第六十五話 海王星
もうすぐ春休みですね。遊ぶ友達は……あはは
〖あー、もしもし聞こえる?〗
「どうした、ウラヌス。仕事がやけに遅いじゃないか。」
悠に『天王星』の能力を放ち、トドメを刺したウラヌスは帰りながら十星に連絡をした。十星であっても連絡手段はスマホである。
〖朝霧悠が現れてね。ユーの仕事を減らす為に片付けておいたよ。〗
「ヤツが弱体化していて良かったな。実力がそのままだったら確実にやられていた。」
〖たし……〗
気がつけばウラヌスが手に持っていたのはそこらの瓦礫であった。何が起きているか理解できないままでいると、目の前にはスマホを持っている悠の姿があった。
目で追えないほどのスピード。だがウラヌスは動じなかった。
〖なんだ、起きたのか。アイにもう一度殺されたいのか……〗
そんな挑発をしている間に、背後にいたヴァーギンが焼き尽くされていた。
ウラヌスが驚愕して息を飲んでいる間に、悠はその首を手に持っていた。
全てを超越していた。全ての頂点に立っていた。
「おい、ウラヌス!何が起きているんだ!」
「もしもし、マーキュリーか。」
今の激しい動きの中でも携帯を取り落とさず持っていた悠は、スマホの先のマーキュリーに話しかけた。
「貴様……!朝霧悠!」
「私はもはや朝霧悠ではない。」
そう言うと、悠は叢雲を刀に収めて、携帯電話を握り潰した。
「『太陽』だ。」
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先程まで悠がいた精神世界の中には、「誰か」と、叢雲がまだ残っていた。
【その面見てようやく思い出したぜ、憎ったらしいやつだぜ、ホントによォ。】
叢雲はそんな事を言っていたが、内心相当嬉しそうだった。だが、残念な事に予想は的中していた。叢雲は言いにくそうに口を開いた。
【お前……死んだはずだろ。なんでここにいんだよ。】
⟬……ライア・ビーク。××年『終災侵攻』にて死亡。全盛期の朝霧悠に仕えていた部下。どこの文献にもこんなことを書いてあるだろうな。⟭
そう、この男はライア・ビーク。悠の部下で戦死する際の遺言に「人間とは芸術品である。故に同じものを作ることは出来ない。」という物を残した事で有名だが、何故か今こうしてここに生きている。
⟬そもそも××年の『終災侵攻』は、ENDが異世界警察に大規模侵攻してきた事件。悠が〖均衡崩壊〗で意識を失っている隙にENDの部下数千万人が一気に攻め込んできた。⟭
【あぁ、そりゃ悠も覚えてるし、俺が一番覚えてる。】
そう、叢雲は「元ダイヤ」。ENDに対して謀反を起こした人物なのだ。
つまり、叢雲はENDの組織にスパイとして侵入していて、四天王にまで上り詰めたが、『終災侵攻』時に遂に謀反を起こしたのだ。
⟬勝敗は意見が分かれてる。「〇〇だったから勝ちと見なしていい」とか、「〇〇が犠牲になったから負けも同然」とか色々言われてるけど、ENDを追い払ったから一般的には異世界警察の勝ちと言われてる。でも、損害は大きかった。⟭
そう、その損害の一つがライアの死なのだ。まだライアは説明を続けた。
⟬その時、俺は確実に死んだ。けど、死後の世界で出会ったんだ、『太陽』に。いや、サンだけじゃない、神全員に出会った。それはそれはデカかった。俺なんて蟻みてぇだった。⟭
そう、死後の世界に行ったライアは、十星に宿っている神々に出会ったのだ。いわゆる「冥界」である。
⟬『太陽』に聞かれたんだよ。“生きたいか?”って。⟭
【……?】
誰もが知っている通り、サンは太古に、他の世界を自分のものにしようとして堕ちた神だ。今もまだ神ではあるものの信頼に値しない。実際、ENDが蘇らせようとしているほどである。
⟬俺が“あぁ”って答えたら、一つ条件付きで蘇らせてもらったんだよ。⟭
【条件?】
⟬悠を十星に就任させる事だ。それまでは精神世界に閉じ込められてた。つまり、さっきその条件は達成した。⟭
そう言うと、ライアはフワリとその体を浮かせて、段々その体は霧のように消えていった。そう、ライアは条件を達成した事で今“実体になろうとしている”のだ。
【待て!ライア、お前は敵なのかよ!】
⟬味方だよ。⟭
そう言うと、ライアの体は完全にその場所から消失してしまった。
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「というのが一連の流れな訳だ。」
ウラヌス討伐から数日後、バーで悠はライアとワインを口にしていた。
「全く、貴様は……説明が足りん。」
⟬悪りい悪りい。でもその体、悪くないだろ?⟭
「……いや、条件が面倒くさい。」
悠はライアによって与えられた力で、その身に『太陽』を宿し、そして空席だった十星の一人になった。だが、十星の味方になった訳ではない。十星殲滅はこれからも続く。
が、サンの力を使用するには厳しい条件があった。
⟬説明しただろ?日光を浴びている間はその能力を使用できる。『月』の能力を持ったらしいゴドラとは対比的なんだよ。⟭
「それが面倒くさいと言っている。仮に理の異常が『時間』で『夜しかない世界』であればどうする。それに、この能力ではどうあっても対等にゴドラと戦う事が出来なかろう。」
そう、日光を浴びている間、悠は人間を超越したような戦闘力と、魔力操作、そして正真正銘最強の能力『太陽』を使用できる。が、日光を浴びていなければ普通の人間以下とも言える。
⟬そういえば、ランクが変わったらしいな。全盛期の悠が『XI』なのに対して、今の悠は……⟭
「『Ⅷ』らしいな。」
そう、以前分かったことだが、悠は全盛期の力を完全に取り戻した訳ではなかった。その時点での実力は『Ⅶ』程度。だが、『太陽』の能力を手に入れたことでランクは『Ⅷ』に格上された。
「だが、ウラヌスが死んだことで他の十星も動きずらくなっただろうな。」
⟬そうだといいな……⟭
そう言い途中に、机の上のトランシーバーから「ザザ……」という機械音が鳴り出した。アタスマさんだ。
『悠様、大変です!『海王星』が人質の圭太を連れて襲撃に来ました!』
「今深夜だぞ……!これだから面倒くさいと言ったのだ。」
悠は叢雲を手に持って立ち上がろうとしたが、それを止めてライアが立ち上がった。
⟬俺が行く。悠は待ってろ。⟭
ライアがハシゴを登って屋上に出ると、既にそこには『海王星』の姿があった。ネプチューンは下半身がタコのように何本かの触手になっており、上半身は人間の、魚類版ケンタウロスのような容姿だった。一方の人質である圭太は意識を失って倒れていた。
⟬初対戦だ、準備運動くらいにはしてやる。かかってきやがれ!⟭
第六十五話 終
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