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おだんご太平記  作者: 東のマ王
2章 立派な武士になれるように頑張っていたら仲間が増えたよ。

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2ー7話

信秀「ふむ、しかし勘十郎はヤハリ寺に預けた方が良いのではないか?」


 奥方さまと私の話を聞いていたお殿様がそう話しました。

 やっぱりその話は無くなった訳ではないみたいですね。


土田御前「私は反対です」

信秀「即答だな。いやいま勘十郎が何をしているのかは知らんが、それだけ色々な事が出来るのなら修行を積めばもっと凄い事が出来るようになるかも知れんのだぞ。もそっと考えた方が良いのではないか?」

土田御前「お団子を作れるくらいならともかく、食事まで作れるとなれば修行にかこつけて朝から晩までそれこそ勘十郎ちゃんが倒れるまで食事を作らされる事になるのは目に見えていますから、そんな所に勘十郎ちゃんを行かせる訳にはまいりません」

信秀「いやいや、そうなるとは限らんだろう。キチンと修行をつけて貰うように頼むのだからそんな事になる筈なかろう」

土田御前「お前さま甘いですよ。いくら修行を積んだ僧とは言え人は人ですから、勘十郎ちゃんにご飯を作らせて浮いたお金でお酒を飲んだりその金で遊び呆けたりそうなる事は分かりきっています。勘十郎ちゃんはソレこそ衰弱して死ぬまで寺で食事を作らされる事になると思いますよ」

信秀「いやいや、それは考え過ぎではないか?」

土田御前「一度寺に入ってしまえば中で何をしているか分かりませんし、あのお団子やお蕎麦の味を知って作らせずに我慢できる者がいると思いますか?」

信秀「いや、勘十郎が作る物が美味いと言うのは分かるが、流石にそこまではせんだろう」

土田御前「だからお前さまは甘いと言うのです。勘十郎のあの味を知ったら勘十郎ちゃんを手放す筈はありませんし、使うだけ使って力を使い過ぎてもし勘十郎ちゃんが衰弱して死ぬような事になったら厳しい修行に耐えられなかっただとか修行が辛くて逃げ出したとかいい加減な嘘をついて誤魔化してソレで済ませてしまう。そんな人たちの所に大事な勘十郎ちゃんを渡す訳にはいきません」

信秀「いやいや、滅多な事を言うな。仮にも修行を積んだ徳のある偉い僧侶であるぞ」


 僧侶の悪口まで言い始めた奥方さまにお殿様は狼狽えながらそう話しました。

 私もそれはチョット言い過ぎな気がします。


土田御前「修行を積んだ僧とか言いますが、その修行をして何か一つでも勘十郎ちゃんみたいに術を使えるのですか?」

信秀「それは一つや二つ使えるのであろう」

土田御前「そうですか? 私はそんな術を使える僧侶など一人も見た事はありませんがドナタが使えるのですか?」

信秀「それは無闇やたらに人に見せるモノではないし、そうそう目にする機会はないのではないか?」

土田御前「見る機会がないって、もし術が使えるのなら山賊とか野盗に近隣の村が襲われている時に風を吹かせたり雷を落として追い払えば良いのに、そんな事をして民を助ける僧侶など一人も居ませんよね?」

信秀「むっ、それは……」

土田御前「人が斬り殺されているのを黙って見ているだけってソレはどんな徳を積んだ僧なのですか」

信秀「いやいや、術を使うのに時間がかかるとかそう言う事もあるかも知れんだろう」

土田御前「時間がかかるって、勘十郎ちゃんはそよ風くらいしか吹かせる事は出来ないみたいですが、えいやぁ、と言えばソレで風を吹かせる事が出来るらしいですよ。まだ子供の勘十郎ちゃんでもそのくらいの事が出来るのですから何十年も修行をしていればそれこそ簡単に人を吹き飛ばすくらいの術が使えてもオカシクないではないですか。それをなにをもったいつけているのか知りませんがやりもせず人を助ける事もしないで見ているだけって、それでは僧とは名ばかりの野盗が村を荒らすのを手助けしている仲間と変わりはないではないですか」

信秀「だから滅多な事を口にするな。寺や僧を悪く言ったなどと人に知られたら何を言われるか分かったモノではないぞ」


 確かにそう言われるとお寺の人ってそう言う時にはお寺の門を閉めてジッとしているだけなんですよね。


土田御前「もちろん、人前でそんな事を言ったり話したりはしませんが。寺とは一体なにをするための所ですか人を救い民を助けるために日々修行している場所ではないですか?」

信秀「むっ、それは……」

土田御前「それをいざという時には民を助けもせず民や信者からお金を巻き上げてその金で酒を買い人より良い暮らしをして遊び呆けている、そんなペテン師みたいな人たちに預けて本当に勘十郎ちゃんの為になると思っているのですか!」

信秀「待て待て待て、それは言い過ぎだ。変な事を言ってバチでも当たったらどうするのだ」


 奥方さまのあまりの迫力にお殿様が狼狽えながらそう話しました。


土田御前「バチが当たるってバチ当たりな事をしている人たちの事を話しているだけですから、私たちにバチが当たる筈はないではないですか」

信秀「バチ当たりな事をしているって……」

土田御前「いったい私たちが毎年いくら寺にお金を払っていると思っているのですか! そのうえ寺と言うだけで年貢は免除でお金を貯めるだけ貯め込んで、お寺の壁とかが壊れたらやれ寄進をしろだのとねだって来て自分たちの身銭を切る事もしない。そのうえ使えもしない術をさも使えるように話して人を騙してお金を取っているのですよ。それも修行を積んだ偉い僧だとか偉そうに話して、それはただの詐欺師ではないですか」


 あっ、言っちゃった。

 法事や法要で毎年たくさんの家が結構な額を払っているし、そう言えばお殿様ってお寺の修繕費とか言って数年前にポンと700貫くらいお寺にお金を寄進した事もあったわよね。

 一貫が人一人が一年で食べるお米の金額と殆ど同じだから、とんでもない額のお金をあげたと噂になったけど、あれ奥方さまは納得されてなかったのかしら。


信秀「いや、それがドコの寺の誰だか儂には分からんが、その者は偶々術が苦手とかそんな事かも知れんだろう」

土田御前「それなら誰が一体ちゃんとした術を使えるのですか。寺なんていくつもありますし各寺には何人も修行をしている者がいますがその中の誰が術を使えると言うのですか!」

信秀「いやそれは儂は知らんが、秘匿とすべき事なのかも知れんし、おいそれとは誰が使えるとか話す事が出来んのかも知れないだろう」

土田御前「秘匿って、それは襲われている者を見捨ててまで守るような事なのですか?」

信秀「むむっ、いや無闇に使ったら奥義が他の者に知られて真似をされたら困るとかそう言う事かも知れんだろう」

土田御前「そんな事を言ったらその者は一生術を使う事が出来ないではないですか、人に見せる事が出来ないのなら何のために苦しい修行を何十年も続けていたのですか。目の前で苦しんでいる者も助ける事も出来ず使わずにとっておくって、そんな事になるのならそもそも修行をした意味がありませんよね?」

信秀「いやそれを儂に言われても困るが、儂はそう言う事なのではないかと話しただけだぞ」


 そう言われると確かに奥方さまの話している事の方が正しいような気がするわね。

 その僧や寺の人たちも自分を守る事で精一杯なのかもしれないけど……。


土田御前「そうなのです。お前さまも知らないし私も知らない、知っている人なんて殆ど誰も居ないのです。あくまであの僧侶はどんな術を使えるとか言う噂が流れるくらいでソレを見た人は一人も居ない。実際に術を使える人なんて私は一人もいないと思っていますよ」

信秀「いや、どう思おうがそれはお前の勝手ではあるが……」

土田御前「はい、私がそう思っていると言うだけの話です。ですが術を使えない者の所に勘十郎ちゃんを預けた所で術の使い方もなにも知らないのですから勘十郎ちゃんの力を伸ばす事も術を覚える事も出来ませんよね?」

信秀「いやそれはどうなのだ? 例えその者が使えなかったとしても秘伝書みたいな物があって、その秘伝書に書かれた通りに修行をすれば力を増したり術を覚える事は出来るのではないか?」

土田御前「その秘伝書を見て何十人もの人が何十年も修行をして術が使えるようにならないのなら、そもそもその秘伝書にはいい加減な事しか書いてないとか、それを見て修行をしても術を使えるようにならないと言う事ではないですか?」


 あっ、それもそうか。奥方さまは鋭いですね。


信秀「いやそれは選ばれた優れた者しか使るようにならないのかも知れんだろう」

土田御前「選ばれた者しか使えるようにならないのなら初めから才能のない者まで集めて修行をさせる必要はないですよね?」

信秀「いやその才能があるかどうかを見極める為に修行をさせているのかも知れんだろう」

土田御前「見極めるもなにも術を使えない者がどうやってソレを見極めるのですか? 文字を知らない者に字を教えろと言っても文字を知らないのですから教える事など出来ませんし、術が出来ない者に見極める事も術を教える事も出来ないのではないですか?」

信秀「それも秘伝書とやらに書いてあるのではないか」

土田御前「秘伝書を読めば分かるのですか? その秘伝書を読んで何十年も修行をして術を使えるようにならなかった者がその秘伝書の通りに他の者に術の修行の仕方を教えてやっぱりコイツも術が使えるようにはならなかったか。と思いながらその術を使えなかった者がまた次の誰かに秘伝書の通りに術を教える。そんな事を何十年も繰り返して誰も術を使える者が現れない。それはとても凄い秘伝書なのですね」

信秀「いやだから儂はそのような事なのではないかと話しただけで、秘伝書うんぬんにどんな事が書いてあるか知っている訳ではないぞ」


 まさかここまで奥方さまに責められる事になるとは思っていらっしゃらなかったのかお殿様が困っていらっしゃるみたいです。


土田御前「それならばお前さまはなにをもって勘十郎ちゃんを寺に修行に出すと話しているのですか?」

信秀「だから勘十郎の術の腕が上がるのなら寺に行かせた方がよい、この家に術など使える者など居ないのだから当然そうなるだろう」

土田御前「その寺には術を使える者も居ませんし、術を覚えたり術の威力を上げる秘伝書なんて物はないのです。あるのは体を鍛えて僧兵みたいな者を作り出す鍛錬の仕方が書いてある書があるくらいだと思いますよ」

信秀「ないって……」

土田御前「無いからあんな刀とか弓とか槍を持って武装した僧兵なんて者が沢山いるのです。術を使って野盗とかを追い払う事が出来るのならあんな者達を置いておく必要はありませんよね」

信秀「いや、術と言っても大人数を相手にするほど術を使う事が出来ないからそう言う者も必要なのかも知れんだろう」

土田御前「その術を使って野盗を追い払っている所をお前さまは見た事がありますか?」

信秀「いや、儂は寺にいる訳ではないから見た事はないが……」


 と言うか私も若様以外に術を使える人なんて見た事はないし、やっぱり若様は特別なのかも知れないわね。


土田御前「偶々その寺にいる僧は風を吹かせたり雷を落とす術が苦手と言うのなら、不作や凶作の時に勘十郎ちゃんみたいにお団子なり食べ物を術で作り出して民に配れば良いではありませんか。そんな事もしてないですよね」

信秀「それは、勘十郎ほど才能がないと言うか、勘十郎は才能があったから天狗に見込まれて術を教わっていたのだろう」

土田御前「それなら術なんて使えない人の所に習いに行く必要はないですよね? もう既に勘十郎ちゃんはその人たちを超えているのですからわざわざ自分より未熟な者に教わる事なんて何もありませんよね?」

信秀「待て待て、確かに才能は超えているのかも知れないが、しかし勘十郎は自分の力で団子とかを作っている訳ではなくてあくまで天狗のくれた宝具を使って団子を作っているだけだろう、ならば習う意味はあるのではないか?」


 確かに若様はあの小箱を使ってお団子を作っているから、修行をした方が良いと言うのもあながち間違いではないのかしら。


土田御前「それはどうなのでしょう?」

信秀「どう、とはどう言う事だ?」

土田御前「確かに勘十郎ちゃんはあの小箱を使ってお団子を作っていますが、アレは本当に天狗から貰った物なのでしょうか」

信秀「天狗でなければ一体誰があんな物を勘十郎にくれたと言うのだ?」

土田御前「アレは天狗が与えてくれた物ではなくて勘十郎ちゃんが作り出した物かも知れませんよ」

信秀「勘十郎が作り出したって……」


 えっ、そんな事があるのかしら?

 私も奥方さまの言葉に少しドキリとしてしまいました。

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