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第八十七話 ぬらりひょん

 圭太が窓から見える景色を確認すると、仝々が巨大化して金星(ヴィーナス)と戦闘している最中だった。


「凜奈、いつ十星に会うか分からない。警戒して、会ったら直ぐに全員に報告するんだぞ。」

「分かってるわ、お兄ちゃん。」


 凜奈はそう言うと、向かってくる兵に恐れず、横笛を取り出した。


「『|終わらない日曜日《Gloomy Sunday》』」


 そう言うと、凜奈は横笛に息を吹き込んだ。演奏を始めた瞬間、圭太は耳を塞いだ。

 笛から流れてきたのは、低く暗い音。音を聞いた敵兵は、過呼吸になると、両手で首を押さえてその場に倒れていった。


「放送禁止にもなった、自殺の歌。聞けば自殺すると言われてるわ……まぁ、聞こえてないわよね。」


 兵は全員気を失っていた。あくまで凜奈の術なので、自殺に至ることはないが、聞けば呼吸困難になり、意識を失ってしまう。

 そのまま突き進んでいくと、圭太が角を曲がったとき、誰かにぶつかった。

 不用心を反省しつつも、魔法を構えた……が、その者の外見に思わず圭太は衝撃を受けてしまった。着物で腰に刀を携えている。だが、身長は一メートル程度で、その三分の一くらいが頭部である。

 巨大な頭部には毛はなく、後頭部は肥大化している。


「な……なんなんだこいつ……」

「お兄ちゃん!下がって!」


 凜奈がそう叫んだ時にはもう遅く、何者かが抜いた刀で圭太は胸元を切りつけられていた。辺りが戦いで騒々しい中、そこだけ音が聞こえなく、静まり返っているようだった。

 圭太は痛みと衝撃でその場に倒れてしまった。


「そいつはぬらりひょん……土星(サタン)の部下!!」


 ぬらりひょんは刀の血を振り払って鞘に収めた。小さく圧縮されたかのような顔をクシャッと歪めると、気味の悪い笑みを浮かべて凜奈を見た。


〖若い魂が好きじゃ。〗


 圭太は『再生の焔』で傷口を塞ぐと、ぬらりひょんの顔面を蹴りつけた。ぬらりひょんが倒れそうになった隙に、圭太は『破壊の焔』でぬらりひょんを火だるまにした。


「凜奈には指一本触れさせない!!」

〖何故触れられる……〗


 ぬらりひょんは刀を抜くと、体にまとわりつくような『破壊の焔』を振り払った。

 普通妖怪には触れられないはず。ぬらりひょんが困惑していると、圭太の手首に巻かれているハチマキに気づいた。


〖そのハチマキ、どこで拾った……〗

「これ?悠が捨てたものだ。要らないらしいから貰っておいた。」


 そう、それは山本五郎左衛門のハチマキ。これがあれば妖怪に触れることも可能だ。以前、V-ENOMが戦った際に分かったことだが、土星(サタン)は普通に触れることが可能。だが、ぬらりひょんなどが相手になればこのハチマキも有効になる。


〖ふざけたことを……〗


 ぬらりひょんは表情を崩さず、奇妙な笑みのままだったが、その言葉には激しい怒りが込められていた。

 ぬらりひょんは刀を抜くと、近づいてきた異世界警察側の兵を簡単に切り捨てた。圭太はその動きを目で追って、勢いをつけて殴りかかったが、ぬらりひょんはその小さな体を活かして身軽に躱した。


〖『ぬらり』〗


 ぬらりひょんがそう唱えると、圭太の視界からはぬらりひょんが消えてしまった。圭太は辺りを見渡してその姿を確認しようとした。兵に紛れているのか、凜奈も一緒に探したが、全く見つからない。


〖『ひょん』〗


 圭太の耳にその言葉が届いた瞬間、目の前には突然ぬらりひょんの姿が現れ、圭太は頭を切断されそうになった。

 間一髪、通りかかったV-ENOMが圭太を抱えて助けたことで髪を少し掠めた程度で済んだ。


「ENOMさんっ……!ありがとうございます!」

「どうしたんだ、お前らしくない。慎重に動け。このジジイ、ずっと()()()()()()じゃねぇか。」


 圭太は思わず仰天して目を見開いてしまった。圭太の目には、ぬらりひょんは姿を消して、突然現れたようにしか見えなかった。


「それじゃあ、私も誰かと戦わなきゃだから!」


 V-ENOMはそう言うと、抱えている圭太を下ろした。


『圭太と凜奈が裏口付近で土星(サタン)の部下のぬらりひょんと戦闘中だ。』


 V-ENOMはボタンを押してそう報告すると走っていった。圭太はその間も考え続けていた。

 きっとぬらりひょんの魔法だろう。『ぬらり』の合図で姿が見えなくなり、『ひょん』の合図で見えるようになる。

 だが引っかかるのは2つ。なぜ圭太は見えなくてV-ENOMには見えるのか、そしてなぜ姿が見えないまま圭太を切らなかったのか。


「悪いけどな、俺は土星(サタン)と戦うんだ。お前に躓いてる暇はないんだよ!」

〖なら無理にでも退かしてみよ。〗


 すると、圭太は口を開いて、歯を一本豪快に抜いた。ぬらりひょんが驚いて度肝を抜かしていたが、圭太は全く動じなかった。


「痛みなんざ慣れてるんだよ。」


 瞬間、圭太の歯の傷口からは真っ赤に染まった焔が吹き出した。ぬらりひょんは驚いて避けようとしたが、勢いに対応しきれず、そのまま全身焼ききれてしまった。


「ラウンド2だ、ハゲオヤジ。」


第八十七話 終

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