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第八十八話 土星

〖はぁっ……ぁああ……!〗


 全身が火に包まれたぬらりひょんは痛みに転げ回って悶え苦しんだ。


〖コ……『黄泉の霊気(コールド・ブレス)』!!〗


 ぬらりひょんが必死にそう唱えると、ぬらりひょんの口からは一筋の冷気が出てきて、体全体の焔を一瞬にして消火した。


〖許さぬ……『ぬらり』!!〗


 ぬらりひょんはそう叫ぶと、またもや姿をくらました。だが、圭太は為す術がない……訳でもなかった。


「焔はまだ出せる!!」


 分からないなら、分かるまで攻撃すればいい。圭太は辺り一帯に焔を吐いて、自分の周りを囲うように一周させた。

 だが、それでもぬらりひょんの姿が現れることはなかった。困惑している最中(さなか)、凜奈は叫んだ。


「耳を塞いで!」


 瞬間、凜奈は大きく息を吸い込んで『|終わらない日曜日《Gloomy Sunday》』を演奏した。すると、圭太の上空から、顔面蒼白のぬらりひょんが落ちてきた。


「上から狙ってきていたのか……!」

「精神攻撃なら妖怪にも通用するわよね。」


 ぬらりひょんは元々色白な顔だったが、更に絶望で顔を青白くしていた。喉元を押さえて、呼吸困難になっているようだった。


「ぬらりひょんさん、土星(サタン)のこと教えてくれたらこの術解いてあげるわ。」


 凜奈が甘い声でそう言うと、ぬらりひょんは必死の形相で、ヘッドバンキングのように首を縦にブンブン振った。



〖全く……なんて奴らだ。異世界警察だと言うのに。〗

「のろのろ話してる暇はない!早く答えろ。」


 周りでは死人が出るくらいに争いが激化していっている。話を聞くために近くの部屋に入ったが、外の廊下ではざわめきがどんどん広がっていき、パーカーのボタンからの連絡も、どんどん騒がしくなってきた。


〖ワシの能力は、発動後半径2m以上離れている人間には見られなくなるというもの。ただし、半径10m以上離れていると逆に見えるようになってしまう。〗

「そんな事聞いてねぇよ!早くしろ!」

〖まぁ、落ち着け。ワシはこの能力を土星(サタン)様に授かった。その意味が分かるか。〗


 圭太は困惑して首を傾げた。ぬらりひょんは勿体ぶるようにゆっくりと言った。


〖餓者髑髏は犠牲者の魔法、魔力を取り入れることが出来るのじゃ。そしてそれを受け渡すことも出来る。〗

「それがどうした。」

〖星の神も同じように力を与える。そしてその力を得たのが十星。つまり、土星(サタン)は“最も神に近い存在”とも言えるのじゃ。〗


 ぬらりひょんはそう言うと、もう一度不気味な笑みを浮かべた。そして、もう一つ重大なことを言った。


〖十星の中に……()()()()がおる。〗

「それは誰なんだ……!?」

〖それは……〗


 そう口にしかけた瞬間、ぬらりひょんは意識を失った。圭太は驚き、何があったのかとぬらりひょんの体を揺らして起こそうとした。だが、全く動く気配はなく、まるで蝋人形のように固まってしまったようだった。


〖お命頂戴。〗


 その声は低く、圭太と凜奈の鼓膜の中で響いた。

 扉はいつの間にか開かれていて、数メートル先は暗闇で見えないような状態になっていた。だが、目の前の怪物の姿はきちんと目に映った。


挿絵(By みてみん)


土星(サタン)!!」

〖菊池……圭太。〗


 よく見ると、顔に皮か何かを被っているようで、その隙間から見える眼光が心臓の奥の奥を覗いてくるようだった。

 異世界警察の兵がその姿に気がついて、一心不乱に突撃してきた。勝てると思ったのか、それとも手柄を上げようとでも思ったのか。弾丸を土星(サタン)の肉体に撃ち込んだが、その玉は簡単に弾かれてしまった。

 土星(サタン)は首を引っ込めて、部屋の外の兵を、目を大きく開いて睨んだ。


〖お前の魂は不味そうだ。〗


 土星(サタン)の眼光に恐れて、過呼吸になっているのに、兵は恐怖で体が固まってしまったせいで、目を逸らすことすら出来ず、泡を吹いてその場で気絶した。


「馬鹿っ……!!」


 このままでは妖力と魔力に晒され続け、肉体が持たずに死んでしまう。凜奈は走っていくと、兵を抱えて助けた。

 土星(サタン)はゆっくりと首を動かすと、凜奈の姿を見た。


「お前の敵はこっちだ!」


 圭太は手にナイフを突き刺すと、手から『破壊の焔』を発火させて、土星(サタン)に殴りかかった……が、その体はビクともせず、土星(サタン)は涼しそうな顔をしていた。


滄海一粟(そうかいいちぞく)とは何か分かるか。〗


 そう言うと、土星(サタン)はむき出しの全身の骨を捻って、頭を圭太の目の前に動かした。


お前の攻撃(それ)のことだ。〗


 瞬間、土星(サタン)は口を大きく開いて、圭太の体から魂を吸い込んでいった。凜奈は「お兄ちゃん!」と叫んで助けに行こうとしたが、背後から何者かに手を掴まれて動けなかった。


〖食事中じゃ。〗


 ぬらりひょんはそう言うと、刀で凜奈の腰の辺りの腹を突き刺した。


「っ……!!」


 圭太はその間も土星(サタン)、いや、餓者髑髏の食事によってみるみる魂が減っていき、生気も魔力も薄くなっていった。ぬらりひょんは凜奈の頭を地面に押し付けて身動きを取れないようにして、首元に刀を向けた。


「お兄ちゃん!!」


 そう叫ぶと同時に、凜奈の横を何かが通過した。

 次の瞬間、ぬらりひょんの眉より上は、真っ二つに切れて、その場に倒れて死んでしまった。同時に土星(サタン)も頭部を少し掠められた。数秒違えば土星(サタン)の頭も真っ二つになっていただろう。


〖愛野蒼……!?何が起こった……〗


 土星(サタン)が困惑している間にも、休む暇もなく蒼は刀を振るって、土星(サタン)の腕を真っ二つにした。


「戦争です。相手を殺すことだけ考えてください。」


 蒼は圭太と凜奈、そして土星(サタン)に対してもそう言った。妖怪すら手も足も出ない、それが怪物である。


第八十八話 終

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