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おだんご太平記  作者: 東のマ王
1章 僕は織田勘十郎信勝、5歳よろしくね。

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32/63

32話

勝家「つぅうう、儂は負けたのか……」


 少し離れた所まで蹴り飛ばされた勝家さんが身体を起こしてそう呟きました。

 よかったー。ちゃんと生きているみたいでホッと一安心です。


信長「権六、なにをしているのだ。たかが女一人仕留める事も出来んのか」

勝家「面目次第もございません。しかしアレはタダの女子おなごではありません。鬼と呼ばれるそれがしを倒した大鬼とも呼べる剛の者、並の者ではあの者を倒すのは不可能でございましょう」

信長「むっ、まあ並の女ではないと言うのは確かにそうなのもしれないな」


 どうやら勝負は決まったみたいです。

 どうなる事かとヒヤヒヤしちゃったよー。


桜「……………(泣)」


 あれ? でも桜はその場にしゃがみ込んで悲しそうにしています。

 もしかして勝家さんの攻撃が当たっていたのかな?


勘十郎「桜、大丈夫?」


 僕は心配になって桜の近くに行くとそう桜に言葉をかけました。


桜「……………」


 でも桜は俯いたまま少しも動きません。

 どうしたのかな、どこか痛めたとか怪我をしてしまったのかな?


ちよ「あら、コレは……そうなのね。サクラさんは勝にぃがその花を踏んだから怒ったのね」

勘十郎「えっ、花って……」


 チヨの話を聞いて桜が見ている所に視線を向けると誰かに踏まれてグシャっと潰れた小さな花が見えました。


ちよ「サクラさんはお庭に咲いている花をよく見ていたからそれでその花を心配しているのね」

勘十郎「そうだったんだ……」


 名もない花だけど桜もちゃんと生き物を大事にしようだとか花が綺麗だとかそう言う事を思う感性は持っていたんだね。

 いや試合の途中も蝶々を見ていたし、いい事だと思います。


信長「なんだその女は勝負の途中でそんなくだらない事に気を取られていたのか。やはり女、勝負にはならんわ」


 いやそれは負けた相手に言う言葉で勝った桜に言うのは違うと思うの。

 それより桜はどうしよう。


ちよ「サクラさん大丈夫よ。そう言う花って結構しぶといから踏まれても数日経てば元通りに元気になるから心配しなくて大丈夫よ」

桜「?? ……じぃーー」

ちよ「花とか草って下の地面の中に根を張っていてその根っこの方が痛まなければ何度も蘇ると言うか、その花は例えダメだったとしてもまた別の茎を伸ばして花を咲かせるの、だからその花は死んだ訳じゃないし心配しなくても大丈夫よ」

桜「じぃーー、!! こくこく」


 チヨがそう話してあげると桜がホッとしたような顔をして頷きました。

 草むしりをしていてもそう言う草とか花って直ぐに生えてくるほどしぶとかったりするんだよね。

 でも桜が元気を取り戻したのならよかったー。


勝家「しかし、あの者の相手をするにはいったいどれほどの鍛錬を積めば良いのか、いささか自信をなくしてしまいそうですな」

信長「確かに動きが素早くて捉えるのも難しそうだし、その上力も強いとなると苦労しそうだな」


 勝家さんと信長にいちゃんが反省会みたいな事をしています。

 ええと、このまま自信をなくしてやる気をなくしちゃったら困った事になってしまいます。

 ええと……あっ、そうだ。


勘十郎「僕、鍛錬の仕方を知っているのだけど信長にいちゃんと勝家さんに教えてあげようか?」

勝家「勘十郎様が鍛錬の仕方を、ですか?」

信長「ほぉ、それはどんなモノだ? 試しに見せてみろ」


 勝家さんは首を傾げているけど信長にいちゃんの方は少し興味があるみたい。

 そう言う事なら教えてあげましょう。

 と言う訳で、僕はその場に伏せて腕立て伏せの姿勢になりました。


勘十郎「見ていてね。こうして地面に伏せて……ぐぬぅううう、うぉおおお、ぬぉおおおおおお」


 僕は腕立て伏せをするために腕に力をいれて身体を持ち上げていきました。

 いや全然上がってないしちっとも動いてないって気もするけど、手本をみせるために頑張らないと。


勘十郎「ぐぬぅううう、おぉおおおお……はぁはぁ、わかった? こうするの」


 ちょっとしか体が上がってなかった気もするけどいちおう手本は見せれたかな。

 これ以上は無理そうなので僕はベシャって地面に潰れたままそう信長にいちゃんと勝家さんに話しました。

 

信長「分かるもなにも地面に伏せてうなっていただけではないか。それで鍛錬になるのか?」


 むむむっ、ちょっと体が上がった筈だけど信長にいちゃんたちには僕がした事は伝わらなかったみたい。

 ええと、どうしよう。

 この中で腕立て伏せを知っているのは多分僕だけだからチヨに話して代わりにしてもらうしかないのかな。

 あっ、でも待って。


勘十郎「桜ー、桜って腕立て伏せって知っている?」

桜「こくこく」

勘十郎「あっ、桜はしっているのか。それじゃあ腕立て伏せの見本を見せてあげて」

桜「こくこく……ひょい、ひょい」


 僕がそうお願いすると桜が腕立て伏せをしてくれました。

 うん、コレなら一目瞭然、やり方も伝わる筈だよね。


勘十郎「いま桜がしている事をするの」

信長「ほぉ、勘十郎はただうなっていただけだが、アレをしようとしていたのか。ふむ、しかしアレが鍛錬になるのか?」


 桜のしている事を見て信長にいちゃんが半信半疑のようすでそう話しました。


勝家「ならば拙者がどれほどのモノか試してみましょう。……ええと、こうして、むむむ」


 勝家さんが桜を真似て腕立て伏せを始めました。


信長「どうだ? なにか役に立ちそうか?」

勝家「はっ、これはなかなか……吉法師様もしてみればコレがどれほどのモノか分かりますぞ」

信長「そうか? では……なんだこのくらい簡単に出来るではないか」


 信長にいちゃんも腕立て伏せの姿勢になるとひょいひょいと腕立て伏せを始めました。

 でもそれは……。


勘十郎「それじゃあダメー」

信長「なに? なにがダメなのだ?」

勘十郎「もっとゆっくりしないとダメなの、桜がしているみたいにゆっくり身体を上げたり下げたりしないと鍛錬にならないの」

信長「なんだと? 早くした方が鍛錬になるのに決まっているだろう。ゆっくりしたところでなんの役にもたないのではないか?」

勘十郎「違うのー、ゆっくり動かす方が大変なの、早く動かす方がスゴく楽なの」

信長「勘十郎はなにを言っているのだ?」


 信長にいちゃんが訳がわからないと言う顔で僕を見ています。


勝家「むむむっ、確かに勘十郎様の仰る通りゆっくり身体を上げ下げする方がキツくはありますな。むむむ」

信長「そんなバカな事が……むむむっ、なんだコレは、体が上がらん、いったいどう言う事だ?」


 信長にいちゃんと勝家さんもゆっくり上下させる方が大変だと気付いたみたい。


勘十郎「早くすると勢いでできちゃうけど、ゆっくり動かすと胸とか腕の筋肉をシッカリ使わないと体が上げられないから大変なの」

勝家「むむむっ、確かに、コレはなかなか……くっ」

信長「確かに……くっ、もうダメだ。腕が震えて体が上がらん……ふぅーー」


 何回かしてみて信長にいちゃんと勝家さんも地面の上に潰れてしまいました。


勘十郎「どう? どう? 鍛錬になりそうでしょう?」

勝家「確かにコレはよい鍛錬になりそうですな」

信長「うむ、悪くはないのではないか」


 信長にいちゃんと勝家さんも腕立て伏せの良さが伝わったみたい。

 

勘十郎「ええと、いまの二人を見ていると信長にいちゃんは3回くらい、勝家さんは20回くらいかな。そのくらいの数をするといいと思うよ」

勝家「ほぉ、拙者は20回ですか」

信長「なに? 俺はたったの3回だと、もっと出来るぞ」


勘十郎「違うのー、ただの3回じゃなくてソレを何回か繰り返すのー」

信長「何回も繰り返すだと?」

勘十郎「そうなの、腕立て伏せをして少し休んでまた腕立て伏せをする。そんな感じで3回くらい繰り返してするの」


信長「なんだそれは続けて限界までした方が鍛錬になって良いに決まっておるだろう」

勘十郎「違うのー、無理して頑張りすぎると腕とか肘とか体を痛めちゃうから、八割とか七割くらいの所でいったん止めて休んでからまたするのー」

信長「なんだと、そんな話は聞いた事がないぞ」

勘十郎「僕は知っているの、だから信長にいちゃんの場合は3回腕立て伏せをして、30数えるくらい休んで、また3回腕立て伏せをして、また30数えるくらい休んで、最後にまた3回腕立て伏せをするの。それで十分なの」

信長「なんだそれは?」


 腕立て伏せのやり方って多分それであっていた筈だよね。


勝家「勘十郎様がそう仰るのならソレを試してみてはいかかですか?」

信長「なんだと?」

勝家「拙者たちの知らない鍛錬の仕方ですからなにか理由があるのかも知れません。試してダメだったらその時に別のやり方をしてみれば良いのではありませんか?」

信長「……ふむ、そうか」


 勝家さんの言葉で信長にいちゃんもいちおう納得してくれたみたい。


勘十郎「あっ、でもずっと3回と言う訳じゃなくて、それが楽にできるようになったら1回づつ腕立て伏せをする回数を増やしていくの」

勝家「なるほど」

信長「増やして良いのか」

勘十郎「うん、5日とかそのくらい続けてしてみて楽に感じたら数を増やすって感じ。無理のない範囲で毎日続けるとスゴく力が強くなると思うの」

信長「そうか、それなら最初から権六と同じ20回しても問題ないのだな」

勘十郎「ダメなのー、ホントに無理したら体を壊しちゃうからチョットづつ無理のない範囲で続けるのー」

 

 ソコは大事なところなのでキチンと守ってもらわないとダメです。

 まあ勝家さんは力が強そうだから初めから30回とかもっとしても大丈夫そうだけど、あんまり差があると信長にいちゃんのやる気がなくなってしまうかもしれないからそのくらいから始めてもらいましょう。


勝家「吉法師様、他の稽古もありますしまずは勘十郎様の言う通りにしてみましょう」

信長「そうか。勘十郎の顔を立ててその辺りからしてみる事にするか」


 どうやら信長にいちゃんも納得してくれたみたい。

 でもコレを続けたらチャント力が強くなる筈だよね。


信長「ところであの女はまだその腕立て伏せと言うヤツをしているみたいだが、あれはよいのか?」

勘十郎「えっ。あっ、いけない」


 うっかり桜の事を忘れていました。


勘十郎「桜ー、もう止めていいよ」

桜「こくこく」

勘十郎「桜がしてくれて助かりました。ありがとね」

桜「こくこく」


 特に疲れたようすは見えないけど今日は色々無理をさせてしまったかな。お疲れさまでした。


信長「それにしてもあの女はいったいどれほどの数をしていたのだ?」

勝家「まこと恐ろしいモノがありますな」


 涼しい顔をして腕立て伏せを続けていた桜を見ながら信長にいちゃんと勝家さんがそう話しました。

 まあ桜はアンドロイドだからこのくらいはなんともないのかもしれないね。

 さて、それはそれとして。


勘十郎「それじゃあお稽古はいったん休みにして、みんなで遊びましょう」

信長「遊ぶのか?」

勘十郎「うん、腕立て伏せの前にも試合をして疲れているでしょうし、みんなで遊びましょう」

信長「ふむ。まあ良いが、なにをして遊ぶのだ?」


勘十郎「お手玉して遊びましょう」

信長「お手玉だと? それは女や子供がする遊びではないか」

勘十郎「スゴく楽しいよ?」

信長「まあ勘十郎は子供だし、付き合ってやるか」


 信長にいちゃんもする気になってくれたみたい。


勘十郎「それじゃあ桜ー。信長にいちゃんをお手玉してあげてー」

桜「こくこく」

信長「なんだ? この女お手玉を持ち歩いているのか? うおおお! なにをする………やめんか! ……わわわ」


 と言う訳で、桜が信長にいちゃんをお手玉にしてぽんぽんと空高く放り投げてくれました。


勝家「なんと! 吉法師様を片手で投げ上げるだと!?」

桜「……ぽぉーん、ぽぉーん」

信長「なんだコレは!? わわわ、落ちる、やめろ……わわわ」


 勝家さんと信長にいちゃんは少し慌てているみたいだけど、じきにこの楽しさがわかってくれる筈だよね。


勘十郎「どう? どう? 楽しい?」

信長「なんだコレは! わわわ、体がくるくる回って目が回る……わわわ」

勝家「吉法師様! 大丈夫でございますか!?」


 うわぁ、信長にいちゃんの体が空中でクルクル回ってスゴく楽しそう。

 いいなー、僕も後でしてもらおう。


勘十郎「どう? どう? スゴく楽しいでしょう?」

信長「なななっ、コレは……おぉお、こんなに高くに上がって、空に手が届きそうだ……いいぞ、女、もっと高く上まで上げてみろ……おおお」


 あっ、信長にいちゃんも楽しさがわかってきたみたい。


勘十郎「桜ー、もっと信長にいちゃんを高く上げてあげてー」

桜「こくこく……ぽぉーーん、ぽぉーーん」


 と言う訳で桜がそれまでよりも高く信長にいちゃんを上に放り投げてくれました。


信長「おぉお、スゴいぞ。コレはいい、こんなに高くまで、これはなかなか面白いな……あははは」


 信長にいちゃんが桜にお手玉されて楽しそうに笑っています。

 スゴく楽しそうで僕まで楽しくなっちゃう。きゃっきゃっ。


勝家「なんと、鬼の子とはあのような事までできるのか……」


 勝家さんはまだ驚いているみたいだけど、してみればその楽しさがわかる筈だよね。

 そんな感じで信長にいちゃんたちと楽しく遊びました。

 勿論、信長にいちゃんの後には勝家さんもチャント桜にお手玉してもらったよ。

 うん、終わりよければ全て良しって言う言葉もあるし、これでもう桜と信長にいちゃんと勝家さんは仲良しさんだね。

 仲良し作戦大成功です(^-^)b

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