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第八十二話 決戦は日曜日

少しグロい描写あるので苦手な方は見ない方が良いです。

 息を飲んだ。同時に時間は止まった。

 バーナは、悠に「蒼に触れろ」と命令され、探しに行ったフリでもして逃亡しようとしていた。

 静かに、小屋の壁から顔を出した。だが、出会ってしまった。目は血走り、暗闇の中で光る蒼に。


「ぁ……あ……来ないで……」


 バーナは抵抗すら出来ず、目に涙を浮かべた。蒼は血走って見開いた目で、バーナの表情をジッと見つめた。


《嗚呼。》


 バーナが聞いた音はそれが最後だった。蒼のその声を聞いた瞬間、腹部に痛みが広がった。小屋の後ろで声を殺して隠れていた悠が見た景色は、真っ赤だった。

 バーナは蒼に腹を突かれて、吐血してその場に倒れた。蒼は足の部分に馬乗りになると、その手で腹の中に手を突っ込んだ。

 蒼はこの光景が現実だと思えなかった。蒼は突っ込んだ手で、真っ赤な血に染まっている(はらわた)を穴からズボズボと抜き出した。悠はそのあまりにもショッキングな光景に、顔を顰めた。数百年、いやそれ以上異世界警察としてパトロールしていた悠ですら見ていられなかった。自分の肉体と合わせて考えてしまい、気分が悪くなり、食べ物が口から出てきそうになった。

 音を立てて、吐瀉物を吐けば殺される。悠は必死に口を押さえて、声を出さないようにした。


 蒼はご馳走に欲を抑えられなかった。口に運ぶ。その度に腹が膨れていった。それでも湧き出す欲は止まらなかった。

 服で口を拭うと、蒼は夜空の月を血走った目で見つめた。


《嗚呼。》


 またそう一度言うと、蒼はバーナの頭を握りつぶす程の力で掴んで、森に捨てた。先程裏切られたバーナであっても、ここまでの始末に悠は気分が悪くなった。


「私は……生憎異世界警察なんだ……」


 悠はそう言った。蒼は獲物に気がついて、瞳孔を開いて座り込む悠を見た。悠は、叢雲を支えにして、フラフラな身体を無理やり立たせた。


「勝てない相手だとしても……勝てない相手()()()()()立ち上がらなければならない。」


 蒼の耳にその言葉は届かなかった。蒼は手に付着したバーナの血で、髪を濡らしてかきあげた。


「叢雲、力を振り絞れ。」


 そう言うと、悠は叢雲を抜いた。


『〆桜』


 蒼は地面を蹴って、悠に向かっていった。悠は腹に攻撃が触れる寸前に叢雲で防いだ。


「【私は……朝霧悠は死なない!!】」


 悠は蒼よりも目を血走らせて刀を振り下ろした。蒼は腕を切りつけられ、動揺したのかよろけて転んだ。切断はされなかったが、かなり深く切りつけられた。

 確実に心臓を切りつけたと思った。だが、蒼の動きはあまりにも速い。普通の人間なら、自制心や判断を優先し迷いが生まれる。だが、今の蒼は完全に本能だけで動いている。


《嗚呼。》


 蒼は口を開くと、地面に手を触れた。悠は熟練の勘いや、本能的に察した。

 魔法を使用するつもりだ──────


《『兵器の炎』》


 地面の草は燃え盛り、まるで踊り狂うようだった。火は勢いを止めることを知らず、小屋と別荘、そして森にまで引火し、数秒もしないうちに当たりは炎に包まれた。


「本能で動く獣が兵器などと……笑わせてくれる。」


 悠は挑発したが、当然蒼は意味を理解していなかった。叢雲を傾けると、悠は蒼の喉元を狙って、突くようにした。だが、蒼は頭をスッと動かすと、攻撃を軽く避け、悠の腹部を狙った。

 手のひらで腹をグッと押し込むように叩くと、悠は先程堪えた吐瀉物を吐いてしまい、数秒隙が出来てしまった。蒼は見逃さず、その隙に腕を掴んで、膝を駆使して骨を折った。


「っ……う……」


 悠は痛みに堪えることなど容易く、右足で踏み込むと、左足で蒼の頭部に蹴りを入れた。蹴りが直撃した蒼は吹き飛ばされて倒れた。

 そういえば、狂心症の症状が発症したのも頭部に攻撃された時だった。それがトリガーだとすれば。悠は淡い少しの希望に願った。


《嗚呼。》


 蒼は無情にそう言った。蒼は頭の血に触れると、目を見開いて驚愕していた。血がそんなに怖いのか、突然ありえない。

 だが、蒼は何かに恐怖するようにその場に膝をつくと、空を見上げて、口を大きく開いた。


《おじいちゃん……》


 蒼の声ではない。狂心症で狂った低い声。だが、その言葉が蒼のものであることは確実だった。自我を取り戻しかけた蒼は、その場に倒れて気絶した。


「やっと……か。」


 悠は『〆桜』を解除すると、炎が鎮火された草むらの上に仰向けで大の字に寝転がった。全身が泥と血で汚れていた。


「やっと……だ……!」


 悠は疲労でそのまま眠ってしまった。夜中、心配になって見に来た凜奈は状況を見て、全てを察した訳では無いが、とりあえず蒼と悠を回収して帰った。バーナの遺体は無惨な状態で、最早人としての形すら留めていなかったので、弔いとしてそこに埋めて追悼した。

 相当疲弊していた2人は次の日一日、ぐっすり眠ったままだった。最早“例のアレ”など忘れて。


「決戦は日曜日。十星と決着をつける……!!」


第八十二話 終

バーナが死ぬ描写、書いてて気持ち悪くなりました笑

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