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おだんご太平記  作者: 東のマ王


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22話

土田御前「まあ、その子が新しくこの家に来た娘なのね」


 僕とチヨがそんな事を話していると母上のそんな言葉が聞こえました。

 えっ、母上も僕の部屋に来たの?

 このタイミングで母上が僕の部屋に来るなんて僕に別れを告げに来たのかな……。


ちよ「奥方さま……」

土田御前「チヨの知り合いの女の子らしいけど、ふぅ〜〜ん、こうして見るとなかなか整った顔をした可愛いらしい女の子なのね」

ちよ「えっ、知り合いの女の子って……?」


 んっ? いちおう鬼でも桜の見た目は女の子タイプのアンドロイドだから知り合いの女の子って事になるのかな?


土田御前「アナタはサクラと言うそうね。そうとう力が強いらしいけど勘十郎ちゃんの侍女になってくれるのなら心強いわ。コレからよろしくね」

桜「…………?」 


 母上が桜にそんな事を話しました。

 あれ? これは……?


土田御前「あっ、まずは自己紹介から始めましょうか。私は勘十郎ちゃんの母親で土田御前と呼ばれているわ。これからよろしくね」

桜「…………こくこく」


 あれ? なんか母上が普通に桜と話をしているよ。

 これはどう言う事?


勘十郎「……こそこそ、チヨ父上に桜の事を鬼って話したんだよね?」

ちよ「……こそこそ、はい。チャントそうお伝えしました」

勘十郎「でも母上の様子をみると鬼って知らないみたいだよ?」

ちよ「そうですね。お殿さまは奥方さまに話していなかったのかしら?」


 僕とチヨは母上に聞こえないようにコソコソとそんな話をしました。


勘十郎「……こそこそ、父上が母上に話さないとかそんな事はないと思うけど」

ちよ「そうですけど、奥方さまの様子を見ると知らないみたいですし、お殿さまの胸にしまって他の人には話さないとかそう言う事なのかも知れませんよ」

勘十郎「ええと、父上はなんでそんな事をしたのだろう?」

ちよ「他の人に話さなければサクラさんが鬼だと他の人に知られる事はありませんし、若様もこの家から出される理由もなくなりますよね」

勘十郎「あっ、そうか。父上は僕をかばってくれたのか」

ちよ「そのようですね。若様よかったですね」

勘十郎「うん」


 コソコソ話し合った結果そう言う事らしいと分かりました。

 そうか、僕はこの家を出て行かなくて済んだのか。

 父上ありがとう。


土田御前「ところでこの子が着ている服はどうしたのかしら?」

ちよ「私の服を着て貰ったのですが、なにかおかしいですか?」

土田御前「あっ、コレはチヨのなのね。色は似合っているからコレで良いと思うけど少しこの子には小さいかしら、後でこの子に合う大きさの服を選んで持って来ましょう」

ちよ「あっ、はい」


 母上が続けてそんな事を話しました。

 服を持って来るって事は桜もこの家にいていいって事かな。

 そこまでしてくれるのなら追い出される心配はなさそうだね。

 ふぅ〜〜、ヒヤヒヤしたけどホッと一安心です。


土田御前「せっかくこうして知り合ったのですからなにか……あっ、そうだわ。勘十郎ちゃん、勘十郎ちゃんはお茶をいれるのが上手うまいらしいからみんなでお茶をいただく事にしましょうか」

勘十郎「えっ」

土田御前「私も一度勘十郎ちゃんのいれたお茶を飲ませて欲しいと思っていたからちょうどいいわ。勘十郎ちゃんお願いできるかしら?」

勘十郎「はい」


 ええと、チヨはお茶の事も母上たちに話していたのかな?

 そう言えばこの前おだんごを母上たちの所に届けてもらったからその時に話していたのかもしれないね。

 と言う訳で僕たちは茶室の方に移動すのでした。


土田御前「へぇ、少し小さいと思ったけどこうして中に座ると意外と落ち着くような気がしてこれは良い部屋みたいですね」


 茶室の中の奥で床の間の前に腰を下ろした母上が茶室の中を見回しながらそう話しました。

 僕のこの三畳の茶室に四人が全員入って座るとチョット狭くなってしまうので、奥の上座かみざの畳の上に母上が座ってその隣りの入り口側の畳の上に桜が座って、チヨは中に入りきれないので入り口の障子の近くに座っています。

 障子を開けっぱなしにしておけばチヨも僕から見て母上たちと同じくらいの距離に座れているからコレでも問題ないよね。


勘十郎「それではお茶をいれます。まずは茶釜のスイッチを入れてお湯を沸かします」


 カチャリ。


勘十郎「お湯が沸くまでの間にお茶碗を準備して、よいしょっと……」


土田御前「………じぃーー」

桜「……….………じぃーー」


 僕は四人分の茶碗を小箱の中から取り出して畳の上に並べて置きました。


 カタン。


勘十郎「あっ、お湯が沸いたみたい。それじゃあ一度お茶碗をお湯ですすいで、よいしょっと……」


土田御前「………じぃーー」

桜「………………じぃーー」


勘十郎「うん、お茶碗が綺麗になりました。それではそのお茶碗に茶杓ちゃしゃくで2杯半抹茶を入れて、そこにお湯をそそいで、茶筅ちゃせんでしゃかしゃかします。しゃかしゃかしゃか……」


 僕はお茶碗に入れた抹茶とお湯を茶筅ちゃせんでしゃかしゃかとかき混ぜ始めました。


土田御前「………じぃーー」

桜「………………じぃーー」


 うわ、なんか母上と桜にメッチャ見られていて緊張しちゃうけど、集中集中、ここで手を抜くとお茶がイマイチな感じで美味しくなくなっちゃうからシッカリ最後までやり遂げないとだよね。しゃかしゃかしゃか……。


勘十郎「このくらいでいいかな? はい、できあがり」


 綺麗に泡もできていい感じに作れました。


勘十郎「それじゃあ母上どうぞ」


 作り終わったお茶碗を母上の前に置いてあげました。


土田御前「なかなか上手じょうずに作れていますね。それでは、いただきます。こくり……」


 母上がお茶碗を手に取って軽く中のお茶を眺めてそれからゴクンとそのお茶を飲みました。


土田御前「まあ、美味しく作れていますね」


 ふぅ〜〜、ちょっとドキドキしたけどいちおう母上に満足してもらえたみたい。


ちよ「奥方さまはお茶を飲んだ事があるのですか?」

土田御前「ええ、何度かいただいた事があるわ、うちの人もお茶をいれるのよ」

ちよ「あっ、そうなのですか」

土田御前「前に住んでいた勝幡城しょうばたじょうには勘十郎ちゃんの部屋と同じくらいの広さの立派な茶室を作って訪れた公家の方に褒めて貰った事もあるのよ」

ちよ「そんな事があったのですか」

土田御前「ええ、その頃は派手な物が好まれてあの人も色々な掛け軸とか香炉とかをたくさん集めてたくさんの人を招いてお茶をふるまっていたのだけど、最近はこの勘十郎ちゃんの茶室より少し大きいみたいけど小さな小屋を作ってそこで少人数でお茶を飲むのが流行りなって、あまり関心がなくなってしまったみたいね」

ちよ「そんな事があったのですか」


 へぇー、父上もお茶をいれていたのか。

 そんな話は初めて聞いたかも。


土田御前「ちょっと地味に感じたらしくてうちの人はあまりしなくなったけど、こう言う小さな茶室もこうしてみると落ち着いて良いのかもしれないわね」

ちよ「そうなのですか」


 ふ〜ん、千利休さんが茶の湯とか茶会みたいな事を始めたのかと思っていたけどその前からお茶を飲んだり茶会みたいな事はしていたのか。


土田御前「でもそうね。勘十郎ちゃんのいれてくれたこのお茶の方が美味しいのかしら」

ちよ「そうなのですか?」

土田御前「ええ、うちの人もそうだけど勘十郎ちゃんよりも多くお茶をいれた事があるから手際が良くてすんなりお茶をいれていたけど、勘十郎ちゃんの方が丁寧と言うか味も勘十郎ちゃんの方が美味しく作れているみたいね」

ちよ「そうなのですか、チヨは若様のお茶しか飲んだ事がないから分かりませんがお茶にも美味しいとかあるのですか」

土田御前「それは何事でも上手いとか下手とかあると思うわよ」

ちよ「そうなんですね」


 へぇー、僕がいれたお茶は美味しく作れているのか。

 いやそれよりも他の人の分もお茶を作らないとだよね。しゃかしゃかしゃか……。


勘十郎「はい。できました。ええと、このお茶は……」


 順番的にはチヨの方が先だと思うけどこの場合は桜が先の方がいいのかな? ドッチだろう。


ちよ「あっ、チヨは後で良いでしすよ」

勘十郎「そう? それじゃあ桜どうぞ」


 僕は桜の前にお茶を置いてあげました。


桜「…………じぃーー」


 うわ、なんかメッチャ桜が前に置かれたお茶を見ているよ。

 あれ? そう言えば桜はアンドロイドだからお茶が飲めないとかお茶を飲んだら体の中が錆びちゃうとかそう言う事があるのかな?

 ちょっと失敗したかも。


土田御前「サクラさん、遠慮しないで飲んで良いのよ?」

桜「………じぃーー、ひょい。ごっくん」


 母上にそう言われて桜がお酒をあおるみたいな感じでゴクリとお茶を飲みました。

 ええと、大丈夫なのかな?


桜「…………??」


 あれ? なんか桜が微妙な顔をして首を傾げているよ。どうしたのだろう?


土田御前「サクラさんにはお茶は少し早かったのかしら。何度か飲んでいれば美味しく思えるようになると思うけど初めて飲んだ時はそんな感じなのかしらね」

桜「…………?」


 なんだか不思議そうな顔をして桜が母上を見ています。

 ただお茶が美味しく思えなかっただけなのかな?

 特に問題はなさそうなので、それじゃあ次はチヨの分を作りましょう。しゃかしゃかしゃか……。


勘十郎「はい、できあがり。チヨどうぞ」

ちよ「ありがとうございます。それではいただきます。ごくり……ふぅ〜〜、若様のいれるお茶は美味しいですね」

桜「…………???」


 なんだか桜がチヨの持っているお茶碗とチヨの顔を行ったり来たりして見ています。

 まあお茶ってそんなに美味しいって訳じゃないからチヨと母上に美味しいと言われてもよく分からないのかもしれないね。


ちよ「若様、チヨはそろそろアレが欲しいのですが」

勘十郎「あー、アレね。チョット待ってね」


 チヨにそう催促さいそくされて僕はおだんごを作り始めるのでした。

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