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おだんご太平記  作者: 東のマ王
2章 立派な武士になれるように頑張っていたら仲間が増えたよ。

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2ー13話

信長「勘十郎、いるかー」


 あれ? 信長にいちゃんの声が聞こえたよ?

 お勉強をしていた僕の耳にそんな言葉が聞こえました。

 またお団子を食べに来たのかな?


信長「おっ、いたな。勘十郎、スマンがこの坊主の爺さんに団子を食わせてやってくれないか」


 信長にいちゃんが僕の部屋に来るとそう話しました。


勘十郎「あれ? お客さま?」


 信長にいちゃんの後ろに見た事のない僧風の男の人の姿が見えました。


信長「おう、さっき町で知り合ったのだが、なかなか面白い爺さんで色々ためになる話を聞かせて貰ったんだ。それでその礼にお前の団子を食わせて貰えないかと思って連れて来たんだ」

勘十郎「あっ、はーい」


 そう言う事ですか。

 まあお団子を作るくらいは構わないかな。


信長「そうか助かる。おい、爺さんコイツが俺の弟だ」

僧風の男「ほほぉ、なかなか利発そうな男の子でございますな」


 僧風の男の人が僕を見てそんな事を話しました。


勘十郎「ええと、こんにちは」

僧風の男「おっと、これは挨拶もせずに失礼いたしました。こんにちは、拙僧は旅の途中の僧でございます」

勘十郎「あっ、はい。ええと、それじゃあ、奥のあの茶室にどうぞ」


 僕は読んでいた本を机を置くと、信長にいちゃんとその僧のお爺さんを僕の茶室に案内しました。

 勿論、チヨと桜も一緒に来たよー。


勘十郎「それではソチラにどうぞ」

僧風の男「コレはかたじけない。失礼いたします」


 今回はお客さまと言う事でその僧のお爺さんに奥の上座に座って貰って、信長にいちゃんは入り口側の畳に座って貰いました。

 チヨと桜は入りきれないので入り口の障子の外に並んで座っています。


僧風の男「ほほぉ、外から見ただけでは分かりませんでしたが、こうして中に入って見るとコレはなかなか見事な茶室になっているのですな」

信長「そうか? 俺にはただの小ちゃい部屋にしか見えないがな」


 まあ小っちゃい部屋なのは間違いではないでそう言われても仕方ないかな。


勘十郎「それではお茶の準備をしますので、暫くお待ちください」

僧風の男「コレはご丁寧にどうも」


 僕はキチンとお辞儀をしてそう話すと僧風のお爺さんがそう言葉を返して来ました。

 むむむっ、よく分からないけど、このお爺さんなんだか出来るような気がします。

 コレは少し気合を入れてお茶をいれた方が良いかもしれないね。

 毎日お茶をいれて飲んでいたおかげで僕の茶道も初級から中級に上達していたのだけど、なんだかこのお爺さんから只者ではない雰囲気を感じてしまいます。


勘十郎「それではお湯を沸かして……」


 カチャリ。


勘十郎「お湯を沸かしている間にお茶碗を準備して、よいしょっと……」


 僕は小箱の中から人数分お茶碗を取り出して畳の上に並べました。


 カタン。


勘十郎「おっ、お湯が沸いたみたい。それじゃあ、一旦そのお湯でお茶碗をすすいで、よいしょっと……」

信長「……………じぃーー」

僧風の男「………じぃーー」


勘十郎「それでは綺麗になったお茶碗になつめに入っている抹茶を二杯半入れて、ソコにお湯を注いで……このまま、茶筅ちゃせんでしゃかしゃかします。しゃかしゃかしゃか……」

信長「…………じぃーー」

僧風の男「……じぃーー」


 うぅう、知らない人にジッと見られていると緊張しちゃうけど、でも集中集中、ココで手を抜くとお茶が美味しくなくなっちゃうから最後までキチンとやりとげないとだよね。しゃかしゃかしゃか……。

 僕は茶碗の中のお茶を茶筅ちゃせんでかき混ぜ続けました。


勘十郎「はい、できあがり。それではどうぞ」


 僕は出来上がったお茶をお客さまの前に差し出してあげました。


僧風の男「これはかたじけない。それでは頂戴いたします。ほほぉ、これはなかなか見事な茶碗でございますな」


 そのお爺さんは茶碗を手に取り茶碗を見ながらそう話しました。


僧風の男「それでは失礼して、ごくん。ほほぉ、これはなかなか……ごくごく……スッ。結構なお点前てまえでございました」

勘十郎「お粗末さまでございます」


 そのお爺さんはお茶を飲むと少し感心したようにそう話しました。

 むむむっ、このお爺さんチャントお茶を飲みきった合図の吸いきりのスッって音を立てているし出来る人かも知れません。

 いや普通にお茶を習っているだけの人かも知れないけど、僕の家ではそんな事をする人なんて一人もいないから少し驚いてしまいました。

 あっ、信長にいちゃんの分も作らないと。


勘十郎「それでは、しゃかしゃかしゃか……」


 僕は次に信長にいちゃんの分をしゃかしゃかと作り始めました。


勘十郎「はい、できあがり。のぶ……吉法師にいちゃん、どうぞ」

信長「おう、悪いな。それじゃあ、ごくごく……ふぅ〜〜、まあまあな味だな」


 信長にいちゃんはお酒をあおるようにお茶をグイッと飲み干しました。

 いつもの事だけど信長にいちゃんワイルドだぜー。


勘十郎「お粗末さまでした」


 さて、チヨと桜の分も作らないと。しゃかしゃかしゃか……。


信長「なあ、爺さん。俺は茶の事は分からないがコイツのいれるお茶は美味いのか?」


 信長にいちゃんが隣のお爺さんにそう尋ねました。


僧風の男「なかなか見事な物だと思いますよ」

信長「ほぉ、俺には白湯を飲むより多少マシなくらいの物にしか思えないのだが、茶に美味いとかマズいとかあるのか?」


 続けて信長にいちゃんがそう尋ねました。

 しゃかしゃかしゃか……。


僧風の男「そうですな。茶をいれる者はそれなりにおりますが弟君は名人や達人と言うほどではございませんが、そこいらの茶を習った大人よりも遥かに茶を上手くてられているように思いますな」

信長「ほぉ、そうなのか」


 うわ、褒められちゃった。

 ちょっと嬉しいかも。しゃかしゃかしゃか……。


僧風の男「はい、所作や流れに多少拙い部分は見受けられましたが、茶の味自体はなかなか見事、ここまではいれられる者はざらにはいないのではないでしょうか」

信長「そうなのか?」

僧風の男「はい、飲み終えた茶碗の底を見て貰えますか?」

信長「茶碗の底がどうしたんだ?」

僧風の男「底に少し茶が残っておりますが、濃い茶が残っているだけで乾いた抹茶は少しも残っておりません、これは綺麗に抹茶を混ぜられていたと言う証拠でございます」

信長「んっ? 混ぜるってもあの変な道具を使って混ぜていたのだから混ざっていて当然だろう」

僧風の男「茶をてた事のない方からすると不思議に思うのかも知れませんが、上手くかき混ぜないと底の方に乾いた抹茶がそのまま残っていたり、お茶の中に溶けずにダマになった抹茶の塊が漂っていて飲むとジャリっとしたりと、そのような事になるのです。しかし弟君のこのお茶にはそのような物は全く見受けられませんでしたし、とても上手くてられていると思います」

信長「へぇ、そんな事があるのか」


 初めて聞く話に信長にいちゃんは少し驚いたようでそう話しました。

 おっと、話が途切れたこのタイミングでチヨたちにもお茶を渡してしまいましょう。

 どうぞ。


ちよ「………ぺこり」


 話のジャマをしないように黙ってチヨの前にお茶を出してあげると、チヨは受け取ったお茶をそのまま桜の方に回してあげました。

 さて、それじゃあチヨの分も作るとしましょう。しゃかしゃかしゃか……。


僧風の男「それに、弟君の作られたお茶には綺麗な泡が出来ておりましたな」

信長「そうだな」

僧風の男「その泡を見てなにか思う事はございますか?」

信長「んっ? かき混ぜていたのだから泡くらい立つかと思うくらいだな」

僧風の男「確かにそのような事ではございますが、普通に考えれば大きな泡が出来たり中ぐらいの大きの泡が出来たり色々な大きさの泡が出来る筈ですが、弟君のてたお茶にはそんな物は見受けられず綺麗に揃った小さな泡が出来ているだけですな」

信長「んっ? そう言われてみると確かにそうだな」

僧風の男「弟君はその大きな泡を潰して泡の大きさを揃えているのでございます」

信長「えっ、コイツはそんな事をしていたのか?」


 むむっ、そこに気付きますか。

 このお爺さんはやはり出来る人のような気がします。しゃかしゃかしゃか……。


僧風の男「はい、その泡をプチプチと一つづつ潰していた訳でなく一連の流れの中で他の者に気付かれないように泡を潰して揃えるなかなか見事なお点前でございますな」

信長「そうなのか、いやしかし泡を揃えたからと言ってソレがなんなのだ?」

僧風の男「例えば茶碗の中に大きな泡とか小さな泡とか様々な大きさの泡があったら少し汚らしいような感じになるとは思いませんか?」

信長「むっ、そう言われるとそんな気もするな」

僧風の男「それに、あのように細かい泡をたくさん作るとお茶がまろやかになって、甘い感じの味になるのです」

信長「むっ、甘くなるのか?」

僧風の男「はい、流派によってはあまり泡を立てずに作る流派もございますが、そちらはもう少し苦味の強い茶本来の味に近い味になりますな」

信長「むむむっ、茶に流派とかあるのか」


 えっ、そうなの?

 僕も初めて聞いたかも、しゃかしゃかしゃか……。


僧風の男「それはございますよ。まあどの流派も美味しくお茶をてていただくと言うところは変わりませんが、所作や味に違いがある。と言った感じでしょうか」

信長「そうなのか、まあ俺としては甘い方が好きだしわざわざ苦い物を飲むのもどうなのだって気はするな」


 んー、そう言えば利休さんの流派で有名なのは裏千家って家元だった気がするから裏があるのなら表もある筈だし他にもそんな流派があるのかな。

 しゃかしゃかしゃか……。

 おっと。もうコレも良さそうだね。

 僕は出来上がったお茶をチヨの前に差し出してあげました。


ちよ「…………ぺこり」


 チヨが軽くお辞儀をして僕の出してあげたお茶を受け取りました。

 うん、コレでみんなにお茶を配れたかな。


僧風の男「左様でございますか。しかしこんなに上手にお茶をてられる弟君がおられてお侍さまは幸運ではありますが、少し不幸でもございますな」

信長「んっ? 幸運とか不幸と言うのはなんの事だ?」

僧風の男「失礼ですが、今まで誰か他の者がいれたお茶を飲んだ事はございますかな?」

信長「いやないな」

僧風の男「やはり左様でございますか。この弟君の茶が普通だと思っておられるのなら、コレからどこかで茶を振る舞って貰って茶を飲む機会があったら大抵の場合はコレよりも劣る茶を飲む事になるのです、それは不幸と言う事になるのではないでしょうか」

信長「コレより劣るって……」

僧風の男「茶の上の泡が揃っていないくらいならまだしも、上手く混ぜる事すら出来ず口に含むと舌の上でジャリジャリするそんなお茶を飲む事になるのです。場合によってはその上手くもないお茶を美味いと誉めなくてはならないかも知れませんし、それは不幸でございましょう」

信長「いや、茶を混ぜるくらい誰でも簡単に出来るだろう」


 んー、僕も練習はしたけどそんなに苦労するほどの事はなかったし、このくらいは誰でもできそうだよね?


僧風の男「残念ながらそんな簡単なモノではございません。元々茶が高価な物と言う事もございますが茶と言うだけでありがたかってジャリジャリしたお茶を出されてもコレがお茶なのかと思われてソレで満足して終わりになったり、それならば自分もと茶を初められた多くの方が初めに飲ませて貰ったジャリジャリとしたお茶を手本にしてジャリジャリとしたマズいお茶をてて他の人に振る舞う、大抵の場合はそのような事で終わってしまうのです」

信長「そうなのか」


 へー、そうなんだ。

 僕も他の人がいれてくれたお茶を飲んだ事はないからチョット驚いてしまいました。


僧風の男「はい、楽しくお茶をいただけるのでしたらソレでも構いませんが、純粋にお茶の味を楽しむと言う事になるとなかなか思うようにはいかないと言う事でございます」

信長「ふぅん、そうなんだな」

僧風の男「はい、あのお歳でここまでの茶をてられるとは、驚くばかりでございますな」

信長「そうなのか。まあ勘十郎はメシとかを作るのも美味いし、そう言う事が得意なのかもしれないな」

僧風の男「左様でございますか」

信長「ああ、おっと、つい茶の話になってしまったが、団子を食わせてやると言う約束だったな。勘十郎、団子を出して貰えるか?」

勘十郎「はーい」


 思い出したように信長にいちゃんがそう僕に話したよ。

 さて、それじゃあおだんごを作る事にしましょう。

 僕はそう答えると小箱の上の引き出しを開けるのでした。

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