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第七十七話 アンラッキー

『登場人物』


【朝霧 悠】

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

 『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。ランクは『IV』。全盛期は『XI』。

【ウルグ・ハース】

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。突然、ENDの組織に加入。ランクは『II』。

【ココロ・シンリー】

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。ランクは『I』。

【魔王】

 悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格だったが、突然の十星の加入によって人が変わったようになった。ランクは『I』。

【キル・アストラ】

 自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。ランクは『V』。

【菊池圭太】

 第壱区の警官。オッドアイで、右目だけ赤い。

 DAGに所属している。ランクは『VI』。

【愛野蒼】

 単純な戦闘力だけなら悠を凌駕するほどの実力者。十星からの指示で異世界警察に帰るのを禁止されていた。ランクは『Ⅶ』。

【END】

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。今は無限牢獄に囚われている。


『世界の種類』


【純世界】

 ビーストがおらず、保護対象だけが存在する平和な世界。異世界警察が出動する必要はない。

【純正世界】

 純世界に加え、『理』の異常が存在しない世界。異世界警察署本部があるこの世界のみが発見されている。

【危険世界】

 ビーストと保護対象が存在する世界。

【超危険特別処理世界】

 ワンク5の世界。パトロール中の特別警官は全員出動する必要がある。

【空世界】

 ビーストも保護対象も存在しない世界。数年もしないうちに世界の存在自体が消滅してしまう。

 悠は関西弁の男がどこかへ行くと、鉢合わせるのが嫌なのか、違う扉に向かった。バーナが扉に触れてチェックすると、二、三人兵がいることが分かった。


「この部屋……位置的に窓がないので僕が戦います。」


 蒼は鬼丸を抜くと、扉を開いて当然のように歩いていった。兵は理解できていないのか、呆気にとられたような表情でポカーンとしていたが、先程の騒ぎから察したのか、武器を取って蒼に向かっていった。


「『月来香(げつらいこう)』」


 瞬間、蒼に攻撃しようとしていた兵の身体には大きな切り傷が出来ていて、全員その場に倒れてしまった。


「月下美人、別名『月来香』。一年に一晩だけ開く美しい花。一瞬。ただ一瞬の間に切られる。」


 兵は薄れゆく意識の中で血の海に覚えれた。蒼は鬼丸の血を振り払うと納刀した。悠は固唾を飲むような感覚になった。悠らしくなく、冷や汗すらかいていた。

 太刀筋がほんの少しも見えなかった。魔法を使用した訳でもない。蒼が敵になったら……そう考えただけで悠は鳥肌がたって、逆に笑みを浮かべてしまった。


「バーナさん、大丈夫ですか?残酷な現場も見るかもですけど……」

「恐竜いくら解剖したと思ってんのよ。血肉なんて見飽きてるわ。」


 蒼は安心すると、頷いて次の部屋のドアノブに手をかけた。

 扉を開いた先の部屋は三、四畳程度の狭い部屋で、中には大した物はなかった。次の部屋に繋がる扉と、パスワードを打ち込むタッチパネルがあるだけだった。


「悠さん、パスワード……」


 蒼が口を開いたと同時に、部屋に入ってきた鋼鉄の扉には鍵がかかってしまった。悠が音に驚いて振り返ると、扉の小さい窓の先にいたのは一人の女だった。


「騙されたね。」


 悪女。蔑むような意思がなくとも、その顔を見たらそう言いたくなってしまうような、極悪非道な表情だった。


「バーナァッ!!!」


 バーナは悪どい笑みを浮かべて、高笑いをすると扉につけられた小さい窓を閉め、鍵をかけた。そして今日そのまま部屋から離れていった。完全な閉鎖空間。ご丁寧に壁は魔法で守られている。攻撃では絶対に破壊できない。それに、日光も当たっていない。悠には力はなく、どうあっても抜け出すことができない。


「ビーストの手先だったんですか……ワープした直後からずっと騙されていたなんて……!」

「奴の発言が本当だったとはな。」


 蒼は頭の中でバーナの言葉を思い出した。『魔力操作できるビーストだとしたら?』と。気絶するのすら演技とは、なんという詐欺師。


「0〜9の数字を6桁……100万通りだ。勘で当てるのは不可能だろうな。」

「とはいえここで餓死は嫌です……」


 蒼は藁にもすがる思いでパスワードを打ってみた。単純なパスワード(111111)、自分の誕生日(000906)など。悠の誕生日も打とうとしたが、そういえば悠には誕生日などなかった。

 パスワードを打つ「ピポポ……」という音が部屋に響き、間違っていた時の「ブゥッ」という音が鳴る度に蒼の表情は疲弊していった。50回目には蒼の全身の力が抜けて、その場に膝をついて倒れた。


「蒼。諦めろ。」

「じゃあこのままここで死ぬんですか……!」

「なに、死ぬわけなかろう。」


 悠は『太陽(サン)』の能力すら使えないのに、謎の自信と余裕を持っていた。

 悠は叢雲を抜くと、その刀身を眺めた。


「ENDも……十星も……異世界警察も。私に死なれれば困る。」


 悠がそう言うと、叢雲は【ケケケ】と、悠のあまりの自信に笑ってしまったのだ。叢雲が話すことを知らなかった蒼は驚いていた。鬼丸は話さないのだろうか。


【ここのビーストはあの関西弁で間違いねぇな。アイツはクローバーの部下の“ロス”だ。バーナはそのパートナーだ。力がない代わりにああいう戦い方をしてた。】

「えと……叢雲さん?思い当たるパスワードはありませんか?」

【あるにはあるが……俺の時とは絶対に変わってるぜ?】


 叢雲は『元ダイヤ』。たまに元スペードと表記している件については許して欲しい。

 とにかく、叢雲は元ダイヤなので、組織の多くの情報を知っている。変わっているだろうが、思い当たる数字は全て打ってみた。


【252121……これも駄目か。チッ、これが最後だ。】

「悪いな、叢雲。巻き込んで。」

【どうせロスは俺達を殺す勇気なんざねぇ。それに、ENDに報告しても悠は確実に殺されねぇだろうからな。】


 悠は叢雲の話を聞くと、鉄の扉を睨んだ。遠くから物音が少し聞こえる。


「数日もすれば誰かが助けに来る。それを待つとしよう。」


 正確な時間は分からないが、もうきっと夜だろう。蒼は壁にもたれかかって座り込んだ。叢雲は刀に戻ると、地面に突き刺さった。

 悠は座らなかったが、立ったまま頭を床に向けた。数分もすれば「スースー」という蒼の眠る音が聞こえてきた。


「アンラッキーだな……」


 悠はそう呟いて眠りについた。


第七十七話 終

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