18話
ちよ「えっ、コレは……」
勘十郎「やっぱりココはお風呂でしたか」
洗面所の隣とか向かいにある物と言ったらお風呂に決まっているし、やっぱりソコはお風呂でした。
ちよ「お風呂って……確かに部屋の真ん中に水を張った場所がありますが、ココには畳が敷いてありますよ?」
勘十郎「コレはお座敷風呂みたいだね」
スーパー銭湯とかでたまに見かける畳が敷かれたお座敷風呂がココのお風呂なんだね。
ちよ「お座敷風呂ですか?」
勘十郎「うん、こう言う畳のしかれたお風呂をお座敷風呂って言うの」
ちよ「そうなのですか、天狗って本当に変わっているのですね」
そのお風呂場を見ながらチヨがそう話しました。
勘十郎「なんだか、お風呂を見ていたらお風呂に入りたくなっちゃった」
ちよ「入りたくなったって。えっ、若様着物を脱いでどうしたのですか?」
勘十郎「服を着ていたらお風呂に入れないの、チヨも入ろう」
ちよ「えっ、チヨもですか?」
せっかくお風呂があるのに僕一人しか入らないのはもったいないよね。
と言う訳で僕はチヨも誘う事にしました。
僕は5歳児だからなにも問題ないよね。
勘十郎「うん、お風呂は気持ちいいよ」
と言うか今までお風呂に入った事はなかったし、そもそも僕の家にはお風呂がないから入りたくても入れなかったんだ。
体を濡らした手ぬぐいで拭くとか桶にお湯を入れて拭くとかそのくらいしかしてなかったんだよね。
と言う訳でお風呂に突撃です。
勘十郎「僕は先に行くね。わーーい」
僕はチヨが服を脱ぐのを待たずそのお風呂の方に走って行きました。
ちよ「あっ、若様ちょっと待ってください。しかないですね」
僕の後ろからそんなチヨの声が聞こえたけど僕はそのままお風呂に走って行きました。
勘十郎「本当にお風呂だ。久しぶりだね」
湯船の手前に座って片手をお湯の中に入れて温度を確認しています。
熱すぎる事もなくてちょうどいい温度みたい。
ちよ「若様、そんなに急いで転んだらどうするのですか」
そんな僕の後ろからそんなチヨの声が聞こえました。
チヨもちゃんと服を脱いできたみたい。
同じくらいの歳の女の子より胸は少し大きいみたい、元の大学生の僕ならもう少し違う反応をしていたのかもしれないけど、今の僕は5歳児だから悲しいかなチヨの裸を見てもたいして気になったりしないの。残念。
勘十郎「だって久しぶりだから嬉しくなっちゃった」
ちよ「久しぶりって若様はお風呂に入った事があるのですか?」
勘十郎「うん、あるよ」
ちよ「そうなのですか、このお屋敷にお風呂はなかった筈だけど……あっ、天狗のところで入れさせても貰ったのかしら」
勘十郎「チヨは入った事があるの?」
ちよ「チヨは初めてです」
勘十郎「そうなの?」
それはチョット意外です。
ちよ「お殿さまの屋敷にない物は家臣の家にもありませんよ」
勘十郎「そうなんだ。それじゃあみんなお風呂に入った事がないのかな」
ちよ「そうですね。川とか池で体を洗うとか、たまにお寺に行って空風呂に入れさせて貰うくらいでしょうか」
勘十郎「あっ、お寺にはお風呂があるんだ」
ちよ「はい。釜でお湯を沸かしてその湯気を浴びるモノですが、そのくらいでしょうか」
勘十郎「あっ、サウナみたいなモノなのか。それじゃあお風呂の入り方を教えてあげるね」
初めてならコレも教えてあげないとだよね。
ちよ「入り方とかあるのですか?」
勘十郎「うん、まずは……あれ? 桶はドコに……あっアソコにありました。この桶でお湯をすくってバシャっと体にかけます」
その部屋の隅に置かれていた木の桶を二つ持って来てそうチヨに教えてあげました。
ちよ「体の濡らすのですか?」
勘十郎「そう、かけ湯と言うのだけどイキナリ湯船の中に入ったらお湯を汚してしまうから先に軽くお湯で体を流して汚れを落としてからお湯船に入るの」
ちよ「あっ、そうなのですか」
勘十郎「そうなの。それじゃあ、ばしゃーー」
ちよ「ばしゃーー。ってそんなに畳を濡らしてしまって大丈夫なのですか?」
畳の上でお湯を撒き散らした僕を見てチヨが驚いたらしくそう尋ねてきました。
勘十郎「大丈夫。この畳は濡れても大丈夫なのように作ってあるの」
ちよ「腐ったりしないのかしら?」
勘十郎「腐る事もないしカビも生えたりしないから大丈夫」
ちよ「そんな物を作れるなんて天狗って凄いのですね」
勘十郎「そだね」
普通の畳でこんな事をした畳がふやけたり腐ってしまうけどココはお座敷風呂だから問題ないよね。
勘十郎「と言う訳でチヨも身体を流してね。ばしゃーー」
ちよ「はい。それでは、ばしゃーー」
僕とチヨはお風呂のお湯を何度か体ににかけて軽く汚れを落としました。
勘十郎「このくらいでいいかな。それじゃあお風呂に入りましょう」
ちよ「もう入って良いのですか?」
勘十郎「うん、でもゆっくりね? 急に飛び込んだりしたら体がビックリしちゃうからゆっくりお湯に入りましょう」
ちよ「ゆっくりですね」
勘十郎「ゆっくり足の先から、そーっと……」
ちよ「足の先から、そーっと……」
その湯船は畳と同じくらいの高さで下に掘ってあるタイプの物だからまたいだりしなくても簡単にお風呂に入れるの。
湯船のへりの部分に1段座れるくらいの深さの浅い場所もあるから急に深くならなくて安心だね。
勘十郎「このまま肩まで浸かります」
ちよ「肩まで浸かるのですか。ふぅ〜〜、 こんな風にお湯に浸かるのは初めてですが、コレは気持ちいいですね」
へりの浅い部分からその先の深い場所に降りて僕とチヨはしっかりお風呂に浸かりました。
ああ、この感じ久しぶりでいい感じ。
勘十郎「うん、お風呂は気持ちいいの」
ちよ「そうなのですね。ふぅ〜〜」
勘十郎「ふぅ〜〜」
ああ、こうしてお風呂に入るのはいつぶりだろう。とっても気持ちいいな♪
勘十郎「と言う訳で出ます」
ちよ「えっ、もう出てしまうのですか?」
勘十郎「うん。身体を洗って、それからもう一度お風呂に浸かるの」
ちよ「そうなのですか」
勘十郎「あっ、タオルがないと体が洗えないね。僕取って来る」
さっきのラックのところに僕は走って取りに行きました。
勘十郎「はい、チヨはコレを使ってね」
ちよ「若様にこんな事までさせて申し訳ありません」
勘十郎「ココは僕の秘密の部屋だからそのくらい大丈夫。と言う訳で身体を洗いに行きましょう」
ちよ「はい」
そのお風呂の左側にシャワーの付いた蛇口が5コ並んでいるのでソチラに進んで行きました。
さっきの洗面所の流しも何人も同時使えるモノだったけど、お風呂の方もそんな感じになっているんだね。
勘十郎「この木の椅子に座ります」
ちよ「はい、えっ、ココの壁にも鏡が付いているのですね」
勘十郎「たいていのお風呂はそうなっているの」
家庭用のお風呂には付いてないけどこのスーパー銭湯みたいなお風呂なら付いていてもオカシクないよね。
勘十郎「目の前に置いてあるボトルは、右から身体を洗うボディシャンプーで真ん中のがシャンプー、一番左のがリンスになっているの」
ちよ「ええと、それはなんですか?」
勘十郎「全部使うからやっていけば自然に分かるよ。と言う訳でタオルをいったん桶に出したお湯につけて、左ボトルの上のノズルを押してタオルにこのくらい出します」
ちよ「はい」
勘十郎「それでそのタオルを少しクチュクチュして身体を洗います、よいしょっと……」
ちよ「あら、若様の腕にまた泡が付いていますよ」
勘十郎「さっきの歯磨き粉と同じでコレで体を洗うとこうなるの。チヨもやって」
ちよ「はい、この布にコレのココを押して……わっ、白いのが出てきたわ」
勘十郎「そのまま二、三回押して出して」
ちよ「はい、コレはなんで出て来るのかしら?」
勘十郎「ソレはそう言うモノなの」
ちよ「そうですか」
勘十郎「そのくらいかな。それで身体を洗います。ごしごし……」
ちよ「ごしごし……あら、なんだか泡がたくさん出てヌルヌルするようなフワフワするような不思議な感じがするのですね」
勘十郎「そだね。そのままお腹と背中、足も全部擦って洗います。ごしごし……」
ちよ「ごしごし……」
僕とチヨはそのまま体を全部洗っていきました。
勘十郎「チヨ全部洗えた?」
ちよ「はい、洗えました」
勘十郎「そう、それじゃあこのシャワーで泡を流します。しゃわーー」
僕は壁にかけてあったシャワーを持って体を流し始めました。
ちよ「えっ、なんだか変な水の出方をしていますね」
勘十郎「このシャワーの先に小さな穴がたくさん付いているからこんな出方をするの」
ちよ「わっ、本当に小さな穴が沢山ついていますね」
勘十郎「うん、この方が綺麗に洗えるの」
ちよ「そうなのですか、そんなに細かい穴をいくつも開けるって天狗って随分とこだわった物を作るのですね」
勘十郎「そだね。チヨも体を流してね」
ちよ「あっ、はい。わっ、なんだかくすぐったいような感じがしますね」
勘十郎「そだね。そのまま背中の方もしっかり流してね」
ちよ「はい、あっ、こうしてずっとお湯が出ていると流すのが凄く楽ですね」
勘十郎「そだね」
そんな事を話しながら僕とチヨは体の泡を流していきました。
勘十郎「それでは、次は頭を洗います」
ちよ「頭を洗うのですね」
勘十郎「うん、それじゃあここままシャワーで髪の毛を濡らします。しゃわーー」
ちよ「髪の毛を濡らすのですね、しゃわーー」
勘十郎「髪の毛を濡らしたら真ん中のボトルに入っているシャンプーを手にこのくらい出します」
ちよ「はい、これは手に出すのですね。よいしょっと」
勘十郎「いま出したシャンプーを両手で軽く広げて、このまま頭をわしゃわしゃと洗います。わしゃわしゃ……」
ちよ「あら、体を洗った時よりいっばい泡ができていますね」
勘十郎「シャンプーで洗うとこうなるの、チヨもして」
ちよ「はい、真ん中の容器から手に出して頭を洗うのですね。わっ、泡が凄く出来るわ」
チヨも僕のまねをして頭を洗い始めました。
勘十郎「指先で髪の毛の生えぎわとか地肌をしっかり洗います。わしゃわしゃ……」
ちよ「はい、こんな風に頭を洗うのは初めてですが、この泡が出る液体を付けると指通りが良くて凄く洗いやすいですね。わしゃわしゃ……」
勘十郎「そだね、耳の後ろとかかゆいところがあったらソコもシッカリ洗ってね。わしゃわしゃ……」
ちよ「あっ、はい。わしゃわしゃ……」
勘十郎「頭の地肌を洗い終えたら髪の毛もシッカリ洗いましょう。わしゃわしゃ……」
ちよ「髪の毛ですね。わしゃわしゃ……」
勘十郎「んー、こうしてシッカリ頭を洗うのは久しぶりだからなんだか楽しいね。わしゃわしゃ……」
ちよ「確かに泡がたくさんできて面白いですね。わしゃわしゃ……」
そのまま暫く僕とチヨは頭を洗い続けました。
勘十郎「チヨ、しっかり洗えた?」
ちよ「はい、洗えました」
勘十郎「そう、それじゃあ頭の泡を流します……んんん?」
あれ、シャワーはどこー?
ちよ「若様なにをしているのですか?」
勘十郎「シャワーを取りたいのだけど、目を開けると泡が目に入って痛いから目が開けられないの」
ちよ「あっ、そうなのですか。よいしょっと、はい、どうぞ」
勘十郎「あっ、ありがとう。このシャワーを使って泡を流します。しゃわーー」
チヨがシャワーを取ってくれて助かりました。
って言うかチヨって目を開けたまま頭を洗えていたのかな?
初めてシャンプーで頭を洗ったはずなのにソレってすごくない。
ちよ「コレで頭を流すのですね。しゃわーー」
チヨも僕に続いて頭の泡を流して始めました。
勘十郎「しっかり泡がなくなるまで綺麗に落としてね。しゃわーー」
ちよ「はい。しゃわーー」
勘十郎「うん、このくらいでいいかな。それじゃあ次は一番左端のリンスを手に出して髪の毛に付けます」
ちよ「あら? ソレはあまり泡が立たないのですね」
勘十郎「うん、コレは髪の毛に栄養を与えるたり痛みを治してくれる物なの」
ちよ「痛みを治すって、傷薬みたいな物なのですか?」
勘十郎「そこまでの効果はないけど、髪がゴワゴワしたりパサついたりするのをおさえてくれるくらいの物なの」
ちよ「そうなのですか」
勘十郎「うん、チヨもやって」
ちよ「はい、コレを手に出して髪に付けるのですね」
勘十郎「うん、まんべんなく髪の毛全部に付けてね。わしゃわしゃ……」
ちよ「はい。わしゃわしゃ……」
勘十郎「しっかりリンスを付け終えたらシャワーで髪の毛を綺麗に流します。しゃわーー」
ちよ「はい。また流すのですね。しゃわーー」
勘十郎「体について残っている泡もこのまま流してしまいましょう。しゃわーー」
ちよ「体も流すのですね。しゃわーー」
勘十郎「はい、以上で終了です」
チヨの体にも泡が残ってないみたいだし、シッカリ洗えたみたいだね。
ちよ「これで終わりですか。なんだか体がサッパリしましたね」
勘十郎「うん、サッパリしたね」
濡れた手ぬぐいで体を拭いただけだとこんな爽快感みたいな物まで感じる事はないからすごくサッパリしたよね。
勘十郎「それじゃあもう一度お風呂に入りましょう」
ちよ「はい」
体を洗い終えて僕とチヨはもう一度湯船に向かいました。
勘十郎「ふぅ〜〜」
ちよ「ふぅ〜〜」
お湯に浸かると自然とそんな言葉が口から出ました。
ちよ「こんなお風呂は初めて入りましたがとても気持ちがいいですね」
勘十郎「そだね」
久しぶりのお風呂はとっても気持ちいいモノでした。
お風呂は気持ちいいけど僕の背の高さだとお尻まで底に付けたら顔までお湯の中に浸かってしまうのがチョット困ってしまいます。
あと何年か経てば背が伸びて普通に浸かれるようになると思うけど5歳児にはチョット深すぎるよね。
ちよ「若様もう出られるのですか?」
勘十郎「僕にはチョット深すぎるのでコッチに座って浸かるの」
湯舟のはしの一段浅くなっている場所に移動してソコに腰掛けました。
んー、コレだと肩まで浸かれないけど、ずっとしゃがんでいるよりは少しはマシだよね。
ちよ「そうですか。確かに若様には少し深いのかもしれませんね」
勘十郎「うん、あっ、チヨは肩までシッカリお湯に浸かってね。そうした方が体が温まるし疲れも取れるよ」
ちよ「はい」
そうして僕とチヨは暫くのんびりとお風呂に浸かってくつろぐのでした。
ほんとお風呂って気持ちいいな♪




