17話
勘十郎「あれ、コレは……」
ちよ「あっ、この先は廊下になっているのですね」
ドアを開けると右の方に長い廊下が伸びていました。
勘十郎「そだね」
ちよ「この先はどうなっているのかしら?」
勘十郎「うーん、取り敢えず目の前のドアから調べてみようか」
ちよ「そうですね」
今開けたドアの廊下を挟んだ向かいにドアが付いていました。その通路の左側にはいくつかドアがあるみたい。
勘十郎「それじゃあ、このドアを開けるね」
ちよ「はい。……失礼します」
僕がドアを開けると中に誰かいた時の事を考えたのかチヨがそう中に向けて言葉をかけました。
勘十郎「あっ、ココはキッチンですか」
ちよ「きっちん、ってなんですか?」
勘十郎「台所とかおかってみたいな場所なの」
ちよ「ココは台所なのですか」
勘十郎「うん、あのカウンターの奥でご飯を作って右側の食卓の方で食べるの」
ちよ「そうなのですか。なんだかココにも足の長い机とか足の長い椅子が置いてあるのですね。ココで下働きの者が食事を食べるのですね」
チヨが僕の話を聞いてそう話したよ。
勘十郎「んっ? ココはみんなでご飯を食べる場所だよ?」
ちよ「みんな、ですか?」
勘十郎「そうみんなで食べるの」
ちよ「そうですか、天狗ってそう言う事にはこだわらないのかしら?」
この時代は台所やその近くで使用人の人達がパパッと食事を食べて家の主人や僕達は居間の方に運ばれてきた物を食べているの。
身分が高くなればなるほどそれが普通になるんだって。
勘十郎「ココは僕の秘密の場所だから使用人とかは入れないし、僕と来た人が食べる場所なの」
ちよ「あっ、それもそうですね」
住んでいる屋敷とは違うと分かったのかチヨがそう話しました。
勘十郎「うん、ココは分かったし次の部屋を見に行こう」
ちよ「はい」
台所をずっと見ていても仕方ないので僕とチヨは次の部屋に向かう事にしました。
勘十郎「次のこの部屋は……おっ、ベッドが置いてあるよ」
ちよ「あら、ココにも足の付いている台があってその上にお布団がひかれているのですね」
うん、この部屋は寝室みたいだね。
勘十郎「わぁああ、こんなに大きなベッドは初めて見たよ。……じゃーんぷ、わあぁああ、すごくフカフカして気持ちいいぃいい」
誘惑に負けて僕はそのベッドに走って行くとそのベッドに飛び込みました。
ふふふ、とっても柔らかくて気持ちいいぃいい。
ちよ「あら、コレは凄くふかふかしているのですね」
チヨもそのベッドに近付いて来ると、そのベッドに手を乗せてそう話したよ。
勘十郎「チヨも上に上がってみてー」
ちよ「でも天狗の寝室だったら失礼になるのじゃないですか?」
勘十郎「ココは僕の隠し部屋だから天狗の布団じゃないし、上がって大丈夫だよ」
ちよ「そうですか。それなら少しだけ失礼します。よっと、うわ、凄く柔らかくて手とか足が沈んでしまいそうです」
僕がそう話すとチヨもそのベッドの上に上がってきました。
勘十郎「ふふふ、チヨも上がったみたいだね。それじゃあ、じゃあーーんぷ」
ちよ「えっ、わわわ、若様なにをするのですか……わわわ、ちょっと……わわわ」
チヨがベッドの上に上がったのを見計らって僕が飛び上がってジャンプをするとベッドが弾むように揺れてチヨがわたわたしています。
ふふふ、楽しいーー。
ちよ「ちょ、ちょっと若様、やめて……わわわ、それなら、ええい!」
勘十郎「えっ? わわわ」
チヨにやり返されてチヨが飛び跳ねるとベッドが大きく揺れて僕はバランスを崩して倒れてしまいました。
でもふかふかだからちっとも痛くないけどね。
ちよ「いたずらするとこうですよ」
チヨが腰に手を当てて僕を見下ろしながらそんな事を話して来ました。
ぬぬぬ、これは負けていられないね。
勘十郎「ならば、じゃーーんぷ」
ちよ「わわわ。もう、ええいい」
勘十郎「わわわ……もう一度、じゃーーぷ」
ちよ「あっ、それは……ええい」
僕とチヨは暫くベッドの上で飛び跳ねて楽しく遊ぶのでした。
勘十郎「ふぅ〜〜、楽しかったぁ」
ちよ「ふぅ〜〜、チヨは少し疲れてしまいました」
ベッドの上でゴロリと横になって僕とチヨはそう話しました。
んーー、とっても楽しかったぁ。
勘十郎「ふぅ〜〜、こうしているとなんだか寝たくなっちゃうね」
ちよ「そうですね。このお布団はとってもフカフカしていてチヨも眠くなってきました」
勘十郎「すぅ〜……………」
ちよ「すやすや……………」
…………。
勘十郎「……って、寝ちゃダメぇー。まだお部屋を調べている途中なんだから寝たらダメーー」
ちよ「あっ、そうでした」
いけないいけない、つい寝そうになっちゃったけどまだ寝たらダメだよね。
勘十郎「と言う訳で、次の部屋に向かいます」
ちよ「はい、若様」
僕とチヨはベッドから降りて次の部屋に向かうのでした。
次の部屋にはなにがあるのかな?
カチャリ。
僕は隣りのドアを開けました。
勘十郎「あっ、ココはトイレでしたか」
そのドアを開けると見慣れた洋式の水洗便器が置いてありました。
ちよ「といれ、ってなんですか?」
勘十郎「ええと、ココはお便所なの」
初めてトイレを見たチヨが分からないようすだったので僕はそう教えてあげました。
ちよ「そうなのですか、ずいぶん変わったお便所なのですね」
和式の木で作った古い時代の物しか見た事のなかったチヨが不思議そうにそう話したよ。
勘十郎「僕としてはコッチの方がしやすいの」
ちよ「そうなのですか?」
勘十郎「あとで使い方を教えてあげるね」
ちよ「はぁ」
と言うかコレでおトイレ問題は解決できたのかな?
ハッキリ言って今の家のトイレって照明がなくて暗いだけじゃなくて臭くて汚いの。
いや汚いなんて言ったら掃除をしている人に悪いのだけど、元の時代のあの綺麗なトイレを知っている僕としてはわりとあのトイレで用をたすのはツラいモノがあったんだよね。
でもコッチでしちゃえば問題なさそうだし、チャントしたトイレがあってよかったー。
と言う訳で、僕とチヨはトイレを後にして次の部屋に向かうのでした。
勘十郎「さて、次のこの部屋にはなにがあるのかな。わくわく」
ちよ「若様楽しそうですね」
勘十郎「うん、冒険しているみたいですごく楽しいの」
ちよ「そうですか。チヨは驚き過ぎて少し疲れてきました」
勘十郎「そう? もうチョットだから頑張ろうね?」
ちよ「若様を一人にする訳にはいかないので仕方ないですね」
と言う訳で次の部屋の前まできました。
勘十郎「それでは、おーぷん」
その部屋のドアを開けました。
ちよ「あら? ココもまた随分変わった部屋ですね」
勘十郎「うん。あっ、ココは洗面所なんだね」
ちよ「洗面所ですか?」
勘十郎「うん、ココで顔を洗ったり歯を磨いたりするの」
ちよ「そうなのですか。ええーー! なんでこんなに大きな鏡が壁に付いているのですか!」
洗面台の正面に鏡がある事に気付いたチヨが驚いたようにそう話しました。
勘十郎「洗面所に鏡があるのは普通なの」
ちよ「普通って、こんなに大きな鏡なんて見た事がありませんよ。いったいコレはいくらするのかしら?」
この時代は小さな手鏡でもけっこうな値段がするらしいのでこんなに大きな鏡を見たら驚いてしまうのかな?
ってか、コレって普通の家庭の洗面所じゃなくて蛇口とか流しがいくつも並んだ旅館とかホテルとかに置いてありそうな洗面所になっているんだね。
勘十郎「あっ、歯ブラシと歯磨き粉が置いてあるよ」
ちよ「えっ? 歯ブラシってなんですか?」
勘十郎「コレなの、コレが歯を洗う道具なの」
その洗面台に置かれていた歯ブラシを手に取ってチヨに見せてあげました。
ちよ「歯を洗うって、随分変わった歯木なのですね」
勘十郎「この方が洗いやすくて綺麗になるの」
ちよ「そうなのですか?」
勘十郎「うん、それじゃあ歯を洗いましょう」
ちよ「えっ、歯を洗うのですか?」
勘十郎「そう、虫歯になったら困るし綺麗にするの」
ちよ「はぁ」
勘十郎「と言う訳で使い方を教えてあげるから僕のまねをしてね」
ちよ「はい」
チヨはあまり乗り気ではなさそうだけど虫歯になったら困るしチャント歯を洗っておきましょう。
勘十郎「それじゃあ、チヨはこの歯ブラシを使ってね」
ちよ「はい。って随分細い毛みたいな物が付いているのですね」
勘十郎「うん、それで綺麗になるの」
歯ブラシ自体はけっこう置いてあったのでその中の一本をチヨにあげました。
勘十郎「その歯ブラシにこの歯磨き粉を、ええと、このくらいしぼって乗せます」
ちよ「その白いドロッとした物はなんですか?」
勘十郎「これは歯を綺麗にするための物なの。はい、チヨもして」
ちよ「はぁ、ええとこう押して、わっ、中からいっぱい出てきましたよ」
勘十郎「押したら押した分だけ出て来るから加減を間違えるといっぱい出ちゃうの」
ちよ「そうなのですか」
勘十郎「でもそのくらい出せば十分かな」
チヨの歯ブラシを確認するといい感じに歯磨き粉が毛の上に乗っているみたい。
勘十郎「それじゃあコレで歯を洗います。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「えっ、若様の口から泡が沢山出て、大丈夫なのですか?」
勘十郎「歯磨き粉で洗うとこうなるの」
ちよ「そうなのですか?」
勘十郎「うん、この泡がたくさんでるのは綺麗に洗えている証拠だからこうなるのは普通なの、チヨもやってみて」
ちよ「はい。それでは、しゃかしゃかしゃか……」
チヨも僕のまねをして歯を洗い始めました。
勘十郎「毛の部分を強く押し当てすぎないようにして歯の表面を優しく洗ってね。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「はい。と言うかこの白いドロっとした物は甘くて美味しい味がするのですね」
勘十郎「そだね。……ってダメー。美味しい味がするけどコレは食べちゃダメだからね」
ちよ「えっ、でもこんなに美味しい物なら食べないともったいないですよね?」
勘十郎「コレは食べ物じゃないの、美味しい味がするけど歯を洗うための物だから食べたり飲んだりしたらダメなの」
ちよ「そうですか……」
ふぅ〜〜、初めてだから仕方ないけどそんな事まで注意する事になるとは思わなかったよ。
人に物を教えるのってけっこう大変なんだね。
勘十郎「と言う訳で、奥歯の方もチャント洗います。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「奥歯ですね。しゃかしゃかしゃか……あら、コレは洗いやすくて良いですね」
勘十郎「でしょう。歯木じゃ奥歯を洗うのが大変だけどこの歯ブラシなら簡単に全部綺麗にできるの。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「そうなのですね。しゃかしゃかしゃか……」
ようやくチヨにもこの歯ブラシの良さが伝わったみたい。
勘十郎「歯の裏側とかもチャント洗ってね。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「はい。しゃかしゃかしゃか……」
勘十郎「それでは反対側の歯も洗います。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「はい、しゃかしゃかしゃ……って若様口の中が泡でいっぱいになってしまったのですが、これはどうすればいいのですか?」
勘十郎「もうチョット我慢して、その泡泡がなくなったら綺麗にできなくなっちゃうから出さずに洗いきるの。しゃかしゃかしゃか……」
ちよ「そうですか、なんだか若様の口から泡泡が垂れてしまってますが、それはいいのですか?」
勘十郎「それは僕は子供だから仕方ないの」
ちよ「そうなのですか」
そうでーす。元の僕は垂らしたりしなかった筈だけど今の僕は子供からそれは仕方ないよね。
僕は5歳児だからね。
勘十郎「チヨ残さず全部綺麗に洗えた?」
ちよ「はい、洗えました」
勘十郎「それじゃあ口の中の物のこの流しの中にぺ、します。ぺっ」
ちよ「ぺっ」
僕のまねをしてチヨが隣の流しでぺっしました。
勘十郎「それじゃあ水を出して口の中にをすすぎます。くちゅくちゅくちゅ……」
ちよ「はい、ええー! なんで水がそんな所から出ているのですか!?」
勘十郎「これは蛇口だからココから水が出てくるの」
ちよ「出て来るって、その水はどこから来るのですか?」
勘十郎「コレはそう言う物なの、チヨも早くうがいをしてね」
ちよ「はい、ええとこの取っ手を上に上げて……わっ、本当にコッチでも水が出てきたわ。本当にどうなっているのかしら?」
今の時代は井戸とか川に水を汲みに行くのが普通だからこんなに簡単に水が出てきたら驚いてしまうのかな。
説明するのは難しそうなのでパスします。
勘十郎「早く口をすすいで」
ちよ「はい、そうでした。コレを手ですくって……くちゅくちゅくちゅ……」
勘十郎「ついでだからうがいもしておきましょう。がらがらがら……ぺっ」
ちよ「がらがらがら……ぺっ」
勘十郎「はい、歯が綺麗になりました」
ちよ「そうですね。なんだか口の中がスッキリしました」
口の中に入っていた物を全て出して僕とチヨはそう話しました。
勘十郎「コレが正しい歯の洗い方なの」
ちよ「正しいかどうかはチヨには分かりませんが、なんだか息までさわやかになった気がします」
勘十郎「そだね。ついでだから顔も洗ってしまいましょう」
ちよ「そうですね。若様のお口の周りにまだ泡がいっばいついているので洗った方が良さそうですね」
勘十郎「チヨもだよ。と言う訳で、ぱしゃぱしゃ……」
ちよ「……ぱしゃぱしゃ……」
と言う訳で僕とチヨは顔も綺麗に洗いました。
勘十郎「ふぅ〜〜、サッパリしたぁ」
ちよ「本当にサッパリしましたね」
勘十郎「あっ、顔を拭くタオルは……あっ、あった。はい、コッチのはチヨが使ってね」
部屋の隅に置かれたラックにタオルがたくさん置いてあったのでソコに取りに行ってその1つをチヨに渡してあげました。もちろん僕の分もチャント取ってきたよ。
ちよ「ありがとうございます。えっ、こんなに柔らかい手ぬぐいなんて初めて見ましたよ」
勘十郎「コレは手ぬぐいじゃなくてタオルなの」
ちよ「そうなのですか、編み方も普通の手ぬぐいと違うみたいだし、天狗って随分凝った編み方をしているのですね」
勘十郎「そだね」
天狗と言う事にしておけば全部それで済ませられそうな気がするけど、それで済ませられるのならそう言う事しておきましょう。
未来の事とか話してももっと訳が分からなくなってしまうものね。
勘十郎「ふぅ〜〜、コレで顔もさっぱりしました」
ちよ「このタオルと言う布はよく水を吸って綺麗に拭けるのですね」
勘十郎「そだね」
ちよ「それにとても柔らかくてとっても良い肌触りがします」
勘十郎「そだね。気に入ったのならチヨに1つあげようか?」
ちよ「えっ? チヨが貰って良いのですか?」
勘十郎「うん、まだまだたくさんあるし、チヨにあげる」
チヨはタオルが気に入ったみたいだしタオルってふわふわして気持ちいいんだよ。
僕も自分の部屋に1つ持っていこうかな。
ちよ「若様ありがとうございます」
勘十郎「うん。あっ、いま使ったソレじゃなくてまだ使ってない物の方が良いかな。よっと、はい、じゃあコレと交換です」
ちよ「そんな新しいのじゃなくて良いですよ」
勘十郎「人にあげる物だから新しい方がいいの、それはあとで洗っておくから置いておいていいよ」
ちよ「えっ? 若様が洗うのですか?」
このタオルが置いたあったラックの隣りにドラム式洗濯機が置いてあるから僕でも簡単に洗えそう、その上に乾燥機も乗っているからなにも問題ないよね。
勘十郎「僕もそのくらいできるよー」
ちよ「そうですか」
勘十郎「取り敢えず今使ったタオルはココに入れておきましょう」
ちよ「そのカゴはなんですか?」
勘十郎「たぶん洗い物を入れておく洗濯カゴなんじゃないかな」
ちよ「そんな物までこの部屋にはあるのですか」
勘十郎「そだね」
と言う訳で顔を拭いたタオルをそのカゴの中に入れました。
今は探検の途中なので洗うのは後回しです。
ちよ「この後ろの扉はなんですか?」
チヨが洗面所の後ろにあるドアを見ながらそう話しました。
勘十郎「それはなんとなく想像できるけど。それでは、おーぷん」
チヨが気になったその横にスライドさせるタイプのドアを開けました。




