第七十話 化け物
キャラが増えすぎている
凜奈が朝起きると、悠とアストラと圭太が何やら話し合いをしていた。またいつも通りの喧嘩かと思ったが、内容を聞いて少し立ち止まった。
「第壱区の研究室に侵入者が入ったのだ。第零区に伝えるべきだろう。」
「そうだよ圭太クン。それに、ココクンに連絡した形跡があるんだ。内容は分からなくても伝えなきゃ。」
「だから、区を跨いだ移動は十星の指示がない限り、ルール上禁止されてるんだよ。」
「でもそのルールも十星が決めたものなんだろ?」
「別に十星にとって都合のいいルールとかじゃなくて、これは区ごとの混乱を避けるためのルールなんだ。守んなきゃ統治が崩れる。そうすれば異世界警察が壊れる。」
圭太の意見も真っ当だったので、どうすることも出来ずアストラは頭を抱えてしまった。
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「第壱区の研究班から連絡なんて珍しいな……」
ココは連絡通知を見てそう呟いていた。内容はシンプルな出動要請だった。第壱区からの連絡という事は相当な緊急事態なのだろうか。悩むこともなくココはエレベーターに乗った。
あの頃からココも強くなった。ワンク1、2程度なら1人でも攻略できる。研究班からの連絡じゃ今回のワンクは1らしい。
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『幻の特別警官?』
十星が集まる「何処か」で『水星』は『木星』と話していた。
『そんな物聞いたことがないがな。』
『マーキュリー、君も十星の中では新入りな方だろう?ただこれだけは知っておかなければいけない。』
木星はそう言うと、自分の口元の髭を触ってそう言った。
『その男は第零区に所属している特別警官でね。ただ、“とある理由”で異世界警察署本部に帰ることを許されていない。一度も帰ることなく、今も世界を転々としてビーストを倒し続けている。』
『そんな事可能なのか。確かに、零区はエレベーターでの移動方式。他の世界を選べば、帰らずに他の世界へ移動できるが……そんな事が可能な人間がいるのか?』
ジュピターは少し悩むかのように唸ると、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。
『あれは化け物だ。』
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なぜこんな事になってしまったのだろう。ココは頭の中で何度も繰り返していた。向かった世界はあの“Yが死んだ世界”だった。ココがどれだけ成長したとしても、叶うような相手ではなかった。
ココはあまりの覇気に地面を這いつくばうように動くのが限界で、化け物に触手を向けられていることすら気づかなかった。
振り下ろされた触手がココの背中を貫こうとする寸前、ココは気がついてしまった。
死ぬ───
触手の勢いは止まることなく貫いた……“地面を”。
ココは気づけば誰かに抱えられて助けられていた。こんな状況で誰が人を助けられるというのか。
「だ……大丈夫でしたか?」
「ありがとうございま……」
ココは言い切る前に言葉に詰まってしまった。その顔、見たことがあったからだ。愛らしい顔つきと、その髪型。
「愛野……蒼……?」
「え、知ってるんですか?」
そう言いながら蒼は抜刀して、向かってきた数本の触手を軽く弾き返した。
ココはもちろんその存在を知っていた。悠のランク付けで『Ⅶ』にされていた特別警官。十星と同等なんて有り得ないと思っていた。そして、今も思っている。逆の意味で。
十星以上だ。
「ちょっと待ってて下さいね。」
蒼は抜刀した刀をきちんと握ると、怪物に向かっていった。触手が何本も攻撃してきたが、簡単に切断して、怪物から放たれた魔法すら軽く躱してしまった。
蒼は50mほどまで近づくと、大きくジャンプして怪物のてっぺんまで跳んだ。
蒼が大きく振りかぶった刀を縦に振りかざすと、怪物の巨体は綺麗に真っ二つに避けた。まるで時間が止まったかのようで、目の前の光景がココには信じられなかった。呼吸すら忘れて息を飲んでいた。
「ふぅ……えと……凄い魔力でしたね。」
蒼はなんだか人見知りのようだ。話すことがないのか、しどろもどろにそう言った。
「それじゃ……さようなら。」
「え、蒼さんは帰らないんですか?」
ココがそう聞くと、蒼は言いにくそうに口を開いた。
「僕……異世界警察に帰れないんですよ。」
「え、なんでですか?」
「十星に帰っちゃダメって言われてて。」
「十星はもう異世界警察いないですよ?」
ココがそう言うと蒼は一瞬理解できず困惑していて、目を見開いていた。まぁそうだろう。十星が居なくなっただなんて普通信じられない。
「じゃあ僕帰っていいんですか?」
「はい……そもそも理由にもよりますけど……」
「あ……ありがとうございます。」
なんだか気まずい空気になったが、静かなままエレベーターに乗って本部に帰った。
エレベーター内でも静かなままで、気まずくなったので話そうとしたらタイミングが被ったので更に気まずくなった。
異世界警察署本部に帰ってきて扉が開くと、何やら騒いでいる様子なので、声のする方向に向かうと、第壱区と繋がる扉の先であった。
「───って!!──ろって!」
誰かの制止する声を無視して男は扉をこじ開けた。男とココは目が合うと、お互い呆然としていた。だが、直ぐに視線を動かして蒼と見つめあった。
「朝霧悠!?」
「愛野蒼……!」
新たな波乱の始まりである。
第七十話 終
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