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おだんご太平記  作者: 東のマ王


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12/24

12話

土田御前「それはそれとして、ソチラのお皿のお団子もまた違う物みたいですね」

ちよ「はい、コレは胡麻ごまのお団子です」


 最後に残った皿を見て土田御前とチヨがそう話した。


土田御前「まあ、胡麻ごまを乗せたのですか」

信秀のぶひで「なんだ、胡麻ごまか」

ちよ「はい。コチラのお団子も美味しいですよ」

土田御前「そうですか。それではお前さま1ついただきましょう」

信秀のぶひで「むっ、まあ胡麻ごまなら食わんでも味はだいたい分かるし儂は遠慮しておこう」


土田御前「そうですか? せっかく勘十郎ちゃんが作ってくれたのにもったいない、それではチヨあなたが代わりに食べてあげなさい」

ちよ「えっ、チヨが食べて良いのですか?」

土田御前「ええ、残しても仕方ないですし食べて貰えると嬉しいわ」

ちよ「そう言う事なら遠慮なく、ぱくり……あぁあ、このお団子さっきも食べていたけど凄く美味しいです。ぱくぱく……」


 土田御前に食べて良いと言われてチヨは胡麻ごまの団子を一串取ると嬉しそうに胡麻ごまの団子を食べ始めた。


信秀のぶひで胡麻ごまくらいでそんなに喜ぶとは、チヨは変わっているのだな」

ちよ「若様のこのお団子は特別ですからいくらでも食べられそうです。ぱくぱく……」


 信秀のぶひでにそう言われたがチヨはニコニコとその顔をほころばせながらそのお団子を食べ続けた。


土田御前「それでは私もいただくといたしましょう。ぱくり……まあ! この胡麻ごまのお団子も凄く甘くて、美味しいわ」


 土田御前は一つその団子を食べ驚いたようにそう話した。


信秀のぶひで「なに? 胡麻ごまが甘いとかお前はなにを言っているのだ?」

土田御前「本当に甘くて美味しいですよ」

信秀のぶひで胡麻ごまが甘いとかそんな事がある訳なかろう」

土田御前「それならお前さまも1つ食べてみてはいかがですか?」

信秀のぶひで「儂をからかっているのか? まあソコまで言うのなら1つ食べてみるか」

土田御前「はい、どうぞ」

信秀のぶひで「うむ、それでは、ぱくり……なっ! 甘い! なんだコレは!?

なんで胡麻ごまがこんなに甘いのだ!」


 土田御前が食べていた串を信秀のぶひでの顔の辺りに差し出すとその串に刺さっていた団子を一玉食べ、信秀のぶひでは驚いてそう言葉を漏らした。


ちよ「若様のこの胡麻ごまのお団子にも砂糖を使っているそうですよ」

信秀のぶひで「なっ! 胡麻ごまにまで砂糖を使っているのか!」

土田御前「そうなの。それでこんなに甘い味がするのね」

ちよ「はい」

信秀のぶひで「いや、胡麻ごまに塩くらいはかけてあるのかと思っていたが砂糖だと……そんな話は聞いた事はないし勘十郎はいったいなにを考えて胡麻ごまに砂糖を混ぜたのだ」

土田御前「でもこの組み合わせも意外と合っていてとても美味しく作れていますよね」

信秀のぶひで「むむむっ、美味いと言えば確かに美味いが、たかだか団子にそんな高価な物を使うなどなんともったいない事をしているのだ」


 滅多に見る事のない貴重な砂糖を庶民のオヤツに使っているのだから信秀のはぶひではそんな気持ちを覚えてそう呟いた。


ちよ「若様は美味しい物が作れればソレで良いのではないですか?」

信秀のぶひで「いや、そうなのかもしれんが……」

土田御前「そうね。勘十郎ちゃんは変な欲とかがないからお砂糖とかお団子の材料が出て来る宝具を天狗がくれたのかもしれませんね」

信秀のぶひで「うぅむ、そうなのかのぉ」

土田御前「もしお砂糖だけを取り出せてお金がじゃんじゃん稼げたら家臣や領民達の事を気にかけたり考える事がなくなって遊んで暮らすようになってしまっても困りますし、それならコチラの方が良いのではないですか」

信秀のぶひで「うーむ、そう言う見方もあるのか……」


 親として勘十郎には家臣や領民達から尊敬される立派な武士になって欲しいと考えているのだ、ならば楽に金が稼げるのもあまり良い事ではないかと考え土田御前と信秀のぶひではそう話した。


土田御前「それにしても初めは小さいと思っていましたが、こうして食べているととても食べやすい大きさでこの小さい団子と言うのも悪くはないのかもしれませんね」

ちよ「一口で簡単に食べられますよね」

信秀のぶひで「むっ、儂としてはもっと大きな普通の団子の方が食いでがあって良いと思うが、確かに女子供であればこのくらいの大きさの方が食べやすいのかもしれないな」


ちよ「若様のお団子は確かに小さいですが、でもいつも一皿に3本乗っている物を出してくださるから量的には普通のお団子とそんなに変わらないと思いますよ」

信秀のぶひで「むっ、そう言われるとチヨが持って来た物は全て皿の上に3本団子が乗っていたが初めからそうだったのか」

ちよ「はい」

土田御前「一皿でちょうど良い量になっているのかしらね」


信秀のぶひで「うぅむ、いやそもそもコレは本当に勘十郎が作った物なのか?」

土田御前「お前さまそれはどう言う事ですか?」

信秀のぶひで「いや、あまりにも上手く出来過ぎていると言うか、確かに勘十郎があの小箱の中からこんな物を取り出している姿を見ていたが、元々あの箱の中にこの団子が入っていてソレを取り出しているだけなのではないか?」

土田御前「そう言われると、確かにそんな気もしますね」


 いままでなにかの料理を一人で作った事などなかった勘十郎が一人で作ったと言うのもなにかオカシナ気がして信秀のぶひでと土田御前はそう話した。


ちよ「それはないと思いますよ」

信秀のぶひで「んっ? なぜチヨはないと言えるのだ?」

ちよ「私も初めの頃はお殿さまみたいな事を考えていたのですが、でもソレは違ったと言うかこのお団子は時間が経つと固くなるのです」

信秀のぶひで「なに? 固くなるだと?」


ちよ「はい、前に若様が二人では食べきれないほどお団子を作ってくれた事があったのですが、もったいないので貰って帰って夜に改めて食べてみたらお団子が少し固くなっていて上に乗っているあんことかも少しかわばったりしていましたから、コレはチャント若様がその場で作った物だと思います」


土田御前「あら、そう言われると上にかかっている物にばかりに気を取られていましたが、このお団子の方も今まで食べた事がないほど柔らかくて歯がいらないほど柔らかく作れていますね」

ちよ「はい、でも時間が経つとやっぱり固くなってしまうみたいで、それでも火で少しあぶったりすれば美味しくいただけるのですが、もしあの箱の中に初めから入っていたのなら初めから固くなった物が出て来る筈ですからあの場で作っているのだと思います」


土田御前「そうなの」

ちよ「はい、それに出来たては熱いと言うほどではありませんが、ほんのりと温かったりもしますから間違いなく若様が作った物だと思いますよ」


信秀のぶひで「むっ、確かにそう言われると他の団子より柔らかいな。一体どうやってこんな物を作っているのだ?」

ちよ「若様の話では配合を変えて柔らかくなるように作ってあるそうです」

土田御前「まあ、たまたまこうなった訳ではなくてこうなるように作っているのですか?」

ちよ「そうだと思いますよ。一番初めに食べさせて貰った時からこんな感じでしたから、こうなるように作っているのだと思います」

土田御前「そうなのね。そんな所にまでっているなんて勘十郎ちゃんはおだんご屋さんにでもなるつもりなのかしら?」

ちよ「それはないと思いますよ。剣術とか書道の勉強もしっかり励んでいらっしゃいますし、オヤツを自分で作るくらいの感覚なのではないでしょうか」

土田御前「そう、それなら問題はないのかしら」


 あまり団子作りにばかり精を出されても困るがそれなら構わないかと考え土田御前がそう話した。


信秀のぶひで「うぅむ、しかしコレは本当に団子なのか?」

土田御前「お前さまそれはどう言う事ですか?」

信秀のぶひで「いや、団子に見えるがそれはまやかしで実は葉っぱとかそんな物を団子だと思わされいるだけなのではないかと思ってな」

土田御前「タヌキではないのですからそんな事はないと思いますよ?」

信秀のぶひで「いや分からんぞ。そもそも天狗と言うのもアヤシイしタヌキが天狗に化けて、勘十郎に天狗と偽って変な術を教えていたのかも知れんだろう」

土田御前「お前さまそれは疑いすぎだと思いますよ」

ちよ「チヨはこんなに美味しい物なら葉っぱでも構いませんけどね」


信秀のぶひで「そうはいかんだろう。もしコレが葉っぱとかオカシナ物であったら腹を壊したり身体がオカシクなるかもしれん。やはり食べるのをやめさせた方が良いのではないか?」

土田御前「やめさせると言っても本当に勘十郎ちゃんが作ったお団子だったらやめさせるのはもったいない気もしますし、術を教えてくれたりその宝具を与えてくれた天狗にも失礼になるのではないですか?」

信秀のぶひで「むむむ、そうではあるが確かめる事は必要であろう」


土田御前「確かめるって、どうやって確かめるのですか?」

信秀のぶひで「そうだな。うーむ、そうだ。この団子を暫くこのまま放っておけば術が解けて葉っぱに戻るかも知れん。そうすればコレがまやかしかどうか分かるのではないか」

土田御前「あっ、そうですね。そのくらいなら天狗の機嫌をそこねる事もないでしょうし、良い考えかも知れませんね」

信秀のぶひで「うむ、ならばこの団子は食わずにこのままどこか目に付く場所に置いておく事にしよう」

土田御前「はい、お前さま」


 親として確認しておくべき事は確認しておいた方が良いと考え信秀のぶひでと土田御前はそう話した。


ちよ「あっ、このお皿はどうしますか?」

信秀のぶひで「んっ? 皿がどうしたのだ?」

ちよ「このお皿も若様が法術で作られた物ですから確かめるのならこのお皿も一緒に確かめておいた方が良いのかなと思いまして」

信秀のぶひで「なに? その皿も勘十郎が作った物なのか?」

ちよ「はい。お茶を飲むお茶碗の方はあの箱の中に沢山入っていると若様が話していましたが、このお皿がドコカに入っていると言う話は一度も聞いた事がないのでたぶんお団子と一緒にこのお皿も作っているのだと思います」

土田御前「まあ勘十郎ちゃんはお皿まで作っているのですか」

ちよ「はい、若様の部屋に置いていても仕方ないので一応片付けてはいますが、初日からなのでけっこうな数がたまってどうしようかと思っていたところなのです」

土田御前「そうなの、お皿なら普通に使っても良いような気がしますが、お前さまどうしますか?」

信秀のぶひで「いや、その皿もこの団子と一緒にココに置いてどれか一つでも葉っぱに変わったりなにか変化があれば即座に団子作りをやめさせる。そう言う事にいたそう」

土田御前「そうですか。それではチヨ手間をかけますがそのお皿を後でココに運んで来て貰えますか?」

ちよ「かしこまりました」


 話を纏め土田御前がそうチヨに話した。


土田御前「お前さま今日のところはこのくらいですか?」

信秀のぶひで「そうだな。暫く様子を見てそれから先の事は考える事にしよう」

土田御前「分かりました。チヨご苦労でしたね。これからもなにか変わった事があったら知らせてくださいね」

ちよ「かしこまりました」

信秀のぶひで「それとチヨこの事はけっして他の者に話してはならんぞ」

ちよ「はい」

信秀のぶひで「天狗に術を教わったのなら武士としてほまれになるが、キツネつきとか変な噂になっても困るし軽々しく誰かに話すでないぞ?」

ちよ「かしこまりました」


 こうして勘十郎の知らないところで始まった密会は静かに幕を閉じるのだった。

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