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第八十四話 静けさ

『登場人物』


【朝霧 悠】

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

 『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。ランクは『IV』。全盛期は『XI』。

【ココロ・シンリー】

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。ランクは『I』。

【魔王】

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格だったが、突然の十星の加入によって人が変わったようになった。ランクは『I』。

【キル・アストラ】

 自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。ランクは『V』。

【菊池圭太】

 第壱区の警官。オッドアイで、右目だけ赤い。

 DAGに所属している。ランクは『VI』。

【愛野蒼】

 単純な戦闘力だけなら悠を凌駕するほどの実力者。十星からの指示で異世界警察に帰るのを禁止されていた。ランクは『Ⅶ』。

 結局、朝起きた時には全員にパーカーが置き手紙と共に支給されていた。


『十星にこちらの顔を判別されないようにフードを被ってください  研究班』


 パーカーは丈夫で、引っ張っても伸びてちぎれず、切れることもなかった。トレーニングルームの防護スーツを改良して作ったらしい。


「柔軟性もある。戦闘には丁度いいな。」

「おい慎一、このボタンなんだ?」


 V-ENOMは慎一にスーツを見せてそう言った。悠も確認すると、全員のスーツの腕にボタンがひとつ設置されていた。


「ボタンを押しながら話すと、他のメンバーに連絡を取れるらしい。ボタンを回せば音量も変えられる。」


 それを聞くと、V-ENOMはボタンを押しながら「ああー」と言おうとした。だが、慎一に止めれた。


「特別警官とMBUの声だけが異世界警察の警官全員に伝わる。緊急を要する時に使え。」


 V-ENOMは拗ねたのか、ため息をついた。


「あのー……悠様。」


 悠の背後から女性の声が聞こえてきた。振り返るとそこにはココの姿があった。


「どうしたココロ・シンリー。」

「出動要請が出てて……数時間後に向かえとの指示でした。」

「スーツを試すいい機会だ。」


 そういうと、悠はスーツを着て、フードを被った。ココは用事があるようでどこかへ居なくなってしまった。


────────────────────────


 ココロ・シンリーは、10歳の時に親に捨てられた。金銭的余裕の無さからだった。

 そんなココを拾ったのは悠だった。悠に拾われたココは異世界警官となり、そこから順調に昇格していき、悠と同じ役職にまで昇りつめた。


「ココロ。」


 廊下を歩いているココに何者かが話しかけてきた。弱々しく、力のこもらない声だった。

 振り返ると、そこには4、50代くらいの見た目のおじさんが立っていた。眼鏡をかけていて、ココのことを見つめている。


「お父さん……」


 8年ぶりの再会、だがココは感激も衝撃もなかった。だが、父親は「本当にココロなのか!?ココロなんだな!!」と涙を流して感動していた。


「ココロ……!!本当にすまない……俺もあんなこと……したくなかった!!」

「うん……」


 抱きついてきた父親を突き飛ばすことも出来ず、ココは何となくそう返した。感じたのは、感動でも怒りでもなく、ただ悲しみと呆れだった。


「何今更……」


 ココがボソッとそういうと、父親は聞こえていなかったようで「ん?」と聞き返してきた。感動して満面の笑みな父親に何も言うことができず、ココはそのままその場を去ってしまった。


────────────────────────


「ココロ・シンリー、行くぞ。」


 数時間が経ち、出動要請が正式に出た。ココはフードを被り、静かに悠についていった。まだ頭の中に父親のことが残っていたのだ。悠は何かがあったのだろうと察した。


「明日は十星と決戦だ。安心しろ、きっとなんとかなる。」


 根拠も無いような言葉だったが、ココはそう言われて元気が出たようだ。少し元気を出してインターホンのワープ場所についた。

 悠はインターホンを少しいじって操作すると、出動要請が出た世界を選択して、ココに手を差し伸べた。


「行くぞ。」


 ココはアワアワして、顔を真っ赤にして押さえた。悠は困惑して首をかしげていて、遠くから見ていたアストラと凜奈は笑いを堪えるのに必死だった。


「は……はい!」


 ココが照れながら手を取ると、悠は移動のボタンを押してワープした。2人がワープするとアストラと凜奈は我慢出来ずに腹を抱えて大笑いした。

 厳格なアタスマの隣にいた慎一も堪えられずにブッと吹き出してしまった。


────────────────────────


 ワープした先は文明が発展していて、高層ビルが並んでいた。道路を走る車は、子供でも名前を知ってるほどの高級車ばかり。


「───い!───い!おーい!」


 遠くから走ってきたオープンカーに乗る男は、そう言いながら手を振っていた。金髪にサンカグラス、そしてピチピチの黒のロンティで筋肉が見えた。

 近くに来ると、車を止めて男は少しサングラスを下ろした。


「兄ちゃんと姉ちゃん、異世界警察じゃねぇの?車乗ってく?」

「ん、いいのか。」

「いいよいいよ。この世界のことも教えてやるよ。」


 悠とココは後ろの席に乗ると、男は背もたれに片腕を乗せてくつろぎ始めた。すると、ハンドルを持たずとも自動で車は動き始めた。


「まずこの世界なんだけど、『理』の異常が、“価値”なんだよな。正式には、資源がこの世界には大量にあるんだよ。だから全ての資源の価値が少なくて、こういう車も一人5台くらいは持ってる。」

「そういう事だったのか。」

「俺の家に着いたらこの車やるよ。なーに、気にしなくていい。数万で買える。壊したって別にいい。」


 悠は不思議な気持ちになったが、一応感謝しておいた。その時、研究班と繋がっている携帯電話が鳴った。

 悠は「悪い」と言って電話に出た。


「こちら朝霧悠だ。」

『研究班のサトウです。先程わかった事なのですが、そちらの世界、ビーストが存在しないようです。』

「つまり、純世界ということか。」

『はい。』

「了解だ。」


 悠は電話を切った。ココにも同様の事を伝えると驚いていたが、まだ帰るつもりはなかった。もう少しだけゆっくりして行くとしよう。なんせ明日は決戦。少しくらいくつろぐとしよう。


第八十四話 終

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