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第七十一話 天王星復活

タイトルがネタバレすぎるけど読んでくれるとありがたいです笑

「朝霧悠、なんでここに……!?」


 蒼が聞いても、悠は呆然として黙り込んだままだった。いつもなら「貴様こそ」なんて反論していたが、今の悠にはそんな発想がなかった。いや、そんな“余裕が無かった”。


「貴様……本当に人間か……!?」

「え?」


 悠は思わず冷や汗をかいてしまった。有り得なかった。この男は人間ではない。

 悠ですら魔力を感じるのが難しい。全身に、溢れる程に流れる魔力が悠を刺激して、毛穴が開くような感覚だった。


「てか……お前臭くないか?」


 圭太は空気を読まず思わずそう口にしてしまった。そう言えば先程から加齢臭のようなものがする。


「そういえば2週間はお風呂入ってなかったな……」

「入れ!!」


 満場一致でそう叫んだ。


────────────────────────


「話したいことが多すぎるが……そもそも貴様、なぜここに居るんだ?第零区なのか。」

「一応第零区だったんですけど、異世界警察署本部には帰るなって十星に言われていて。理由は僕にも分かりません。」


 蒼は首にかけたタオルで頭をわしゃわしゃと拭くと、ポカポカの身体で近くのソファに座ってリラックスした。


「悠さん……“Y”さんが亡くなった世界に出動要請を出されたんですけど、蒼さんに助けられたんです。」

「なるほど。十星はココロちゃんを消したかったから、研究室に侵入者を送ったのね。」


 凜奈はホットミルクを机の上に置いて、蒼に渡しながら話した。圭太は頭を抱えて口を開いた。


「でも……こうなったら第零区と第壱区分ける必要あるのか?」

「そうだ、ウルグクンとオウマクンはどこへ行ったんだい?さっきから姿が見えないけど。」

「それが……」


 ココは言いづらそうだったが、悠とアストラだけを連れてコッソリ話した。


「ウルグさんはENDの組織に、魔王さんは十星に加入しちゃったんです。ある日突然ウルグさんが居なくなっていて、数日後にハートが報告に来ました。そして、魔王さんが十星に加入したのはつい数日前の事です。」

「待て、シガール・オウマは十星の何になったんだ。」

「『天王星(ウラヌス)』です。きっと、悠様達が倒したから、穴埋めで……」


 アストラは頭が追いつかなかった。悠とアストラが第壱区に居たのはそんなに長い期間ではない。なのに、色々と起こりすぎだ。

 だが、時間は待ってくれなかった。ゆっくり考えている暇すらなかった。


⟬悠!⟭


 突然ライアが悠を呼んだ。悠は呼ばれたので、先程の圭太達がいる場所に戻った。

 圭太達は窓の外に注目していて、悠達もそちらを見ると、そこにはなんとタイミング良く魔王がいた。


「魔王さん!!」

「オウマクン!!」


 ココとアストラがそう叫んで、窓を開けた。悠も魔王の姿を睨んでいた。


「何のつもりだ……いや、何の用だ、シガール・オウマ。」

「別にね。哀れな君たちに報告しに来てあげただけだ。」


 ここは地上数百メートル、だが魔王は翼があるかのようにその場所に浮かんでいた。恐らく『天王星(スカイ)』の能力だろう。


「ココロ。君運が良かったね。愛野蒼に助けてもらえるなんて。自分ひとりじゃ何も出来ないのは変わってないみたいだ。」

「君も同じだろう。十星の穴埋めで調子に乗るなんて、新学期になってイキってる学生みたいだよ。」

「アストラ、君は黙っていろ。香ばしい。」


 魔王はアストラの上から目線すらも軽く一蹴してしまって、知っていた魔王とは大違いだった。


「侵入者に直接連絡をとって指示していたのはゴドラだけど、ココロ。君に死んでもらうように指示したのは僕なんだよ。」

「魔王さんでしたっけ?貴方、十星に入ったばかりなのにそんな権限があるんですね。」


 蒼が聞くと、魔王は目を細めて睨んだ。


「君に名前を呼ばれたくはない。」

「ごめんなさい、初めて知った言葉は直ぐに使いたくなっちゃう性格で。」


 遠回しに“お前の存在など知らなかった”と言われた気がして、魔王はイラッとしたのか、言い方が少し荒々しくなった。


「悠!僕が用があるのは君だよ。」

「だから何の用だと聞いただろう。」

「これだ。」


 そう言うと魔王は、1枚の紙切れを窓から投げ入れた。悠は二本の指でキャッチすると、内容を確認した。


「×月17日にワンク5の世界だと?」

「あぁ。わざわざ分かりやすいようにワンク5の世界を占領したんだ。そこに十星の本部がある。その日に襲撃に来てもらおう。」

「有り得ないな。なぜわざわざ襲撃に行かなければならない。」

「仕事だろ。」


 そもそも×月17日は来週だ。あまりにも急すぎる。十星と戦争となれば大規模になることは間違いがない。


「それじゃあ、僕は行かせてもらうよ。十星と共に異世界警察の滅ぶ日、17日を待つよ。」


 そう言って、魔王は浮いたままどこかへ行こうとした。魔王を追いかけて、悠は『太陽(フレア)』を放った……が、能力は発動しなかった。魔王は挑発するように顎で上空を指した。そう、雲に覆われて太陽が出ていない。

 だが、気づいた時には蒼が窓から飛び出て魔王に斬りかかっていた。魔王は咄嗟に腕で防御し、魔力を最大まで込めたので、腕を持ってかれずに済んだが、深い部分まで切られてしまった。


「ここ地上何メートルだと思ってんの。」


 そう言うと魔王は蒼を振り払って落下させようとした。


「蒼さん!!」


 だが、蒼は近くのビルに掴まって、ギリギリ助かった。そのまま壁を登って屋上まで上がると、蒼は魔王を睨んだ。


「悠と蒼がいるならまだ戦う気はないよ。それじゃあね。」


 そう言うと魔王は何かブツブツ詠唱した。すると、サタンが開いたものと同じ“拾ノ扉”を開いた。

 もう誰も追いかけようとしはなかった。


「シガール・オウマ。」


 異世界警察から悠が名前を呼ぶと、魔王は振り返らなかったものの、立ち止まった。


「待っていろ。」


 魔王はやはり振り返らずにそのまま扉に入って居なくなってしまった。ココにはその言葉が“助けてやるから待っていろ”と言ったようにも聞こえたのだった。


第七十一話 終

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