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おだんご太平記  作者: 東のマ王
1章 僕は織田勘十郎信勝、5歳よろしくね。

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35話

ちよ「若様、戻りました」

勘十郎「チヨ、どうだった?」


 あれから少し経って状況がどうなっているのかチヨに聞き行ってもらったのだけど、戻ってきたチヨにそう尋ねました。


ちよ「松平の軍と今川の軍がコチラに向かって来ているらしいです」

勘十郎「えっ? 松平だけじゃないの?」


 松平と言うのは後の徳川家康さんが大名になるあの徳川家の前身にあたる家なのだけどうちと領地が接しているせいで度々問題が起きているらしいんだよね。

 それに今川もだなんてそんなの聞いてなかったよ。


ちよ「松平が今川に援軍を頼んだらしくてその二つの家が侵攻して来ているらしいです」

勘十郎「そうなんだ……どのくらいの数なんだろう?」

ちよ「ハッキリとした事は分からないのですが、三万から四万と言った辺りらしいです」

勘十郎「そうなんだ。うちの兵ってどのくらいいるの?」

ちよ「お殿さまの軍勢は三千かもう少し多いくらいだと思います」

勘十郎「えっ、ええーー! そんなチョットしかいないの!」


 コッチが三千ちょっとで向こうが三万から四万って10倍以上差があるって事じゃないですか。

 それはメチャメチャヤバいのではないでしょうか!


ちよ「松平はともかく、今川は駿河を治める大大名でお殿さまは尾張では有名ですが尾張の一領主ですから集められる兵の数に違いがあるのは仕方ないと思います」

勘十郎「それは……」


 そうなんだよね。父上は尾張を治める守護大名の家臣のそのまた家臣ってポジションだから、いちおう家臣の中では一番強いらしいけど父上だけだとそのくらいの差になってしまっても仕方ないのか。


勘十郎「援軍とかは来てくれるのかな?」

ちよ「どうでしょう。お殿さまの弟の信光のぶみつさまは来てくれると思いますが、美濃とか他の方面の守りをおろそかにする訳にもまいりませんし、少し厳しいかもしれません」

勘十郎「そうなんだ……」


 それってほぼウチの身内だけで松平と今川の大軍勢を相手にするって事なのか。


勘十郎「父上たちは大丈夫かな」

ちよ「お殿さまは戦上手で知られていますから、楽にとは言えませんがきっと松平と今川を追い払ってくださると思いますよ」

勘十郎「そう……」


 僕は子供だからお手伝いをしに行く事はできないし、父上を信じて待つしかないのだけど、どうしよう。

 父上は戦場で頑張っているし母上は家とかコッチに残った人をまとめて色々指示を出して頑張っているみたいだし、信長にいちゃんはなにをしているのかわからないけど信長にいちゃんの事だからきっと家のためになにかをしている筈だよね。

 僕も父上の息子なんだからなにかをした方がいいよね。

 でも、僕ができる事ってなんだろう?

 僕ができる事……。

 僕は一生懸命考えるのでした。


 ………………。


信長「勘十郎、いるか! 街にオカシナ奴らが忍び込んで悪さをしないか見回りに行くからお前も手を貸せ!」


 僕の部屋の中に信長にいちゃんのそんな声が響きました。


勘十郎「…………」

信長「戦う事は無理でもオカシナ奴を見つけるくらいはお前でも出来るだろう。今すぐ行くぞ!」

勘十郎「……ダメなの、僕はおだんごを作っているの……」

信長「なに? 団子だと? そんな事をしている暇があるか! 良いから手を貸せ!」

勘十郎「あっ、ダメ………くぅうう……」


 信長にいちゃんに強く手を引っ張られた拍子で頭がクラクラして僕は起きている事ができくなってベシャっと倒れ込むとそのまま意識が遠のき何もわからなくなってしまいました。


信長「なっ、勘十郎! どうした、シッカリしろ!」


 急に倒れてしまった勘十郎を目にして信長は慌ててそう勘十郎に言葉をかけた。


ちよ「若様! シッカリしてください」


 その様子を見ていたチヨも慌てて勘十郎の側に駆け寄ると勘十郎を腕に抱えながらそう勘十郎に言葉をかけた。


信長「チヨ、勘十郎はいったいどうしたのだ?」

ちよ「若様はズットお団子を作っておられました」

信長「団子だと? なっ、アレはいつぞやの団子ではないか!?」


 ある晩、腹を空かせて屋敷の中をウロウロしていた時に勘十郎が食べさせてくれた、あの後同じ物がドコかに売ってないかと街に出かける度に色々な店を見て回ったが遂に見つける事が出来なかったその団子が部屋の片隅に置かれた重箱の中にビッシリと入っていたのだから信長は驚きそう言葉を漏らした。


信長「コレはチヨが作ったのか?」

ちよ「いえ、コレは全部若様がお作りになられたのです」

信長「勘十郎が全部って……」


 重箱の中に団子が何段も重ねて詰めてあるそんな重箱がいくつも置いてあったのだ。それほどの数を勘十郎一人で作れるモノかと疑問に思い信長はそう呟いた。


ちよ「若様のお団子は少し特殊な作り方をしていて若様にしかこのお団子は作れないのです」

信長「そうなのか?」

ちよ「はい、若様は霊力を使ってお団子をこねたり丸めたりあと上のタレを作ったりしているみたいなのですが、そんな事は若様にしか出来ないのです」

信長「むむっ、なにやらよく分からんが。団子を作っていただけでなぜ勘十郎はこんな事になっているのだ?」


 団子を作っていたのかも知れないがそれで気を失うほどの事になるとは思えず信長はそう尋ねた。


ちよ「霊力とは人の生きるための活力とか気力みたいな物らしいのですが、お団子をたくさん作れば作るほど若様の生きるための気力が失われて、霊力が尽きるとこうして気を失って倒れてしまうのです」

信長「なに? それは大丈夫なのか?」

ちよ「……分かりません」

信長「なに? 分からないだと?」

ちよ「はい、前に一度霊力を使い過ぎて若様が倒れてしまった事があったのですが、その時は少し休んでいれば霊力が回復するらしくて少し眠られて元気になられたのですが、今回は気絶するまでお団子を作られて目を覚ましたらまたお団子を作って倒れて、そんな事を何度も繰り返していたのでソコまでした事など一度も見た事がないのでどうなるか凄く心配していたのです」

信長「むむっ、なぜ勘十郎はそんなに団子を作っていたのだ?」


 そもそもの疑問だがなぜそこまで勘十郎が団子を作ろうとしていたのか分からず信長はそう尋ねた。


ちよ「お殿さまたちはろくに準備もしないで慌てて出撃されたので、お腹が減っていたら力が出なくて負けてしまうのではないかと考えられたらしくて、それで若様はお団子を作り続けていたのです」

信長「むむっ、そうだったのか……」


 あの状況ではそのような事もあるかと考え信長はそう呟いた。


ちよ「はい、とは言え若様が作れる数は20個くらいらしいので、本当に何度も倒れながら作り続けて、勿論このままでは若様が体を壊してしまうと思ってお止めしてはいたのですが。みんなに食べさせてあげないとダメだと言って聞かずズット作り続けられていたのです」

信長「なに、20個だと……?」


 一つの重箱にいくつ団子が入っているのかハッキリとは分からないないが、コレほどの重箱の数となると100や200は軽く超えて4、500本くらいは楽にあるように思え信長は驚きそう言葉を漏らした。


信長「あい分かった。おい! 誰かいるか!」


兵士その1「はっ、吉法師さま、なにかご用でございますか?」


 信長が突然そう叫びと勘十郎の部屋に一人の兵士が現れそう信長に尋ねた。


信長「うむ、ソコにある重箱をオヤジたちの元に届けろ」

兵士その1「その重箱を、ですか?」

信長「うむ、勘十郎が命を削って作った団子だ。一つも無駄にする事は許さん! 必ず父上たちの元に届けるのだ!」

兵士その1「はっ! かしこまりました!」


 信長はその兵士にそう指示を出すとその兵士は他の兵士を呼び寄せ勘十郎の作った団子を一つ残らず運んで行った。


信長「うむ、コレで良い。チヨ俺は街の様子を見に行くが、勘十郎はそのまま休ませておいてやれ」

ちよ「はい」

信長「勘十郎の事は頼んだぞ」

ちよ「はい、吉法師さまも十分お気を付けください」

信長「うむ、それではまたな」


 信長はそうチヨに言い残すと勘十郎の部屋から足早に出て行った。


ちよ「若様……」

桜「…………」


 そして勘十郎の部屋に残ったチヨと桜は心配そうに勘十郎を見詰め続けるのだった。

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