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おだんご太平記  作者: 東のマ王
2章 立派な武士になれるように頑張っていたら仲間が増えたよ。

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2ー15話

僧風の男「この皿も見事な物ではございますが、この茶室も見事と言うか随分変わっておりますな」


 お坊さまがお皿を畳の上に戻して茶室の中を見回しながらそう話したよ。


信長「変わっていると言っても小さな小屋ってくらいでソコまで変わっているとは思えないがな」


 信長にいちゃんも僕の茶室に見慣れてきたのかそう話しました。


僧風の男「そうですか。作り自体は今流行りの草庵風の茶室に似ているように思えますが、なぜこのような形の物を作ろうと思われたのでしょう」

信長「んっ? 草庵風の茶室ってなんだ?」

僧風の男「茶を飲むための小屋を作ってソコでお茶をいただくのです」

信長「茶を飲むためだけに小屋を作るって、ソイツは随分と贅沢なヤツだな」

僧風の男「いやいや、少しも贅沢ではなくて四畳半とかそのくらいの小さな小屋ですから贅沢と言えるほどの物ではございませんよ」

信長「四畳半って、それはわざわざ作るような物なのか?」

僧風の男「誰にも邪魔されず純粋に茶だけを楽しむのであればそのくらいの広さがあれば十分でございましょう」

信長「ふぅん、そう言う物なのかね?」


 信長にいちゃんはよく分からないと言った顔をしながらそう呟きました。


僧風の男「しかしこの茶室はそれよりも更に小さい。なぜこのような物を作ろうと思われたのですか?」


 むむっ、コレは僕が聞かれていると言う事でしょうか?


勘十郎「お茶の基本は侘び寂びと言って、質素な物が好まれるからこのくらいの大きさなの」

僧風の男「侘び、さび? ですか?」

勘十郎「そう、侘び寂びなの」


 基本のきの字だよね。


僧風の男「侘びさび、ですか……なるほど。ではなぜこの大きさの部屋になったのか教えて頂けますか?」

勘十郎「えっ、それは……小さい部屋の方が仲良くなれるの」


 急にそんな事を聞かれて驚いてしまったけど、部屋が小さい理由なんてそのくらいの事しか思い当たる事はないよね。


僧風の男「仲良くなれるのですか?」

勘十郎「うん、例えば好きな人ならなにもしなくても近くに行くけど、そうじゃないあまり好きではない人の側にはあまり近付きたくないと言うか、あまり側に近付いていかないでしょう?」

僧風の男「ふむ、そう言う事はあるかもしれませんな」

勘十郎「でも話してみたら意外といい人なのかもしれないし、このくらいの小さな部屋なら相手の事がよく見えてこの人はこう言う人だったのかと新しく気付いたり新しい発見もあったりして、それでこの大きさの部屋なの」


 広い部屋で遠くから眺めているだけじゃ分からない事があるかもしれないしね。


僧風の男「なるほど、まずは形から入って仲良くなると言う事でございますな」

勘十郎「そなの。もちろんそれで全ての人と仲良くなれるとは限らないけど、仲良くなれるのなら仲良くした方がいいし、お茶とか茶室ってそう言うモノだと僕は思うの」


 一緒にお茶を飲んでおだんごを食べたりしていたら仲良くなれる事まちがいないよね。


僧風の男「なるほど、それが弟君の茶の湯の真髄、いや奥義みたいなモノなのですな」

勘十郎「そこまで凄いモノではないけど、そんな感じなの」


 奥義とか言われると恐縮しちゃうし、僕の茶道は中級だからまだまだ真髄と呼ぶにはほど遠いモノかもしれないね。


僧風の男「なるほど、そう言われて見るとこの茶室はその奥義を体現なされている。あの障子を閉めれ今流行りの草庵風の茶室のようにも使えてあの障子を開ければ殿中の茶の湯のようにも使える。まさに良いとこどりの茶室のようにも見えますな」


 そのお坊さまは僕の茶室を見ながらそう話しました。


信長「んっ? 殿中の茶の湯って、なんだ?」


 えっ、僕もそんなのは初めて聞いたかも?


僧風の男「殿中の茶とは今の少人数で茶を楽しむ草庵の茶の前に流行っていた、広い広間で豪華な掛け軸や高価な香炉を飾って大人数でワイワイと茶を楽しむ、そのような茶の湯の事でございます」

信長「へぇ、俺としてはソッチの方が派手で楽しそうで良いな」

僧風の男「確かにその茶の湯にも良いところはございますが、それならわざわざ茶でなくても酒を飲んで宴会でもすればよいのではありませんか?」

信長「おっ、確かにそう言われると酒の方があっているような気がするな」


 まあ信長にいちゃんも子供だからまだお酒は飲めないのですけどね。


僧風の男「はい、その他にも少し理由はありますが、派手さや豪華さを競うのはなく質素な部屋で純粋にお茶を楽しむ、そのような意図で今の草庵の茶の湯が生まれたのです」

信長「へぇ、茶と一言で言っても色々な事があるんだな」


 うん、僕も初めて聞いかも。


僧風の男「それは茶の湯がからから伝わってからそれなりに長い時がありますからソレは色々あるのでしょうな。ほほほ」

信長「なるほどな」


 そうなんだ。利休さん以前にもお茶の文化みたいなモノがあったんだね。


僧風の男「おっと、それならばもう一つ、このように部屋の中にこのような小屋を作らなくても、屋敷の脇に草庵風の茶室を作って部屋の方では殿中の茶を楽しむ。そのような事も出来たのではないでしょうか? なぜこのような部屋の中に茶の小屋を作ろうなどと思われたのですか?」


 そもそも疑問と言うかなぜ部屋の中にこんな小屋を作ったのかお坊さまには分からないかったみたいでそう尋ねてきました。


勘十郎「ええと、僕の茶室はコレ一つしかないの」

僧風の男「そうなのですか?」

勘十郎「うん、でもこの茶室ってバラバラして持ち運ぶ事が出来るの」

僧風の男「ほぉ、それは?」

勘十郎「例えば誰かの家にお泊りする時に持って行ったこの茶室をソコで組み立てればソコでも同じようにお茶を楽しむ事が出来るの」

僧風の男「なんと、この茶室はそのような事を考えて作られたのですか!」


 秀吉さんの茶室ってそう言う使い方をしていたみたいだから間違いではないよね。


信長「あー、確かにこの小屋は小さいものな。これならバラさなくても神輿のように担いで持って行く事も出来るかもしれないな」

勘十郎「そだね」

僧風の男「なるほど、であれば部屋の中だけでなく、どこか見晴らしの良い川の河原や湖のほとりでこの茶室を作ってソコでお茶をいただけると言う事ですな」

勘十郎「うん」


 前にお出かけした時に田んぼの脇で農家の人たちとお茶を飲んだりおだんごを食べたりしていたからこんなのがあると便利だよね。


僧風の男「なるほどなるほど、そのような発想はありませんでした。そう考えるとコレは凄い物を作り出されたのですな」


 えへへ、褒められちゃった。

 チョット嬉しいかも。


信長「ってか、勘十郎が作ったみたいに言っているけど、コレってオヤジたちが茶の練習用に作った物だろう?」

勘十郎「えっ、コレは僕が作った僕の茶室だよ?」


 秀吉さんの茶室っぽい茶室だけど僕のスキルで出した物だからコレは僕が作った物だよね?

 なんで父上たちが出て来るのかな?


信長「お前が作ったって、流石にコレは無理だろう?」

勘十郎「えっ、それは……」

ちよ「あっ、勝にぃが手伝っていたみたいですが、コレは若様が考えられて作った物ですよ」

信長「おっ、そうなのか?」


 あっ、チヨがそうフォローしてくれました。

 確かに僕一人でコレを作ったとなると流石に無理があるし、勝家さんも僕の秘密を知っている数少ない一人だから勝家さんに手伝ってもらったって事にしておけば問題ないのかな。

 チヨありがとう。


ちよ「はい」

信長「そうか。権六なら小屋くらいは作れるだろうし、そう言えばオヤジたちも誰かが持って来たとか話していたからそうなのかもしれないな」


 信長にいちゃんは納得してくれたみたいです。

 よかったー。変に話すと僕の法術の事がバレちゃうかもしれないし、チヨがいてくれて助かりました。


僧風の男「なるほど、そのお方も茶を嗜まれているのですな」

ちよ「えっ? 勝にぃが茶って……ないない、勝にぃはそんな柄じゃないですよ」

信長「権六って、アイツは体を鍛える事しかしてないんじゃないか?」

僧風の男「そうなのですか?」

ちよ「はい、無精者ですから体を動かす事はともかく、お茶とかお勉強とかは嫌いなんじゃないかしら?」

信長「そうだな。まあ武士としてはソレが正しい姿なのかもしれんが、アイツが茶をてている姿を見たら笑ってしまうかもしれないな。ははは」


 勝家さんもやればできるとは思うけど、ドチラかと言うと食べたり飲んだりする方が好きと言うか、その辺りはチヨと同じで食べ専みたいな感じだよね。

 偶に僕の部屋におだんごを食べに来ているんだどね。


僧風の男「そうなのですか。ならばこの茶室も弟君が考えられて作られた……いや、あの茶碗や皿を作ったとなればオカシクないのかも知れませんが、いやはやなんともこれは末恐ろしい、いや凄いお方にお会いしてしまいまいたな。ははは」


 んっ? 茶碗は僕が作った訳じゃないけど、まあソレを言ったら面倒な事になるかもしれないし、そのくらいは黙っていてもいいかな。


土田御前「勘十郎ちゃん……あら? その方はどなたかしら?」


 その時、母上が僕の部屋に来てそう話しました。

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