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第七十三話 街

 悠は二階のベランダに出て、壁を登って屋根に立った。上空には翼竜が何十種類も飛んでいて、遠くを見れば小型から大型まで、様々な種類の恐竜が森や荒地を歩いていた。


「数が多い……ビーストはどれだ。」


 というか、そもそも恐竜が黒魔術使うのだろうか。



 突然だが、ビーストに着いてここで紹介しよう。くじらぐもや、駝鳥、Yを殺したビーストなどの異形タイプがビーストになるには、大まかに2つのパターンがある。

 1つは、異形自体の知能が高く、自発的に黒魔術を使用しビーストとなったパターン。

 もう1つは、その存在自体が“黒魔術で作られた”パターン。くじらぐもはENDによって作られており、駝鳥の作成主も、後から発見されている。ただ、Yを殺したビーストに関しては何も情報がない。そもそも倒せた蒼が異常なのだ。



 とにかく、恐竜の中にビーストがいるのか疑問なのだ。知能が高いというパターンは有り得ないとして、黒魔術で恐竜を作れるのだろうか。

 そんな時、蒼が登ってきた。


「悠さん、今連絡がありました。この世界の『理』の異常は『時代』だそうです。それも、ここは過去だとか。」

「つまり……」


 そう、この恐竜達はやはり黒魔術で作られたものではないのだ。まあ、これだけの量を作り出すのは不可能であろう。


「だが、恐竜1匹自体にも魔力が籠っている。特に遠くの方だと、かすれて感じにくい。」


 そう、悠は『太陽(サン)』になったことで、今まで使用できていた『探知』すら使用できなくなってしまったのだ。とはいえ、元々探知能力は優れているので、遠くの魔力も感じ取ることができる。

 悠は一旦屋根から降りると、蒼を呼んで探索しに行くことにした。


「ちょっとあんた達どこ行くの?」

「探索しに行く。ビースト探しだ。」

「何?アタシがビーストって可能性は無いわけ?」


 かまって欲しいのか、女は突然そんな事を言い出した。蒼は対応に困って苦笑いをしていたが、悠は冷たい目で反応していた。


「有り得ないだろう。魔力を微量しか感じん。」

「魔力操作できるビーストだとしたら?」

「死にたいのか?」


 悠が振り返って睨むと、女の背筋には氷が当てられたような感覚になって、そのままその場所に膝をついてしまった。常人ならその反応が普通だろう。何せ、『太陽(サン)』を宿している。今の悠には神が潜んでいると言っても過言ではない。

 蒼は心配そうにしていたが、女は怪我も無さそうなので、悠について行くことにした。


「魔力、感じますか?」

「ある程度な。だが、断定は出来ない。」


 そんなことを話している間に、数分もすれば森を出た。そこには限りない荒地が広がっていて、肉食恐竜が走り回っていた。


「……ん、小型の恐竜ですね。可愛いなあ。」

「噛まれるぞ。」


 そんな事を言ったそばから、蒼は小型の恐竜に指を噛まれていた。甘噛みだったようで、ちぎれずにすんだ。


「油断しないでいきます……!」

「逆に貴様油断していたのか。」


 悠は少し困惑して、本音で言ってしまった。悠と言えど出動の時くらいは気張っていくというのに。

 そんな時、体長4mは超えていそうな恐竜が傷だらけで目の前を通過していった。何かから逃げているようだ。それほど大きな魔力は感じなかったが、蒼は刀に手をかけた。

 傷だらけの恐竜を追っていたのは、体長15m以上はありそうな大型の恐竜だった。身軽な動きで走っていくと、飛び跳ねて傷だらけの恐竜の腹に噛み付いた。

 血が吹き出して、悶えながら暴れる様子を見て、蒼はなんだか気の毒になって、助けようとしたが、悠が止めた。


「自然には自然の世界がある。文明を築いて優位な人間が踏み込むものではない。ましてや過去だ。」


 蒼は反論できず、刀を収めて従った。だが、見ていることも出来なかったので、目を逸らして歩いた。


「今のところ分かったのは、やはり進化の進んだ生物は弱肉強食の“強”側に立てるんだな。親近感が湧く。」


 サラッとナルシストを見せつけてくる悠に、蒼は気まずそうに「ハハッ……」と笑うことしか出来なかった。

 悠は思っていた反応と違ったのか、片方の眉を上げて不愉快そうな顔をしていた。


「……そういえば、あの家があるということはどこかに文明があってもおかしくは無いな。」

「それ、“分かってた”んですか?」


 悠はそう言われると、少しだけ口角を上げてニヤついた。

 そう、悠は何となく魔力を感じて向かったような雰囲気を出していたが、きちんと文明のある方向に向かっていたのだ。その証拠に、目の前に集落のようなものが見えてきた。


「全ては私の思い通りだ。」


 そう言うと、悠は太陽の位置を確認した。ほとんど真上で、沈み始めたくらいだ。全てが上手くいっている。


「愛野蒼。貴様に一つ指示を与えてやろう。」

「はいっ……!分かりました。」


 実力はあるのに、なぜこうも下出に出てしまうのか分からなかったが、都合良く使いやすいので、悠は指示をした。


「今日一日寝られる場所を探せ。宿でも人の家でも良い。私はその間に街を探索しておく。」


 蒼は「はい。」と返事をすると、早速走って住民に近づいていった。


「愛野蒼……弱点は頭の悪さか。」


 そんな事を考えていると、蒼は原住民と言語が通じず、追い出されていた。やはり自分で行動選択をする勇気は必要である。


第七十三話 終

一応、ビーストになる条件を載せておきます


①黒魔術(死者蘇生など)を使用した生物。

②自我を失った人間。

③黒魔術によって作られた生物。

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