第六十八話 Wake Up
『登場人物』
【朝霧 悠】
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。ランクは『IV』。全盛期は『XI』。
【ウルグ・ハース】
悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。ランクは『II』
【ココロ・シンリー】
皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。ランクは『I』。
【魔王】
悠やウルグ達と同じ特別警官。『創造破壊』の能力の強さで昇格した特例。気弱な性格。ランクは『I』。
【キル・アストラ】
自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。ランクは『V』。
【菊池圭太】
第壱区の警官。オッドアイで、右目だけ赤い。
DAGに所属している。ランクは『VI』。
『世界の種類』
【純世界】
ビーストがおらず、保護対象だけが存在する平和な世界。異世界警察が出動する必要はない。
【純正世界】
純世界に加え、『理』の異常が存在しない世界。異世界警察署本部があるこの世界のみが発見されている。
【危険世界】
ビーストと保護対象が存在する世界。
【超危険特別処理世界】
ワンク5の世界。パトロール中の特別警官は全員出動する必要がある。
【空世界】
ビーストも保護対象も存在しない世界。数年もしないうちに世界の存在自体が消滅してしまう。
⟬おい、アストラ。俺は死んだのか?⟭
「いや、生憎生き地獄みたいだ。」
ネプチューンはどうやっているのか、水の上に仁王立ちしていた。先程よりも異形味が増して、下半身だけでなく、全身怪物のような見た目になっていた。
〖オ前タチノ負ケダ。〗
声も機械音が鳴り響くようで、言葉を聞いただけで耳鳴りするようだった。
〖マーキュリーガ好キナゲームデハ裏世界ニ行クコトガ良クアルラシイ。安心シロ、コノ世界モ同様ニ裏世界ノヨウナモノ。実際ハ沈ンデイナイ。〗
要するに、この水はあくまでアストラとライアだけに効果があるもので、他の人間には何も影響がないということらしい。
だからと言って全く安心などできなかった。水に浮かんでプカプカしているだけ、こんな状況ではまともにネプチューンに攻撃することすら出来ない。
「ライア、シンプルだけど作戦がある。」
⟬なんだ、言ってみろ。⟭
アストラがライアに耳打ちすると、納得いかなそうにライアはブツブツ文句を言っていたが、ネプチューンがどんどん近づいてきたので、実行せざるを得なかった。
〖死ネェッ!!〗
ライアはネプチューンが刺そうとした槍を水中に入って避けると、足首を掴んでネプチューンを水中に無理やり来させた。
〖ナンダ?中ニ入ッタ所デ不利ニ変ワリハナイゾ。〗
だが、ライアは怯まずにネプチューンに向かった。だが、呼吸困難で目も見えない状態、ネプチューンの槍はライアの右腕に突き刺さった。
ライアは痛みで止めていた息を吐き出してしまって、水を飲んでしまった。頭の中では落ち着こうとしていたものの、パニック状態に陥ってしまった。
(まだか、アストラ!!)
ライアは頭の中でそう叫びながらネプチューンに必死に悪あがきで抵抗した。そう、作戦は単純明快なもの。
十星の心に『侵入』するのは至難の業。気が付かれれば直ぐにはじき出されてしまう。なので、ライアが気を引いている今、アストラはネプチューンの心の中に侵入しているのだ。
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息もできる。視界も良好。だが、何故か息苦しいような、溺れているような感覚だった。寂しさ、悲しさ。その絶望。ネプチューンの心の中は海底のようだった。
「ここが……ネプチューンの心の中……」
自然と息が上がってしまう。一体に砂の地面が広がっていた。泳ぐように辺りを移動していると、やはり心が見つかった。それはそれは美しい真球だった。海底の中では真珠のようにも見えた。
だが、アストラは駝鳥の時と凛奈の時の反省がある。赤子を扱うかのように、繊細に、そして傷つけないようにゆっくりと触れた。
瞬間、記憶が突然流れ込んできた。これはネプチューンの過去。
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生まれた子は忌み子だった。人間と人間の間に生まれた子。しかし触手のような足が何本も生えていて、異形であった。
魔法が存在するこの世界では、異形の子供が生まれる事も珍しくはないが、子が生まれた村では“異形は凶暴化する”という噂があるほど、忌み嫌われる存在であったことは間違いない。
ある日、村で大火事が起きた。村の半分が焼失。その後の度重なる大雨で、死者数は村の人口50000人のうち、およそ20000人にも及んだ。
「厄災だ……あの子が神を怒らせたのだ!!」
村の老いた預言者がそう言うと、村の民は更に子を蔑むようになっていった。
だが、追い討ちをかけるように、最悪の出来事が起こってしまった。村長が何者かのよって暗殺されたのだ。勿論子のせいではない。だが、村民は子を完全に“厄災”として見ていた。
有無を言わさず子は海に捨てられた。僅か三歳半の頃だった。村の人々が集まって罵声を浴びせた。自分で泳ぐことなど到底できない。水に沈んだ赤子は暴れようともせず、ただ静かに死を待っていた。
(お前なんて産まなければ良かった!)
(村の魔物め!)
(タコらしく海で溺れ死んでしまえ!)
水の中でそんな言葉が耳に入ってきた。無惨で、凄惨で、残酷だった。
もう息は持たない、赤子が本能的にそう思った時、水面から何者かによって引き上げられた。
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「ここで……記憶は切れてる。」
それ以上は見られなかった。誰に助けられたのか、それは言わずとも分かる。きっと十星なのだろう。
美しい真珠の心は泣いていた。涙を流し、悲しんでいた。心は形を変え、段々と小さい頃のネプチューンの姿に変化した。
〖僕は……ただ……〗
ネプチューンがそう言った瞬間、視界は光に包まれるかのように見えなくなっていった。
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「はぁっ……!!ライア!!」
⟬ここだよ。⟭
『侵入』を解除して戻ってくると、未だ海の上で、隣には傷だらけのライアが居た。
⟬ちっ……遅いんだよ!まぁ……それよりも変な事があるんだが……⟭
「変……?」
アストラは沈まないように足をバタつかせながら、ライアの指さす先を見た。そこには、完全に脱力状態で水中を漂うネプチューンの姿があった。
⟬さっきからずっとあんな調子で……⟭
アストラは先程の記憶を見たあとでは放っておいておられなくなり、水中に潜ると、泳いでネプチューンに近寄った。
顔を覗き込むと、ネプチューンは何かブツブツ口を動かし続けていた。
「泣いてるのかい?」
口に水が入ってくるのなど全く意に介さずに、アストラは水中でそう言った。ネプチューンが綺麗な程純粋な眼でアストラを見ると、能力を解除し、世界を沈めた水は一気に無くなった。
⟬っ……!!落ちるっ……⟭
能力解除で上空数百メートルから落下しかけたが、直前にネプチューンが能力でキャッチした事で、無傷で第壱区の屋上に着地できた。
⟬な……何が起きてんだ……!?⟭
「ネプチューン……」
気がつけば夜は明け、朝日が登ってきていた。ネプチューンの眼から零れる涙に朝日が反射していた。
「待たせたな。」
その時。
聞き馴染みのある、今一番聞きたくない声が聞こえてきた。その人物は叢雲を握り、笑みを浮かべてネプチューンに近づいてきた。
「悠……様……」
陽の悪魔は目覚めてしまったのだ。
第六十八話 終
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