶碗くらいの大きさの物なら入れられる、お茶碗専用のマジックバックかな」
予備の茶筅とか茶杓と言ったお茶の道具が入っていたり、もっと小さな筆とか硯とかなら入れられそうだけど、変な物を入れてお茶の道具が汚れてしまったら洗うのも大変そうだしコレはお茶碗専用って事にしておきましょう。
ちよ「そうなのですか……若様は天狗にそんな物を貰っていたのですか……」
んっ? 天狗に貰った訳じゃないけど……説明するのも難しそうだしそう言う事にしておこうかな。
カタン。
勘十郎「あっ、お湯が沸いたみたい」
ちよ「えっ、お湯が沸いたって……?」
勘十郎「それじゃあ、このお茶碗にお茶の葉を……あっ、その前にお茶碗をすすいだ方が良いのかな。それじゃあこの柄杓でお湯を掬ってお茶碗にそそいで……」
マジックバックに入っていた物だからそんな必要はないかも知れないけど、口に入れる物だから綺麗にしておかないとね。
よいしょっと……。
ちよ「えっ? 本当にお湯が沸いたのですか? ええーー! なんでお湯が沸いているのですか!?」
火を焚いた訳でもなくお湯が沸く理由が分からずチヨがそう話しました。
勘十郎「この茶釜は電気ケトルみたいな物だから火を使わなくてもお湯が沸くの」
ちよ「でんきなんとかって、なんですか?」
勘十郎「この茶釜のソコに金属のプレートが付いていてソコが熱くなるからお湯が沸くの」
コードとかが付いている訳じゃないから電気を使っている訳じゃなさそうだけどね!
ちよ「なんでその金属が熱くなるのですか?」
勘十郎「それはそう言う物なの」
ちよ「……もしかしてソレは宝具みたいな物なのですか?」
んっ? 宝具?
ああ日本的な言い方に変えるとマジックアイテムはそんな呼び方になるのか。
ならそう言う事にしておきましょう。
勘十郎「そだね」
ちよ「若様はそんなに天狗に色々な宝具を貰っていたのですか……」
色々……?
あっ、小箱の方もそう言う事になるのか。
ならそう言う事にしておきましょう。
説明するのも面倒だからね!
勘十郎「と言う訳で、すすいだこのお湯はどこに捨てようか……」
あっ、机の下の左側に壺と言うか建水とか言う水を捨てる壺があるぞソレに入れれば良いのか。
それではこのお湯はソコにポイッと捨てて。
勘十郎「コレでお茶碗が綺麗になりました。それじゃあさっそくお茶を作る事にしましょう」
初めてだから色々戸惑っちゃうよね。
勘十郎「と言う訳で、綺麗になったお茶碗に棗に入っている抹茶を竹のスプーンみたいな茶杓で入れて……」
んー、どのくらい入れれば良いのかな?
抹茶とか作った事はないからよく分からないけど、取り敢えずスプーン1杯で作ってみようか。
薄ければ足せば良いだけだものね。
ちよ「……………」
勘十郎「抹茶を入れたら次は茶釜からお湯を柄杓で入れて……このくらいかな。それでこの泡立て器みたいな茶筅で、しゃかしゃかと……」
しゃかしゃかしゃか。
テレビとかでよくこうしてしゃかしゃかかき回しているのを見るけどなんでこんな事をするのかな?
急須でお茶を作る時はお湯を入れて放っておけばお茶の葉が開いてお茶になるのに少し不思議だよね。
まあしゃかしゃかするのは少しカッコイイから真似してそうしちゃうけどね!
勘十郎「このくらいで良いかな? はい、出来上がり」
全体的に薄い緑色になったし多分コレで良さそうだね。
ちよ「それがお茶なのですか?」
勘十郎「そう、と言う訳でどうぞ召し上がれ」
僕は作ったお茶をチヨの前に置いてあげました。
お客様に出すより先に自分で飲んじゃったら失礼だものね。
僕は気配りのできる男の子なのです。偉い!
ちよ「チヨが飲んで良いのですか?」
勘十郎「お客様が先でその後が僕なの」
ちよ「そうなのですか、お茶を飲むのは初めてで少しドキドキします」
勘十郎「あれ? チヨお茶は初めてなの?」
ちよ「はい、お茶を作っている所を見るのもコレが初めてです」
勘十郎「そうなんだ」
そう言えば僕もお茶を飲むのは初めてかも。
一応この5年間と言うか物心が付いた頃からの記憶はあるけど基本ただのお湯を少し冷ました白湯とかそんな感じの物は飲んでいたけどお茶とか飲んだ記憶はないよね。
んー、家が貧乏と言う訳ではないけどまだお茶が一般的な家庭に普及する前の時代なのかな。
勘十郎「と言う訳でどうぞ」
ちよ「それではいただます……こくん」
チヨはそう話すと受け取ったお茶を一口飲みました。
勘十郎「どう? どう? 美味しい?」
ちよ「ええと……なんとなくなにかの味がします」
僕がそう尋ねるとチヨが首を傾げて少し困ったようにそう答えました。
あれ? あまり美味しくなかったのかな?
まあお茶って凄く美味しいモノって訳じゃないからソレは仕方ないか。
勘十郎「そう、お茶はオカズとか他の料理のジャマにならない様な感じのモノだからそんなモノかも」
なんか期待させちゃってごめんなさい。
ちよ「そうなのですか、チヨは初めて飲んだので良く分からないけど、邪魔にならないと言うのなら確かにそうなのかも知れませんね」
想像していた物とは違うけどコレはそう言う飲み物なのかと考えたのかチヨがそう話したよ。
勘十郎「白湯よりは少しマシだと思うけど。あっ、僕のも作ろうっと」
美味しい訳ではないけどこの時代にはコーヒーとかジュースみたいなモノはないし、ただのお湯を飲むよりは少しはマシだよね。
勘十郎「と言う訳で、僕の分も……しゃかしゃかしゃか……はい。出来上がり」
チヨの分を一度作っているので作業自体はアッサリ終わりお茶が出来ました。
勘十郎「それではいただきます。こくり……う、薄い」
なんて事でしょう。作ったお茶を飲んだらほとんど味がしません。
コレじゃほとんどお湯と変わらないよー。
ちよ「薄いのですか?」
勘十郎「うん、全然薄くて美味しくないしもっと濃くないとダメなの」
いくらお茶がほのかな味だとしてもほのか過ぎると言うかコレじゃほぼただのお湯だよね。
勘十郎「と言う訳でもう少し抹茶をたします。……しゃかしゃかしゃか……」
僕は竹のスプーンでもう一杯抹茶をたす事にしてまた茶筅でしゃかしゃかとかき混ぜました。
勘十郎「コレでどうだろう?」
さっきより緑の色が濃くなって少し泡が出来たみたい。
あっ、そう言えば抹茶ってこんな感じで泡が立っていたかも。
勘十郎「それではもう一度、ごくり……あっ、こんな感じだったかも」
まだ少し薄い気はするけどさっきよりは全然お茶って感じがするし、抹茶ってカフェラテみたいに表面に泡とかが出来ていたような気がするよね。
なるほどー、コレが正解なのかも知れないね。
勘十郎「と言う訳で、チヨのも作り直すからそのお茶碗をかして」
ちよ「えっ、はい」
勘十郎「それじゃあチヨのも抹茶をたして……もう少し多めが良いかな。ではコレを、しゃかしゃかしゃか……」
チヨの分は僕のより少し濃いめに1杯半茶杓で抹茶をたす事にして茶筅でかき混ぜました。
おっ、さっき入れた僕のより泡が出来ているぞ。
なんか楽しい〜〜。
僕はそのまましゃかしゃかとチヨのお茶をかき混ぜ続けました。
誤字脱字を直しました。




