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おだんご太平記  作者: 東のマ王
1章 僕は織田勘十郎信勝、5歳よろしくね。

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29話

土田御前「ふぅ〜〜、勘十郎ちゃんのいれてくれるお茶はホントに美味しいわね」


 外出した次の日、僕の部屋にようすを見に来た母上が僕の出してあけたお茶を飲みながらそう話したよ。

 なんだか母上が僕の部屋に来る回数が増えたような気がするけど、桜の事を心配して見に来てくれているのでしょうか。

 まあ母上が来てくれるのは嬉しいからなにも問題はないのだけどね。


ちよ「若様のいれてくれるお茶を飲むとなんだかホッとしますよね」

土田御前「そうね」

桜「………?」


 桜にはまだ分からないみたいだけどこうしてお茶を飲んでいると確かにホッとするよね。

 んー、平和の味って感じ。


 ドタバタドタ。


信長「勘十郎いるか! そろそろ剣の稽古の時間だぞ。なにをしている!」


 ドタバタと足音を響かせながら信長にいちゃんが僕の部屋にやって来ました。


勘十郎「あっ、いけない忘れてた。いま行きます」

信長「遅いぞ。なにをして……んっ? 母上も勘十郎の部屋に来ていたのですか」


 信長にいちゃんが僕の部屋を覗き込んでそう話したよ。


土田御前「ええ、勘十郎ちゃんにお茶を飲ませて貰っていたのよ。あっ、そうだわ。吉法師ちゃんも勘十郎ちゃんのお茶を一緒に飲んで行きなさい」

信長「……お茶をですか? なっ、なんだコレは。いつの間に勘十郎の部屋にこんな小屋を作ったのですか!」


 信長にいちゃんは初めて茶室を目にして驚いたようでそう話しました。


土田御前「あっ、コレは誰かがこんな物を作って勘十郎ちゃんの部屋に届けてくれたみたいね」

信長「……誰かが、ですか?」

土田御前「ええ、誰だか分からないけど不思議な事もあるのね。ふふふ」

信長「……そうですか」


 母上の話を聞いて信長にいちゃんが微妙な顔をしています。

 出どころ不明のこんな物があったらそんな顔になっちゃうのかな。


土田御前「そんな事よりココに座って一緒にお茶を飲みましょう」

信長「それは……」

土田御前「剣の稽古が大事なのは分かるけど、コレからはこう言う事も必要になるのよ」

信長「それはどう言う事ですか?」

土田御前「家が大きくなれば大きくなるほどお公家さまや高貴な方たちと付き合いが増えて、そう言う方たちを招いたり招かれたりするとお茶をいただいたりお茶を振る舞う機会が多くなるのよ。だから今のうちから慣れておいた方が良いと思うわよ」

信長「……そうですか」

土田御前「だから吉法師ちゃんもココに座って一緒にお茶を飲みましょう」

信長「はい」


 母上にそう言われて信長にいちゃんも僕の部屋に入って来ると母上の近くに腰を下ろしました。


土田御前「それじゃあ勘十郎ちゃん、吉法師ちゃんにもお茶をいれて貰えるかしら」

勘十郎「はい。それではよいしょっと」


 それじゃあ信長にいちゃんの分のお茶碗を準備して、あっお湯も冷めちゃったから温め直した方がいいかな。

 僕はパパッとお茶をいれる準備を始めました。


勘十郎「それでは抹茶とお湯を入れたお茶碗を茶杓ちゃしゃくで、しゃかしゃかと……しゃかしゃかしゃか……」


信長「…………じぃーー」

土田御前「……にこにこ」


 はぅ、メッチャ見られている。

 初めていれてあげる人にジッと見られていると緊張しちゃうよね。でも集中集中、下手に作って信長にいちゃんをガッカリさせないようにチャント作らないとだよね。しゃかしゃかしゃか……。

 僕は集中してお茶を作りました。


勘十郎「はい、できあがり」


 うん、失敗しないで上手く作れたみたい。


勘十郎「それでは、のぶ……吉法師にいちゃん、どうぞ」


 うっかり信長にいちゃんと言いそうになったけど、チャント吉法師にいちゃんと言えました。

 お茶の席で名前を間違ったら失礼になっちゃうし、僕もチャント成長しているのです。えへん。

 いやそれはいいか、僕は作ってあげたお茶を信長にいちゃんの前に差し出してあげました。

 信長にいちゃんに喜んでもらえるかな?


信長「……これがお茶ですか」


 信長にいちゃんが目の前に置かれたお茶をマジマジと見ています。

 美味しく作れた筈だけど、すごくドキドキします。


土田御前「そうよ。お作法とかは気にしなくていいから。とりあえずいただいてみなさい」

信長「それでは……ごくり。……ふむ」


 信長にいちゃんがお酒をあおるようなゴクリとお茶を飲み干しました。

 どうだろう、マズいとか言われないか少し心配です。


土田御前「どうかしら?」

信長「これがお茶ですか……なるほど。それじゃあ勘十郎、剣の稽古に行くぞ」


 えっ? 感想とかはないの?


土田御前「あら、そんなに急がなくても良いのじゃないかしら?」

信長「いえ、お茶は十分いただきました。それでは勘十郎いくぞ」

勘十郎「あっ、はい」


 信長にいちゃんが立ち上がって歩き始めちゃったので慌てて僕も信長にいちゃんのあとを追いました。

 はぅ、感想とか聞きたかったけど剣の稽古の時間は過ぎているし稽古の時間が短くなっちゃうから仕方ないのかな。

 気持ちを切り替えて頑張る事にしましょう。


信長「……勘十郎よく聞け」

勘十郎「はい」


 少し歩くと信長にいちゃんが僕の方を振り向いてそう話して来ました。


信長「オヤジとお袋はやれ勉強をしろだの、さっきみたいにお茶を習えだのアレコレ話してくるが、そんな事は二の次だ、俺たちは武士だから強くなければなんの意味もない。それを忘れるな」

勘十郎「あっ、はい」

信長「強くなければ誰も守る事は出来ないし、強くなければ領民もそうだが家臣どもも誰も言う事をきかん、弱い者の言葉なんて誰も耳をかしたりしないしな。オヤジは強いからこそみんながオヤジの言葉に従っているのだ」

勘十郎「はい」

信長「オヤジの跡を継ぐ者として俺たちは他の誰よりも強くならなければならないのだ。その事を決して忘れるな」

勘十郎「はーい」


 信長にいちゃんってシッカリしているよね。

 とっても真面目で立派な武士になろうと日々努力しているものね。

 流石はあの信長になるだけの男はあるって感じ。

 元の時代の僕は信長にいちゃんの歳の頃はもっとのほほんとしていたような気がするけど、普通の人枠の僕とはモノが違うのかな。

 でも僕も信長にいちゃんの弟だから頑張って立派な武士にならないとだよね。

 そんな事を考えながら信長にいちゃんと剣の稽古に向かうのでした。

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