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第六十九話 ≠ヒーロー

そういえば、力が弱い頃の朝霧悠の呼び方は「Y」で固定です。

⟬悠、もうコイツに敵意は……⟭

「知っている。何故だろうな、殺気すら感じ取れるようになった。」

「悠様、ネプチューンも被害者で……」

「知っている。調べた。」


 そう言うと、悠は叢雲を鞘から抜き出して、刀についたホコリをフゥッと吹いて飛ばした。ネプチューンは虚ろな目で悠を見た。


「質問だ。ウラヌスと貴様、どちらが強い?」

〖……単純ナ戦闘力デ言えばウラヌスハ最弱ダ。〗

「そうか。丁度良い。」


 そう言うと、悠は叢雲を大きく振りかぶって、横向きに振った。瞬間、刀の斬撃によって第弐区のビルは半分程が切断されてしまった。ネプチューンは寸前で防いだものの、触手は一本切れてしまった。


⟬悠!だからそいつに敵意は……⟭

「一度私に敵意を抱いた。」


 ライアは一瞬何を言っているのか理解できなかった。異世界警察が、なぜ敵意のない人間を殺す必要があるのか。


「十星を殺す。それが私の目的だ。何度も言っている。“異世界警察”は正義のヒーローではない。全員助けるなどの綺麗事、聞き飽きた。」


 ライアは思い出した。“朝霧 悠”は優しい訳でも、良い人間な訳でもない。「友情、努力、勝利」など軽く踏み潰してしまうかのような人間性。ただ“強い”。それ故の暴虐。


「悠様っ……!」

「アストラ。」


 悠を止めようとしたアストラを、悠は名前を呼んで制止してしまった。アストラは悠の判断と言えど納得できなかったが、悠にどうにかして心変わりしてほしい、複雑な気持ちでいた。

 悠は叢雲を収めて振り返ると、慈愛に溢れた表情でアストラを見た。


「悪い。」


 悠は右手の手のひらを突き出した。瞬間、なんだか朝日の光が強くなったような気がして、それと同時にネプチューンの体は火だるまになって、ネプチューンは暴れずにその場に膝をついた。


⟬っ……う……⟭


 ライアもアストラも、止めようとしたが、誰もどうにも出来ないまま、ただじっくりと時が過ぎていった。ネプチューンは燃やされたまま、一切抵抗せず少しずつ死に近づいていった。

 悠はネプチューンに近づくと、目線を合わせて言った。


「殺したい訳ではない。殺さない理由がない。」


 あまりのイカれっぷりに、ネプチューンは痛みすら感じずに笑みを浮かべてしまった。自分が殺そうとしている真っ最中の人物に、せめてもの情けをかけたつもりなのか。

 ネプチューンは悠から目を落とすと、その場に倒れてうつ伏せになった。

 顔は横を向いて、朝日の登るほうを向いていた。ネプチューンは炎の中で涙を流していた。


〖眩しいなァ……。〗


 海の王は悪魔に焼かれ命を失った。光に包まれて。


────────────────────────


 ネプチューンが亡くなった事で能力は解除され、皆の沈められた記憶は取り戻された。その影響で慎一も元に戻り、今はネプチューンの亡くなった屋上で追悼の変わりに一服している。


「遺灰はきちんと保管されて追悼されているそうだ。良かったな、アストラ。」

「はい。来世ではせめて幸せになって欲しいです。」


 近くの椅子に座ってアイスを食べていた凜奈は「お前が殺したくせに」なんて事を思っていたが、流石に口には出さなかった。そんな時、あることを思い出した凜奈は隣に座っている圭太に尋ねた。


「そういえば兄さん、十星の本拠地の情報、持ってるんでしょ?」

「あぁ。研究班にはメモで提出した。多分、十星はこちらから攻撃するのを待っているんだろうな。だから、俺を一度攫って返したんだ。」


 そんな会話をアストラは聞いていたが、凜奈と圭太が揃っているのを久しぶりに見て、ある事を思い出してしまった。そう、あの()()である。

 ダイヤが居た例の世界。あの世界に入った直後、圭太はこんなことを口にしていた。


『ターゲットは“朝霧悠”ですよね。分かっています。そのためのDAGなんですから……』


 DAGは暗殺部隊。そして、そのDAGが悠をターゲットにしているということは……

 アストラは遠回しな質問は苦手だったので、直球で聞いてしまった。


「君、悠様殺そうとしてる?」


 圭太は突然アストラにそんな事を聞かれて度肝を抜かれたような顔をして、目を見開くと、凜奈と一度見つめあって、もう一度見つめあってからようやく「……へ?」という間抜けな声を出していた。


「だから言ったじゃん!兄さん、通話聞かれてたんだよ。」


 やはり予想は的中していたのか。だが、なぜこんなにも落ち着いているのか。まさか暗殺部隊の余裕と言うやつだろうか。


「“誤解を招くから訂正しときな”って言ったじゃない!」


 凜奈がそう言うと、アストラは一瞬知能が猿なみに劣ったような感覚だったが、数秒してようやく理解した。つまり、アストラの解釈は誤解だったわけだ。ではなんだったのか。


「アストラ、あれは逆だよ。十星に“悠が暴れないように見張っておけ”って言われてたんだ。あと、“出動要請があれば積極的に向かえ”って。まぁ、僕を攫うための罠だったんだろうけど。」

「な……なんだ。そんなことだったのかい。」

「そもそもDAGってそんな物騒な組織じゃないからな。そりゃあ、暗殺や暴力みたいな事もするけど、基本的には護衛とかが主だから。」


 全くもって拍子抜けしてしまった。後から安心が来て、アストラは圭太の隣に座った。


「まぁ、これで一安心だね。」


 まだこの時は誰も知りえなかった。〖均衡崩壊〗『終災侵攻』〖第二次均衡崩壊〗に次ぐ、大事件が起こるとは……


────────────────────────


『はい……はい。研究室には侵入成功いたしました……』


 男は何者かと通話をしていた。


『了解です。ここを操作して……出来ました。』


 男は研究室のある場所を少しいじって、研究班名義でココロ・シンリーに連絡を送った。


『任務完了致しました。はい。確実に。()()()()。』


第六十九話 終

叢雲の事を「元スペード」って書いてしまっていることが多いのですが、叢雲は「元ダイヤ」です。見直したらめちゃくちゃ間違えまくってます。ごめんなさい。なんならイラストすら間違えてました笑

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