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おだんご太平記  作者: 東のマ王
2章 立派な武士になれるように頑張っていたら仲間が増えたよ。

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2ー16話

勘十郎「母上ーー」


 母上の姿が見えて僕はちょっと嬉しくなってそう言葉が出てました。


土田御前「あら? 吉法師ちゃんも居るのね。その方はどなたかしら?」


 招いた訳ではない僧のお坊さまの姿が見えて母上はそう話しました。


信長「あっ、この坊主の爺さんはさっき町で知り合ったのですが、なかなか面白い爺さんだったので茶でもどうかと思って誘ったのです」

僧風の男「ご子息様に誘われるまま厚かましくも屋敷に上がりこんでしまって、失礼いたしました」


 母上に聞かれて信長にいちゃんとお坊さまがそう答えました。


土田御前「そうだったのですか。失礼ですがドチラ様ですか?」


 その僧がいる理由は分かったが誰か分からず母上が再びそう尋ねました。


僧風の男「いや、拙僧は偶々この辺りを通りかがっただけの者ですから名乗るほどの者ではございません」

土田御前「あっ、名乗れと言って自分が名乗らないのも失礼でございますね。私はこの地を治める織田信秀の妻でございます」

僧風の男「なんと、あの高名な織田信秀様のお屋敷でございましたか。コレは大変失礼いたしました。コレは名乗らない訳にはまいりませんな」


 僧のお爺さんは母上の言葉を聞いて驚いたらしくそう話しました。


僧風の男「わたくしは、武野紹鴎たけのじょうおうと申します」


 お坊さまが姿勢を正してそう母上に話しました。


信長「へぇ、爺さんはそんな名前だったのか」


 あっ、そう言えば名前を聞いてなかったかも。


土田御前「武野紹鴎たけのじょうおうって、もしやあの高名な、紹鴎さまですか!」


 お坊さまの名前を聞いて母上は驚いたらしくそう声を上げました。


信長「母上、この爺さんは有名なヤツなのですか?」

土田御前「爺さんなどと失礼ですよ。このお方は侘び茶や草庵の茶を生み出し今に伝える茶の湯の大家、茶の湯の達人ですよ」

信長「えっ、茶の達人って、それじゃあさっきの話は爺さん、あれ自分の事を話していたのか!?」


 まさかそんな事を母上から聞かさるとは思ってなかったのか信長にいちゃんが驚いてそう話しました。

 勿論、僕も凄く驚いています。


僧風の男「いやわたくしは、師である村田珠光むらたじゅこうが考案された侘び茶や草庵の茶を世に伝えているだけで、たいした事はしておりませんぞ」

土田御前「大した事はないなどととんでもない、茶の湯に和歌の精神などを取り入れて更に発展された大人物ではございませんか。そのようなお方とはつゆ知らず大変失礼いたしました」


 そんな大人物がこんな場所にいるとは思わず母上は驚いてそう話しました。


僧風の男「いや、わたくしなど達人などと呼ばれると恥ずかしくなるほどの本当にたいした者ではございませんが。そうですか。こちらの方達は織田様のご子息様だったのですね。いや色々と得心いたしました」


 お坊さまは僕と信長にいちゃんを見てそう話しました。


土田御前「私の息子たちがなにか失礼な事をいたしましたでしょうか?」

僧風の男「失礼などととんでもない、お二方とも利発で聡明なお子で大変感心していたところでございます」

土田御前「そうですか?」

僧風の男「はい、それになんとはなしに誘われるままに屋敷に上がり込んでしまいましたが、そのおかげでこうして美味い茶や団子をいただく事ができました。寧ろ良い思いをさせていただきましたな。ほほほ」


 心配そうにそう尋ねた母上にお坊さまがそう答えました。


土田御前「そうですか、それを聞けて少し安堵いたしました」

僧風の男「はい、お二方ともにとても良くしていただいて感謝しているしだいではございますが。そうですか織田様のご子息様であれば茶の湯の心得があってもオカシクありませんな」


 お坊さまが僕の方を見ながらそう話したした。


土田御前「えっ、いえコレはこの子が勝手に始めたおままごとのようなモノですから、紹鴎さまにお褒めいただくようなモノではございませんよ」

僧風の男「コレがおままごとですか? いやとてもそうは思えませんが、いずれかの師の元で茶の湯を習っておられたのではないですか?」

土田御前「師などとんでもない、いえコレからの時代は公家の方たちや色々な方たちとお会いする機会も増えて茶の湯の心得も必要になると思いいずれはその様な事もと考えておりましたが、まだドナタにも茶の湯を習った訳ではございません」


 んー、ほとんど独学みたいなモノだし元の時代でも一回京都のお寺でお茶を飲んだ事があるくらいだから、誰にも習った訳じゃないよね。


僧風の男「コレをお一人で考え出されたと?」

土田御前「はい、もしかしたら主人と出かけた時にどこかで茶をいただいた事があるのかもしれませんが、したいのなら好きにさせておくのも良いかと思って好きにさせておりました」

僧風の男「コレは驚きました。ご子息様は茶の湯を体現された天才なのかもしれませんな」


 お坊さまが僕を見ながらそう話しました。

 そんなに見られたら僕照れちゃうぜー。


土田御前「天才などととんでない、ただのお遊び程度のモノですから茶の湯の達人の紹鴎さまにそんな事を言われたら困ってしまいますわ」

僧風の男「いやいや、コレをお遊びなどと言われたら世の茶を嗜んでいる者の殆どは立つ瀬がなくなってしまいます。そのくらい見事な茶だと思いますぞ」

土田御前「まあ、お世辞だとしてもそう言っていただけると息子も励みになるかもしれませんね」

僧風の男「いや世辞などとそんな事はございませんぞ。これほど見事な茶をてられる者などざらにはおりませんし、ご子息はいずれ茶で名をなす大人物になるかもしれませんな」

土田御前「まあそこまで褒めていただくと悪い気はいたしませんが、勘十郎ちゃんは美味しい物を作るのが好きだからソレで少しはお茶も上手にいれられたのかもしれませんね」


 お坊さまにそう言われて母上がチョット上機嫌でそう話しました。


土田御前「あっ、そうですね。こうして知り合いになれたのも何かのご縁でしょうし、私の息子になにか教えを授けていただけませんか?」

僧風の男「教え、でございますか?」

土田御前「はい、お忙しい身なのは重々承知しておりますが、なにか一つでも教えていただく事はできませんか?」


 母上がそんな事をお坊さまに話しました。


僧風の男「いや、あれほどの茶や菓子を作れるのならわたくしが口を挟むような事はないのかもしれませんな」

土田御前「やはり、厚かましいお願いでしたか」


 母上がチョットしゅんとした感じでそう話しました。


僧風の男「いや、そう言う訳ではなくて教えるのが面倒くさいとか教えるのが嫌などとそのような話ではなくて、ご子息様は既に自分の茶の湯と言うモノを確立して実践していおられるように見受けられました。ならば余計な口を挟むのもどうかと思いそう話したまでの事でございます」

土田御前「自分の茶の湯ですか?」

僧風の男「はい、ちなみに奥方様は今までどなたかのいれた茶を飲んだ事はございますか?」

土田御前「数えるほどしかありませんが、何度かは」

僧風の男「やはりそうでしたか。ならばご子息様のいれた茶の凄さに気付いておられぬのも致し方ありませんな」

土田御前「そんなに凄いのですか?」

僧風の男「はい、わたくしが師に茶の湯を習っていた時期を既に超えておりますな」

土田御前「まあそんなにですか!?」


 いちおう僕は中級だから習うより慣れろの時期なのでしょうか?


僧風の男「はい、コレを一人で会得してその高みにまで登り詰めたなどと言われてもとても信じらない思いすら致しますし、見たところ要所要所で多少拙い部分はございましたが、コレはもう歳を重ねていけば自ずと身に付くモノでしょうし、もしどうしても教えをと言うならばソレはもう礼法とかそのようなモノを習えばもっと見栄えの良いモノになるとしか言う事はございませんな」

土田御前「礼法ですか」

僧風の男「はい、礼法に限った訳ではありませんが和歌とかそのようなモノも肥やしになるでしょうし、色々なモノに触れさせればもっと深みが増してより良いモノになるのではないですかな」

土田御前「なるほど、為になるお話をありがとうございます」


 単純にお茶の作り方とかそのお作法を習うよりも人として成長するのが一番いいって事なのでしょうか。


僧風の男「いやしかしお一人であれだけの茶を作れるようなるとは本当に信じられませんな。師とは言わなくても周りに誰か茶の湯をしている方がいらっしゃるのでしょうか?」

土田御前「そんな話は聞いた事がありませんね。あっ、いちおう主人もこの子たちが生まれる前に公家の方達を招いて茶会をしてはいましたが、最近は色々と忙しいみたいで茶などと言う事はスッカリなくなってしまいましたし、自分で覚えたとしか思えません」

僧風の男「そうなのですか……」


 へぇー、父上も昔茶会とかしていたんだ。そんな話は初めて聞いたかも。


ちよ「あっ、若様も初めから今みたいに上手くお茶をいれられていた訳ではないですよ」

土田御前「あら? そうなの?」

ちよ「はい、初めはチョット色の付いた白湯を飲んでいるみたいな感じだったり、飲むと口の中でジャリジャリしていましたが、割と直ぐに今みたいな感じに……その後もお茶の上の泡が増えたり少なくなったり泡の形も次第に整って来て、奥方さまたちが飲む頃には今のお茶みたいな感じになっていたと思います」


 まあ最初は作り方もよく分からなかったしソレは仕方がないよね。


土田御前「あら、そうだったの」

僧風の男「なるほど、そのような試行錯誤を経て今のあの茶になったのですな。いやご子息様の歳を考えればやはり信じられない気持ちはございますが、これは凄いお方にお会いしてしまいましたな。ははははは」


 チヨの話を聞いて母上とお坊さまは納得したのかそう話しました。


僧風の男「おお、ならば私も一つお願いがあるのですが、よろしいですか?」

土田御前「はい、なんでしょう?」

僧風の男「今日飲ませていただいた茶も大変結構な見事なモノでございましたが、茶をいただいたこの茶碗もまた見事な物でございます。出来ましたら記念に一つこの茶碗を頂けたらと思いまして、頂く事は可能でございましょうか?」


 お坊さまがそんな事を話して来ました。


信長「なんだ、爺さん爺さんもコイツの茶碗が欲しいのか?」

僧風の男「それはコレほど見事な茶碗となれば欲しいと思う者はたくさんいると思いますぞ」

信長「たくさんいるって、爺さんコイツの茶碗は10文とか言ってなかったか?」

僧風の男「それはあの状態ではそのくらいと言う話で、良い物ではあるとお話ししておりましたぞ」

信長「んっ? そう言われると確かにそうだな」


 ええと、10文っていくらなんだろう?

 僕ってお小遣いとかを貰っている訳じゃないし、外にお出かけした時におだんごとか買って食べた事はあるけどチヨとか誰かがお金を払ってくれるからお金を触った事がないんだよね。

 そのうちお小遣いとかをもらえるようになるのでしょうか?


土田御前「それは勘十郎ちゃんに聞いてみるしかないわね。勘十郎ちゃんあげても良いかしら?」

勘十郎「はーい。あっでもチョット待ってね」


 お茶碗をあげるくらいは構わないけど、僕はそう答えると小箱の中をあさり始めるでした。

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