16話
ちよ「若様そんな物を飲んで大丈夫なのですか?」
ココアを飲んでいる僕を見てチヨが心配そうにそう尋ねてきたよ。
勘十郎「うん、普通に美味しいよ。はい、残りはチヨが飲んで良いよ」
ちよ「ええーー、チヨも飲むのですか?」
勘十郎「えっ、チヨが喜ぶと思ってあげたのに、僕から貰った物じゃイヤなんだ……」
ちよ「えっ、それは……分かりました。飲みます飲みますよ」
急にしょんぼりとした僕を見てチヨが慌ててそう話しました。
勘十郎「……そう、チヨが気に入る味だと思うから全部飲んで良いよ」
ちよ「コレを全部って……くぅうう、それでは飲みますね。ごくん」
チヨがなんだか悲壮な顔をしてその目を閉じてココアの入ったペットボトルに口をつけるとコクリと一口飲んでみせました。
勘十郎「どう? どう? 美味しい?」
ちよ「えっ、コレは……こくり……ええーー! なんですかこの飲み物は!? とっても甘くて美味しいですよ!」
一口二口飲むとココアが美味しい物だと気付いたのかチヨがそう話したよ。
勘十郎「ね? チヨの好きな味でしょう?」
ちよ「あぁあ、ごくり……こんな飲み物があるなんて……ごくりごくり……チヨはこの部屋から出られなくなってしまいそうです……ごくごく……」
勘十郎「いや出れるから、普通にあの廊下を歩いて戻れば元の茶室に帰れるからいつでも出れるよ?」
ちよ「そうですけど……ごくり……チヨはズットここでこの飲み物を飲んで暮らしていたいです。ごくごく……」
勘十郎「そんなに甘いの物ばかり飲んでいたら虫歯になっちゃうからほどほどくらいにしておいた方が良いと思うよ?」
あんこのお団子も甘いけどココアも甘いから虫歯にならないようにソコだけは気をつけないとだよね。
ちよ「こんなに美味しい物が飲めるのなら虫歯の一つや二つチヨは気にしません」
勘十郎「それは虫歯になってから泣くパターンだから本当に程々にした方が良いと思うよ」
ちよ「若様は本当に凄い力を持っていらっしゃるのですね。ごくごく……」
勘十郎「えへん。僕はすごいのだ」
チヨに褒められ僕は少し得意になってそう答えました。
勘十郎「それはそれとして、僕もなにか飲もうかな。……うぅう、手が届かない」
勘十郎「チヨ1番上の段の左から3番目のボタンを押して」
ちよ「えっ、はい。ココを押せば良いのですか?」
ガコン。
ちよ「あらなにか下から音がして……ココから取れば良いのかしら? えっ、冷たい!」
さっき僕がしたのと同じようにチヨが下の受け取り口に手を入れるとチヨが驚いたようにそう話しました。
勘十郎「ソレはジュースだから冷たいの。よいしょっと」
思わず手を引っ込めてしまったチヨに代わって僕は出て来たジュースを取り出しました。
きゅぷん……ぐりぐり……。
勘十郎「ごくり……ぷはぁ〜〜。うん、コレは間違いなくファン◯オレンジだね。すごく美味しいな。ごくごく……」
久しぶりに飲むその味はとても美味しいモノでした。
ふふふ、コレでいつでもジュースが飲めるね♪
ちよ「若様が飲んでいるソレは何ですか?」
勘十郎「コレはオレンジ……じゃ伝わらないか、ミカンを搾ったジュースなの」
ちよ「あっ、蜜柑なのですか」
勘十郎「うん、チヨも飲んでみる?」
ちよ「いただいて良いのですか? それなら一口だけ……わわわ、なんですかコレ! 舌がビリビリしますよ」
勘十郎「あっ、コレには炭酸が入っているからシュワシュワするの」
ちよ「こんな変な飲み物を飲んで大丈夫なのですか?」
勘十郎「体に悪い物ではないし、僕は何度も飲んでいるから心配しなくて大丈夫だよ」
ちよ「……そうなのですか?」
勘十郎「うん、初めは驚くかも知れないけど何度も飲んでいるとこのシュワシュワが楽しくて普通に美味しいから気にならなくなるの」
ちよ「そうなのですか、天狗はこんな変わった飲み物を飲んでいるのかしら?」
術を教わっていた時にコレと同じ物を飲んだ事があるとか天狗の里にこの飲み物が出て来る自動販売機が置いてあって僕が使い方とかを知っていたのかと考えたのかチヨがそう話しました。
勘十郎「あっ、でもチヨもジュースを出せたって事はチヨも霊力を持っているんだね」
ちよ「そうなのですか?」
勘十郎「うん、霊力がないとジュースは出せないし、僕は他の人がどのくらいの霊力を持っているのか分かる力はないからチヨがどのくらいの霊力を持っているのかは分からないけど、霊力があるのは間違いないよ」
ちよ「そうなのですか。若様はどのくらいの霊力を持っているのですか?」
勘十郎「僕は34なの」
ちよ「34って随分ハッキリ分かるのですね」
勘十郎「うん、ステータス画面にそう書いてあるから34なの」
ちよ「……そうですか、でも34ってどのくらいの量なのかしら?」
数字だけ分かってもそれだけじゃ多いのか少ないのか判断できないよね。
勘十郎「ええと、おだんごなら34皿出せてこのジュースなら17本出せる量かな」
この自動販売機は350mlのペットボトルとか小さな物しか置いてないみたいだけど、1本出すのに霊力を2使うからそんなところかな。
ちよ「そうなのですか」
勘十郎「あっ、茶室を出すのにも霊力を使っているから実際に出せる数はもう少し少ないけど、そうなの」
ちよ「若様はそんなにお団子を出せるのですか!」
勘十郎「うん、あっ、お茶を飲むお湯を沸かすのにも霊力を1使うからおだんごだけなら、ええと20皿ちょっとかな」
霊力が0になったら気絶しちゃうから少し少なめに考えてそのくらいの数なら大丈夫でしょう。
ちよ「大丈夫です。チヨがいくらお団子が好きで20皿も食べられませんからそれだけ出せれば十分ですよ」
勘十郎「そんなに食べたら本当に虫歯になっちゃうよ。でもそうか、この自動販売機を使えばチヨがどのくらい霊力を持っているのか調べる事が出来るのか」
チヨも出せたって事はそうだよね。
ちよ「そんな事が分かるのですか?」
勘十郎「うん、この自動販売機は1つ飲み物を出すのに霊力を2使うみたいだから出せた数の2倍がだいたいチヨの持っている霊力の量になるの」
ちよ「そうなのですね。あら? でも霊力を使い切ったらどうなるのかしら?」
勘十郎「そうなったら気絶するの」
ちよ「気絶するのですか?」
勘十郎「うん、僕も初めの頃に霊力を使い切って気絶していたからそうなるんじゃないかな」
ちよ「あっ、そう言う事もありましたね」
勘十郎「気絶しても10分くらい休めば霊力が回復して動ける様になるからそんなに心配しなくて良いと思うけどね」
ちよ「そうですか。それならお団子の方で試させて貰って良いですか?」
勘十郎「いいけど、この自動販売機で試しても同じじゃない?」
ちよ「チヨにもお団子を出せるのなら若様に茶室さえ出して貰えば自由にいつでもお団子が食べられますし、若様もその方が楽ですよね」
勘十郎「そんなにおだんごばかり食べていたら虫歯になっちゃうよ」
ちよ「若様は虫歯の心配ばかりですね」
勘十郎「虫歯は痛いし治せないからダメー」
この時代には元の時代みたいな歯医者さんはないし歯の治療って虫歯になった歯を抜く事しかできないみたいだからそんなのは流石にいやです。
ちよ「確かに虫歯は痛いけどうがいをしたり歯を洗っていればそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
この時代にも一応歯ブラシの原型とも言える小枝の先を歯で噛んで先の部分を房状に細かく枝分かれさせた歯ブラシみたいな物はあるのだけど、元の世界の歯ブラシを知っている僕としてはイマイチなんだよね。
勘十郎「アレだと綺麗に洗えないの」
ちよ「それは若様が下手なだけだと思いますよ」
勘十郎「そんな事ないもの、僕が下手なんじゃなくてアレが変なんだもの」
ちよ「変と言われてもみんなそれを使っていますし、変と言う事はないと思いますよ」
勘十郎「だって変なんだもの」
元の世界で使っていた歯ブラシはココにはないから説明する事はできないけどアレってどう考えても変だよね。
他に歯を洗うモノはないから使ってはいるけど洗いづらいんだよね。
ちよ「うぅん、若様は天狗の里で違う歯木を見せて貰った事があるのかしら?」
歯木って言うのは木の歯ブラシの事をそう言うのだけど、もうチョットなんとかならないのかなー。
おだんごだけじゃなくてそう言うモノも作れたらみんなに喜んでもらえそうだけど、僕は茶室しか出せないから仕方ないのかな。
ちよ「ええと、この部屋にはアソコにも扉があるのですね。アソコから外に出られるのかしら?」
ちょっとご機嫌斜めになってしまった僕を見てチヨが話を変えてそう話してきました。
勘十郎「どうだろう? 行ってみようか」
ちよ「はい、若様」
うん、ココまで来たらココになにがあるか全部見ておいた方がいいよね。
この部屋には自動販売機以外にめぼしい物はないし移動する事にしましょう。
と言う訳で僕とチヨはそのドアの方へ進んで行きました。




