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第八十三話 嵐の前

「悠様、調べたらやはり出てきました。」


 起きた悠は慎一に指示して、蒼の過去について詳しく調べさせた。『狂心症』の影響で、異世界警察では十星に帰らせて貰えなかった。では、それ以前は。

 慎一に渡された書類を確認すると、蒼の出身まで詳細に記載されていた。


「JAPAN 青森県の外れの田舎か……父親、愛野タダシは別居、母親、杉浦ヨネコは不審死。犯人は不明の他殺。母方の祖父、杉浦シンも同様に犯人不明の他殺。これは狂心症の犠牲と考えるしか無いな……」


 ヨネコは深夜に二階の寝室にて死亡が確認された。容疑者は当時小学一年生の愛野蒼。ヨネコと共に二階で寝ていた。

 田舎だったこと、そして子供には不可能だろうと思われ、深く調査されずに終わってしまった。が、祖父のシンは犯人が蒼であると知っていた。


「狂心症になる条件は調べられたか?」

「調べましたが、やはり未解明との事です。数個可能性のある物は発見でき、それがこの書類です。」


 ファイルから慎一が出した書類には、狂心症についての論文が事細かに、詳しく記されていた。

 マーカーの引かれた部分を確認すると、ひとつだけ興味深いものがあった。


『……以下のことから、狂心症になる条件は2つと考えられる。1つは心理的な大きいショックを受けた時。もう1つは“狂心症を発症した時の記憶に強く結びつくもの”。』


 悠は先程の書類に記入されていた事を確認した。蒼の祖父、シンの死因は頭部の強打。蒼が狂心症を発症した原因は、ロスに頭部を殴られたこと。


「この文面、可能性が高いな。蒼の話とも合致している。」

「愛野蒼……想像以上に危ない人間ですね。」


 そんな話をしている最中、ココがパーカーを着て出てきた。いつも警察服を着ているココらしくなく、悠は聞いた。


「なんだそのパーカー。」

「あ、十星と戦う際に、姿を隠す為に全員このパーカーで、フードを被るそうです。支給されませんでしたか?」


 悠は慎一に確認しようと、慎一の顔を見たが慎一も知らないようで首を横に振った。


「多分明日には渡されますよ。決戦はもう明後日ですし。」


 そう、十星に襲撃しに行くのは明後日。ココはトレーニングルームに特訓に行った。

 悠も身体を慣れさせる為に外に出て軽く運動することにした。


「化け物じみた力に……私は勝利していない……!!」


 悠は怒りに顔を歪めてそう言った。叢雲を抜くと、悠は振り下ろして素振りをした。ただ1度刀を振り下ろしただけで、辺りの風は方向を帰るように暴風となり、異世界警察署本部は少し揺れた。


「待てよ悠。」


 まるで狂ったかのように素振りを続けようとする悠の間に、その男は入った。


「菊池圭太。」

「周りに被害が出る。トレーニングルームに行こう。」


 悠は圭太の言う通り、トレーニングルームに向かった。先客のココがいたが、すぐに帰ってしまったので影響なかった。悠はそこにかかっている防護スーツを圭太に投げた。


「一人分しかないんだろ?お前が着ろよ。」


 圭太は悠の全力を引き出したく、そう挑発した。そう言われた悠も当然、黙っておらず、叢雲を抜いた。


「吠えろ。恐怖で日差しすら浴びれない身体にしてやろう。」


 悠はそう言うと、叢雲を振りかぶって圭太に向かっていった。圭太は魔法を放つような構えをしたが、悠は叢雲を振りかぶったまま振りかざすことなく、圭太の目の前まで近づいてきた。

 圭太は困惑して動くことが出来ず、一瞬隙を見せてしまった。その間に、悠は圭太に防護スーツを着せ、もう一度圭太と向き合った。


「素直に着ておけ。決戦前だ。」

「チッ。」


 圭太は不服そうに舌打ちすると、手から焰を出して、魔法を構えた。悠も叢雲を圭太に向けた。

 先に動き出したのは圭太。1歩目を出すと、そのまま走って悠に向かった。悠は完全に守りに入って、叢雲を少し傾けて持った。

 圭太は悠の頭部を狙って蹴りをしようとしたが、悠は簡単に叢雲で防ごうとした。だが、圭太は足を下げると、すぐに手を悠の腹に当てた。


「『破壊の……』」

「『太陽(フレア)』」


 圭太は焔を放とうとしたが、悠が先に『 太陽(フレア)』を使用したことで、圭太は火だるまになった。防護スーツの特殊な魔法で痛みはなかった。


「相手にならん。腕を磨き直してこい。」


 悠はそういうと叢雲を鞘に収めた。圭太はその場に仰向けに倒れて、腕で目を押さえた。


「くそ……」


 冷静になったようで、悠も隣に座った。


「蒼は強いし……悠も……ライアさんもアストラも慎一さんもENOMさんも……!皆強いのに……俺は……凜奈を守れない……!!」


 圭太は顔を見せずにそう言ったが、涙を流していることは分かった。悠は「そんなことか」と内心思い、ため息をついて言った。


「仲間だったウルグ・ハースも、シガール・オウマも居なくなって、一番弱かったココロ・シンリーは挫けたか。」


 悠は圭太の目を見て言った。圭太は泣いて目が腫れていた。


「お前よりも弱い者もいる。お前よりも強い者もいる。人は弱い者を守る時、真に強くなる。お前は強くなれるし、誰かを強くしている。」


 悠は立ち上がると、何も言わずにトレーニングルームから出ていってしまった。

 悠はマスタールームのカレンダーをめくった。決戦まであと2日。


第八十三話 終

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